要望・提言等
我が国企業の競争力強化に向けた令和7年度税制改正共同要望を提出
日機連では、製造業関連団体で組織する「製造業等税制研究会」の加盟団体と協力し、8団体連名にて「我が国企業の競争力強化に向けた令和7年度 税制改正共同要
望」を策定、経済産業省に提出、その実現を要望した。
以下、要望書
国際経済を取巻く状況は、欧米経済の下振れリスクや中国経済の急激な悪化懸念のほか、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などから、依然として先行き不透明と言わざるを得ない。
一方、国内経済に目を転じると、30年ぶりとなる高水準の賃上げや高レベルの設備投資など、デフレ脱却に向けた成長と分配の好循環を実現していく重要な転換点を迎えつつある。政府の「経済財政運営と改革の基本方針2024」においても、デフレ完全脱却が最重要課題として示されており、産業政策としては、DXやGXなどへの投資推進を通じた企業のイノベーション実現が重点課題として掲げられている。
こうした状況下、税制については、イノベーション促進を通じた競争力強化や経済安全保障等の観点から、我が国企業の研究開発および設備投資等を強く後押しする措置が必要であり、令和7年度税制改正では、以下の内容を製造業関連8団体の共同要望とする。
なお、グローバルな企業の変革競争が激化する中、我が国企業の国際競争力を確保する国際的イコールフッティングの観点から、実質的な税負担の適正化に向けて、法人実効税率については、国際的な最低税率の合意レベルも勘案し、競争企業の成長著しい近隣アジア諸国やOECD主要国の水準を踏まえ、25%程度へ着実に引下げるとともに、税収中立の制約の下で拡大された課税ベースについても本来あるべき姿に戻すことが必要である。
1.企業の研究開発投資およびイノベーション促進に向けた税制措置の拡充
GXやDXなどを通じ、我が国企業が世界に先駆けて企業変革を実現するためには、今までとは異なる非連続的で革新的なアイデアや技術の開発が必要である。我が国の企業では、既に製造プロセスや事業の抜本的な脱炭素化やAIの活用などによる業務変革の実現に向けて様々な研究開発が進展しているが、グローバルな技術開発競争が激化する中で、熾烈な国際競争を生き抜くためには、これら研究開発活動やイノベーションの一層の加速化が急務となっている。このためには、企業努力に加え、研究開発促進税制などの更なる拡充による後押しがますます重要となる。
令和6年度税制改正では、企業のイノベーション促進に向け、新たな制度が導入されたことなど加え、研究開発促進税制については、研究開発投資の増加インセンティブ強化の観点から税額控除率の見直しなどが行われた。令和7年度改正においても、長期的に行われる企業の研究開発をより強力にサポートする観点から、税額控除限度超過額に係る繰越制度を復活させるとともに、税額控除率や上限についても国際的に優位な水準に見直すなど、引き続き、制度の拡充が必要である。併せて、令和6年度税制改正で導入されたイノベーションボックス税制についても、運用状況を踏まえつつ、中期的に対象となる知的財産や当該所得範囲の拡充等について検討すべきである。
2.DX・GX等の実現に資する設備投資促進税制の拡充および償却資産に対する固定資産税の廃止
企業のDXやGX等の実現による競争優位や経済安全保障の確立に向けては、ハイリスクの巨額投資を伴う生産および業務プロセスの刷新や入れ替えなどが必須となるが、これら投資に係る意思決定を後押しするためには、いわば呼び水としての税制の整備が重要なポイントの一つとなる。この点、設備投資促進に係る税制については、企業の意思決定における予見可能性や実効性確保などの観点から、措置期間や税額控除上限、対象となる設備などの要件について適宜拡充や見直しが必要となる。
また、企業の設備、機械・装置等の償却資産の保有に課されている固定資産税は、国際的に極めて稀な制度であり、DX実現に向けたAI・IoT投資やカーボンニュートラル実現に向けたGX投資など、生産性向上等に向けた革新的な設備投資を促す政策方向にも逆行しており、我が国製造業におけるサプライチェーン全体の国際的なコスト競争力の観点から撤廃に向けた抜本的な見直しを要望する。少なくとも、DXやGX対応の緊急性・重要性に鑑み、これらに関連し新規に取得した償却資産に係る固定資産税については即時に非課税とすべきである。
3.新しい国際課税ルールに関する実務負荷を考慮した国内法制の整備等
デジタル経済の広がりに対応すべく、OECD等において新しい課税ルールの国際合意がなされたことを受け、日本でも令和5年度税制改正で、国際最低法人税率(グローバル・ミニマム課税:Pillar2)の導入に向けた所得合算ルールに係る法制化が行われ、令和6年度税制改正においても一定の見直しが行われた。更に、国内ミニマム課税等の国内法制化については、OECD等の国際的な議論を踏まえ、令和7年度税制改正以降に対応することとされているが、企業の実務負担の更なる増加が懸念されている。また、グローバル・ミニマム課税の導入に伴い、外国子会社合算税制(CFC税制)については、事務負担軽減等の観点から一定の見直しが行われたが、未だ十分とは言えない。
こうした状況を踏まえ、令和7年度税制改正においても、CFC税制の更なる見直しも含め、引き続き、企業の実務負荷を考慮した国内法制の整備が必要である。
併せて、今後とも、国際課税ルールの整備にあたっては、グローバルに活動する企業間の競争条件の均衡化の観点から、国際的な協調体制の下で進めていくことが不可欠であることから、「BEPS包摂的枠組会合」の場等を通じ、不適切な課税や新たな二重課税の発生を回避するべく、効果的なモニタリングや適正な執行が行われるよう、官民を通じて働きかけていく必要がある。
[連名団体]
(一社)日本化学工業協会、(一社)日本機械工業連合会、(一社)日本自動車工業会、
(一社)日本造船工業会、(一社)日本鉄鋼連盟、石油連盟、石油化学工業協会、日本製紙連合会
以上