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グリーントランスフォーメーション実現に向けた令和5年度税制改正共同要望を提出

 日機連では、製造業関連団体で組織する「製造業等税制研究会」の加盟団体と協力し、7団体連名にて「グリーントランスフォーメーション実現に向けた令和5年度 税制改正共同要望」を策定、経済産業省に提出、その実現を要望した。

 

 

グリーントランスフォーメーション実現に向けた令和5年度税制改正共同要望

 新型コロナウイルスにより打撃を受けた我が国経済は、感染拡大の減速、各種政策効果や海外経済の回復により一時は回復傾向がみられたとはいえ、その後のロシアのウクライナ侵攻による国際情勢の不安定化や、資源高および物流の停滞等に加え、ウイルス感染の再拡大懸念等から、その先行きは不透明と言わざるを得ない。

 

 このような中、岸田政権では、「経済財政運営の指針2022(骨太の方針2022)」において、「新しい資本主義」の実現に向けた重点投資分野の一つにグリーントランスフォーメーション(GX)を挙げ、「脱炭素社会の実現に向けた官民連携の取組を一気に加速」し、「国内投資を拡大しつつ新たな成長のフロンティアを開拓する」ものと位置付けるとともに、首相官邸に設置された「GX実行会議」において、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革について、今後10年のロードマップを検討するとしている。

 

 こうした状況下、産業界では、ポストコロナにおける企業変革に加え、GX実現に向けて挑戦を継続していく所存であり、税制に関しても、GX実現に向け合理的ではない炭素税等の追加的課税措置ではなく、研究開発や設備投資等、GXに向けた産業界の取組みを後押しするよう、今までにない大胆な施策が必要である。具体的には、令和5年度税制改正については、下記の内容を製造業関連7団体の共同要望とする。

 

 なお、我が国企業の国際競争力を確保する国際的イコールフッティングの観点から、我が国の法人実効税率については、国際的な最低税率の合意レベルも勘案し、競争企業の成長著しい近隣アジア諸国やOECD主要国の水準を踏まえ、25%程度へ着実に引下げるとともに、繰越欠損金制度など、令和3年度税制改正において時限的に措置されたものがあるとはいえ、税収中立の制約の下で拡大された課税ベースについても本来あるべき姿に戻すことが必要である。

 

 

1.研究開発促進税制の拡充等

 GXの達成には、今までとは全く異なる次元の非連続的な技術革新が必要となる。一方、リーマンショック後、日本の研究開発投資は長期にわたり停滞し、その後のイノベーション力の低下につながったとの指摘もある。加えて、コロナ禍等の影響により、民間企業の研究開発投資に抑止傾向が強まっていることもあり、イノベーションを生み出す企業の研究開発投資マインドを後押しする観点から、税制面でも更なる支援策が必要である。

 とりわけ、GXについては、開発の緒についたばかりの極めて野心度の高い技術を必要とする分野が多く、その推進には企業努力に加え、強力な政策的後押しが不可欠であるため、特に、GX達成に資する研究開発に対しては支援措置を強化・拡充すべきである。また、研究開発税制が実効性を持つものとなるよう、平成 27年度税制改正において廃止された税額控除限度超過額に係る繰越制度を復活させるとともに、税額控除割合や同限度額を国際的に優位な水準へ見直すべきである。

 

 

2.設備投資促進税制の拡充および償却資産に対する固定資産税の廃止・縮減

 GXの実現には、グリーン分野への投資拡大が必須である。その際、経済安全保障等の観点から、サイバーセキュリティーの確保、国内外におけるサプライチェーンの複数化・強靱化といった課題に対応する必要もあり、デジタルトランスフォーメーション(DX)の視点からの取り組みも求められる。これらGXやDXの実現には、現行の生産プロセス入替えなどを伴う、大規模かつ積極的な設備投資が継続して行われることが必要であり、既存のカーボンニュートラル投資促進税制やDX投資促進税制などを含め、企業の投資意欲を促す設備投資促進税制を拡充すべきである。

 一方、我が国の償却資産を課税客体とする税制は、一部の国や地域で限定的にみられるものの、国際的に極めて例外的で、我が国製造業にとって国際的なコスト競争力を損なう大きな要因となっており、GX対応を始め企業の設備投資意欲にも逆行するものである。そもそも、償却資産に対する固定資産税は、設備から生み出される所得に課される税との二重課税の問題、設備型産業に税負担が偏重するという課税の公平性の問題や、地方財政に占める社会保障関係の割合が高まる中での受益と負担の関係の問題等、多くの課題を内包していることから、廃止すべきである。少なくとも、GX対応の緊急性・重要性に鑑み、これらに関連し新規に取得した償却資産に係る固定資産税については即時に免税とすべきである。

 

 

3.経済のデジタル化に伴う国際課税ルールへの対応

 経済のデジタル化に伴う新たな国際課税ルールについては、昨年10月8日に国際的な合意がなされ、2023年の導入(その後、一部スケジュール変更)を目指すこととされた。本合意は国際課税原則の抜本改革であり、企業活動に多大な影響を与えるものであることから、導入に当たっては、日本企業の将来のビジネス展開を考慮し、二重課税等とならないよう、各国での取扱いを整合的なものとし、制度の複雑化を回避し、既存制度の簡素化や執行時期の見直しを含め、納税者にとって過度な実務負担とならないよう、充分な配慮が必要である。

 併せて、企業間の国際競争条件の均衡化の観点からも、OECD/G20以外の国々も含めた国際的な協調体制の下で進めていくことが必要不可欠であることから、約130ヶ国が参加しているBEPS包摂的枠組会合の場を通じ、効果的なモニタリングや適切な情報管理により、不適切な課税や新たな二重課税が発生することを回避し、適正な執行が行われるよう、官民を通じて働きかけていく必要がある。

 

 

[連名団体]

(一社)日本化学工業協会、(一社)日本機械工業連合会、(一社)日本造船工業会、(一社)日本鉄鋼連盟、石油連盟、石油化学工業協会、日本製紙連合会