要望・提言等
令和8年度 税制改正要望
令和8年度税制改正に関する機械業界の要望を提出
日機連では、税制金融政策特別委員会(委員長・今井一朗 川崎重工業㈱ 執行役員管理本部長)中心に令和8年度税制改正に関する日機連要望を検討、とりまとめ、9月16日(火)に経済産業省始め関係各機関等に要望書を提出、その実現を要望した。
要望書は、(1) 研究開発税制の拡充等、(2)GXに向けた設備投資関連税制の拡充、改善、(3)経済のデジタル化に伴う新たな国際課税制度への対応、の3項目から構成している。
令和8年度税制改正に関する機械業界の要望
足下では世界における脱炭素の方向性に不透明感が生じつつあるが、グリーントランスフォーメーション(GX)を念頭に産業界には国内投資の具現化が求められている。産業界全体でイノベーションを起こし、生産性を向上させ、グローバル市場における日本企業の競争力を強化するため、一般社団法人 日本機械工業連合会は機械工業関連の46会員企業及び44会員団体で構成する総合団体として、令和8年度税制改正に関して、研究開発税制を中心に税制上の支援策として下記税制項目の実現を強く要望する。また、令和7年度与党税制改正大綱において法人税のあり方に言及されているが、我が国の法人税率はOECD主要国や近隣アジア諸国と比較して依然として高く、海外においては米国等、法人税率の引下げの動きもあること、法人税改革に伴う税率引き下げ後も法人税収は2021年度以降に増加し続けていること、税収中立の制約の下で拡大された課税ベースを本来あるべき姿に戻すことなど法人税率の検討に当たってはグローバル市場における日本企業の競争力を強化する観点にも留意願いたい。
(1) 研究開発税制の拡充等
研究開発はイノベーションを加速させ、我が国の経済発展の源泉となっている。研究開発は時間と資金を要する長期的な取り組みであり、企業が将来の研究開発計画を立案しやすく、持続的なイノベーション活動を展開することが可能となるよう、企業の研究開発投資マインドを後押しする税制措置や優遇制度の長期的な見通しと安定性を確保して頂きたい。
令和7年度末に期限を迎える「研究開発促進税制(一般型)」の控除額算出に掛かる特別措置は、企業の研究開発投資の増加を促す観点において、必要欠くべからざるものである。また、「研究開発促進税制(オープンイノベーション型)」や「オープンイノベーション促進税制」は、産学連携や企業間連携を促進し、イノベーションを支える基盤を強化するために必要な施策である。これらの特別措置や税制について、適用期限の延長と制度拡充(研究開発促進税制の基礎研究部分の控除率上乗せ、控除限度超過額の繰越可能期間の復活、オープンイノベーション型の高度研究人財に係る人件費の税額控除の要件緩和や監査要件の緩和等)を要望する。
また、令和6年度税制改正において創設されたイノベーションボックス税制は、「知財を組み込んだ製品・サービスの売却益」や「子会社からのロイヤリティ収入」が制度適用の対象外である等限定的であり、更に、手続きが煩雑で企業の事務負担が大きいのが現状。研究成果の実用化を後押しするため、制度の拡充及び簡素化をお願いしたい。
(2) GXに向けた設備投資関連税制の拡充、改善
我が国生産現場の設備老朽化は深刻で、2023年度経済財政白書では、日本はG7で2番目にヴィンテージが長くなっていると分析、第7次エネルギー基本計画でも新規設備等の導入の重要性が指摘されている。レガシー設備の更新は生産性向上、労働力不足解消、DX・GXの推進、国際競争力の確保等に関連する重要な課題であり、企業の設備投資を後押しする設備投資促進税制の拡充、改善を要望する。
特に、令和7年度末に期限を迎える「カーボンニュートラルに向けた設備投資促進税制」は、民間企業による脱炭素化投資の加速化に大きく貢献しており、米国のパリ協定再離脱による影響は想定されるものの、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、産業界へのGXに向けた設備投資の拡大要請は継続するため、当該税制を再延長すると共に、適用要件の緩和・対象の拡大、手続きの簡素化等の制度拡充を求める。
米国を始め世界で投資誘致競争が激しくなっている中、国内で大型投資拡大をさせることが喫緊の課題であるが、構造改革を目的とした大型設備投資には、検討から稼働開始まで長期間を要することから、税制支援を長期的に安定させることで、企業が計画的な投資を行いやすい環境整備を求める。
また、機械装置等に対する固定資産税の課税は、中小企業に限定して令和8年度末まで軽減が図られているが、機械装置等の償却資産への固定資産税の課税は国際的に見て極めて異例であり、我が国産業の国際競争力を低下させるとともに、設備投資促進の大きな阻害要因となっている。特に再生可能エネルギー設備やエネルギー効率化技術への投資等、巨額の投資が必要なGX関連設備への投資を促進するため、GXを先導する大企業も含めた撤廃、抜本的是正を強く要望する。
(3) 経済のデジタル化に伴う新たな国際課税制度への対応
経済のデジタル化に伴う新たな国際課税ルールについては、世界的合意を受けて各国間調整作業が進められてきたが、第二次トランプ政権が国際枠組みからの離脱の動きを示すなど今後の動向が不透明感を増している。国際課税制度の改正においては、企業が事業計画を円滑に策定できるよう十分な猶予期間を設けるとともに、明確なルールの確立や統一的なガイドラインの策定により透明性と予測可能性を向上させること、目的外の増税とならないこと、二重課税の排除、簡素化などを求める。
第2の柱への対応として「グローバル・ミニマム課税」については、報告義務や手続きの簡素化、税率計算方法の明確化等による企業の過大な事務負担の軽減を求める。加えて、海外支店への適用ルールについても実態に即した見直しを行い、OECDにてモデルルールを明確化頂いた上で、ODA案件で現地政府から免税措置を受けている場合等、当該支店の所得に係るトップアップ税額をゼロとする特例措置を遡及的に適用できるようにすることもお願いしたい。
「外国子会社合算税制(CFC税制)」については、グローバル・ミニマム課税の計算方法や必要情報の利活用、適用免除税率の引き下げ(20%から15%へ変更)などによる企業の事務負担軽減を求めるとともに、「日本の課税ベースの浸食を確実に防止する」という制度本来の目的を軸とした、目的外の増税や過剰な合算課税の見直し(海外M&Aにより取得した外国関係会社や清算中の外国関係会社の取扱いの見直し等)を求める。
また、第1の柱の「市場国への新たな課税権の配分」についても、報告義務の緩和及び経過措置の導入など、税務行政のDX化の推進も交えて企業の負担軽減をお願いしたい。
