要望・提言等

ポストコロナの企業変革およびカーボンニュートラル実現のための令和4年度税制改正共同要望を提出

 日機連では、製造業関連団体で組織する「製造業等税制研究会」の加盟団体と協力し、8団体連名にて「ポストコロナの企業変革およびカーボンニュートラル実現のための令和4年度 税制改正共同要望」を策定、経済産業省に提出、その実現を要望した。

 

 

ポストコロナの企業変革およびカーボンニュートラル実現のための令和4年度税制改正共同要望

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きな打撃を受けた我が国経済は、海外経済の回復等により生産や輸出に回復がみられるようになったとはいえ、感染拡大には歯止めがかかっておらず、その先行きは依然として不透明と言わざるを得ない。

 

 このような中、政府は、本年6月に閣議決定された「経済財政運営の指針2021(骨太方針2021)」において、感染拡大防止に全力を尽くすとともに、デジタル化や脱炭素化を図りつつ生産性向上につながる取組みを進め、経済の下支え・回復方策を最優先で実行する方針を示した。また、それに先立ち、世界的な脱炭素化への我が国の取組みとして、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」(2020年12月8日閣議決定)において、2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロとする“2050年カーボンニュートラルの実現”に向けて挑戦する方針を示した。

 

 こうした状況下、産業界では、ポストコロナの企業変革に加え、カーボンニュートラルの実現に向けて果敢に挑戦していく所存である。税制については、炭素税等の追加的課税の措置に関し、現状ではカーボンニュートラル達成に向けた合理性が明らかとは言えず、引続き慎重な議論が求められることに加え、カーボンニュートラル、デジタルトランスフォーメーション等に向けた産業界の取組みを後押しするよう、今までにない大胆な施策が必要であり、令和4年度税制改正においては、下記の内容を製造業関連8団体の共同の税制改正要望とする。

 

 なお、新たな経済社会における我が国企業の国際競争力を確保する国際的イコールフッティングの観点から、我が国の法人実効税率については、国際的な最低税率の合意レベルも勘案し、競争企業の成長著しい近隣アジア諸国やOECD主要国の水準を踏まえ、25%程度へ着実に引下げるとともに、繰越欠損金制度など、令和3年度税制改正において一部措置されたものがあるとはいえ、税収中立の制約の下で拡大された課税ベースについても本来あるべき姿に戻すことが必要である。

 

 

1. 研究開発促進税制の拡充

 ロボティックス等の先端分野でのイノベーションの加速化、市場環境のデジタル化や企業体質・構造の変革を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展等へ対応するため、研究開発投資の拡大が企業に求められている。

 リーマンショック後、日本の研究開発投資は長期にわたり停滞し、その後のイノベーション力の低下につながったとの指摘もある。また、コロナ禍で抑止傾向が強まっていることから、令和3年度税制改正でも一部の手当てがされているが、今後、イノベーションを生み出す企業の研究開発投資マインドを後押しする観点から、税制面でも、さらなる支援策が必要である。とりわけ、カーボンニュートラルは、開発の緒についたばかりの極めて野心度の高い、今までとは全く異なる次元の技術を必要とする分野が多く、その推進には企業努力に加え、強力な政策的後押しが不可欠であるため、特に、カーボンニュートラルに資する研究開発に対する支援措置を拡充すべきである。

 また、研究開発税制が実効性を持つものとなるよう、平成 27年度税制改正において廃止された税額控除限度超過額に係る繰越制度の復活や税額控除割合や同限度額の国際的に優位な水準への見直し、また、大企業からスタートアップ企業への投資を促す「オープンイノベーション促進税制」の延長と拡充(既発行株式の取得や合同会社による出資の対象適用化)等も実現して頂きたい。

 

2. 複備投資促進税制の拡充および償却資産に対する固定資産税の廃止・縮減

 ポストコロナの我が国経済の新たな成長に向けて、デジタル化への対応、グリーン分野の成長が欠かせない。また、我が国生産現場の設備老朽化は深刻で、生産性や競争力の面で中国や海外諸国と比して憂慮すべき状況にある。サイバーセキュリティーの確保、国内外におけるサプライチェーンの複数化・強靱化及び働き方改革への対応など課題も多く、こうした課題に対応するため新規設備の導入が不可欠である。とりわけ、カーボンニュートラルの実現には、現行の生産プロセス入替えなどを伴う、大規模かつ積極的な設備投資が継続して行われることが必要であり、企業の投資意欲を促す設備投資促進税制を拡充すべきである。

 一方、我が国の償却資産を課税客体とする税制は、一部の国や地域で限定的にみられるものの、国際的に極めて例外的で、我が国製造業にとって国際的なコスト競争力を損なう大きな要因となっており、カーボンニュートラル対応を始め企業の設備投資意欲にも逆行するものである。そもそも、償却資産に対する固定資産税は、設備から生み出される所得に課される税との二重課税の問題、設備型産業に税負担が偏重するという課税の公平性の問題や、地方財政に占める社会保障関係の割合が高まる中での受益と負担の関係の問題等、多くの課題を内包していることから、廃止すべきである。少なくとも、カーボンニュートラル対応の緊急性・重要性に鑑み、これらに関連し新規に取得した償却資産に係る固定資産税については即時に免税とすべきである。

 

3. 経済のデジタル化に伴う新しい国際課税ルールへの対応

 経済のデジタル化に伴う新たな国際課税ルールについてOECDを中心に議論が進展し、約130か国・地域が参加しているBEPS包摂的枠組会合で大枠合意が成立、7月10日に開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議にて正式確認された。今後、本年10月までに細部を詰めた最終合意がなされ、2023年の導入を目指すこととされている。本合意は経済のデジタル化に対応した課税原則の抜本改革であり、企業活動に多大な影響を与えるものである。従って、その導入に当たっては、国際間の最終調整、および、国内法制化に向けて、日本企業の将来のビジネス展開を考慮し、目的外の増税等とならないよう、また、各国での取扱いを整合的なものとし、納税者にとって過度な実務負担とならないよう、充分な配慮が必要である。

 併せて、企業間の国際競争条件の均衡化の観点からも、OECD/G20以外の国々も含めた国際的な協調体制の下で進めていくことが必要不可欠であることから、約130ヶ国が参加しているBEPS包摂的枠組会合の場を通じ、効果的なモニタリングや適切な情報管理により、不適切な課税や新たな二重課税が発生することを回避し、適正な執行が行われるよう、官民を通じて働きかけていく必要がある。

 

[連名団体]

(一社)日本化学工業協会、(一社)日本機械工業連合会
(一社)日本自動車工業会、(一社)日本造船工業会、(一社)日本鉄鋼連盟、
石油連盟、石油化学工業協会、日本製紙連合会