調査・研究

令和3年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業について

 当会では、経済産業省公募の令和3年度「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業費補助金に関する補助事業」を受託、実施した。

 

 自動車や電機・エレクトロニクス分野等と異なり、ロボットの導入が進んでいないサービスや三品産業分野等においては、人手不足といった社会課題の解決のためのツールとして、ロボットに対する期待は極めて高いと考えられるものの、現時点では、特定の企業の活用を想定した活用範囲の狭いロボットの利用を前提とした開発や供給が行われる傾向にあるため高コストとなり、幅広くロボットが普及していない。そこで、ロボットの導入が進んでいないサービスや三品産業分野等にフォーカスをあて、ユーザー側の既存の業務プロセスや施設環境等を見直すことを前提とした、「ロボットフレンドリーな環境」を構築するための開発を行うことが本事業の目的である。

 

 令和3年度事業では、「施設管理-1」、「施設管理-2」、「小売」、「食品」の分野を対象に行った。

 

 施設管理分野-1では「ロボットとエレベータ・扉との連携標準化」を開発課題に三菱地所㈱に、「施設管理-2」では「施設の物理環境の標準化」を開発課題に森トラスト㈱に、小売分野では「ロボットと商品情報の連携標準化」を開発課題にユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱に、食品分野では「包装容器の特定箇所と盛り付け方式の標準化」を開発課題に(一社)日本惣菜協会、マックスバリュ東海㈱、イチビキ㈱、㈱ヒライ、藤本食品㈱、㈱ニッセーデリカ、㈱デリカスイト、㈱グルメデリカを、それぞれ事業者に選定、補助事業を実施した。

 

 補助事業の効果は次の通り。

 

・ 施設管理分野-1に於いては、ロボットが人と同乗してエレベータ利用しての垂直方向移動を、扉を通過しての水平移動を可能として作業エリアを拡大させる課題解決のため、「ロボットとエレベータ・扉との連携標準化」に関する研究開発の結果、配送・清掃ロボットではエレベータ、入退管理システム、フラッパーゲート、扉との連携等、カゴ呼びと乗り場呼びの両方式の開発等が実現した。

 

・ 施設管理分野-2に於いては、施設内へのスムーズなロボット導入を促進するためにはロボットが施設内で運行可能とするロボットフレンドリーな環境特性の規定が不可欠であり、その環境特性に沿ってロボット技術仕様の作成が必要となるため、「施設の物理環境の標準化」に関する研究開発の結果、ロボットと運用に影響を与える環境因子の各項目について「ロボフレレベル」の定義づけ、ロボット及び環境側に求められる要求仕様の明確化等を行った。効果として、環境をレベルごとにソーン分けした見える化の実現、ロボット導入を容易にするための変更すべき物理環境の明確化等が期待できる。

 

・ 小売分野に於いては、小売分野へのロボット導入促進の前提としてロボットが取扱う商品認識が必要であり、その課題解決には多数の商品画像データを整備し、画像認識精度の高いツールと組合わせたデータ活用可能な環境整備することが不可欠であるため、「ロボットと商品情報の連携標準化」に関する研究開発として、前年度に引き続き、小売業の目指すロボットフレンドリーな環境を実証するため、多数の商品画像データに基づく画像認証精度の向上、商品画像データの環境整備の2つのアプローチから実験を行った。その結果、新商品登録業務の削減率が中央値35%、平均2%を達成し、連携した各商品情報DBの活用が有効であることが証明された。

 

・ 食品分野に於いては、食品製造の中で多くの人手による作業に依存している惣菜製造工程にロボット導入を図るには経済的障壁や導入性の障壁など現在の状況を改善しロボットフレンドリーな環境にしていくことが不可欠であるため、「包装容器の特定箇所と盛り付け方式の標準化」に関する研究開発として、盛付ロボ・ロボフレ現場導入として新規産ロボ惣菜盛付ロボットセルシステム開発と惣菜盛付共働ロボットFoodlyのロボフレ現場導入が実現、また、全体最適化のための量子コンピュータによるシフト計算とAIによる需要予測アプリ開発導入ではシフト計算自動化と需要予測が完成、業界共通仕様を策定できた。

 

 各分野の成果は以下を参照。