要望・提言等
我が国企業の競争力強化に向けた令和8年度税制改正共同要望を提出
日機連では、製造業関連団体で組織する「製造業等税制研究会」の加盟団体と協力し、7団体連名にて「我が国企業の競争力強化に向けた令和8年度 税制改正共同要
望」を策定、経済産業省に提出、その実現を要望した。
以下、要望書
世界経済は、中国経済の変調やロシアによるウクライナ侵攻が長期化するなか、米国の関税政策による影響もあり、その先行きについては不確実性が増々高まっている。我が国経済については、デフレ脱却に向けた兆しがみられるようになっているものの、持続的な成長を確たるものとするためには、国際環境下で競争する我が国企業の研究開発、設備投資及び生産・販売活動等を強力に支援する措置が引き続き必要であり、令和8年度税制改正では、以下の内容を製造業関連7団体の共同要望とする。
なお、我が国企業の国際競争力を確保し、積極的な国内投資や賃上げの好循環を促す観点から、実質的な税負担の適正化に向けて、法人実効税率については、国際的な最低税率の合意レベルも勘案し、競争企業の成長著しい近隣アジア諸国やOECD主要国の水準を踏まえ、25%程度へ着実に引下げるとともに、税収中立の制約の下で拡大された課税ベースについても適正化が必要である。
1.企業の研究開発投資およびイノベーション促進に向けた税制措置の拡充・延長
我が国の企業では、既に製造プロセスや事業の抜本的な脱炭素化やAIの活用などによる業務変革の実現に向けて様々な研究開発が進展しているが、グローバルな技術開発競争が激化する中、熾烈な国際競争を生き抜き、日本が世界のトップランナーの地位を維持していくためには、これら研究開発活動やイノベーションの一層の加速化が急務となっている。このためには、企業努力に加え、研究開発税制などの更なる拡充による後押しがますます重要となる。
研究開発税制については、企業のイノベーション促進に向け、研究開発投資の増加インセンティブ強化や、長期的に行われる企業の研究開発をより強力にサポートする観点等から定期的な見直しが行われているが、令和8年度税制改正においても、適用期限を迎える一般型の時限措置については延長した上で、税額控除限度超過額に係る繰越制度を復活させるとともに、一般型の税額控除率や上限についても国際的に優位な水準に見直すなど、制度の拡充が必要である。
また、研究開発活動等において、企業が自前主義から脱却し、スタートアップへの出資を通じたイノベーション推進による事業成長を図るべく、令和7年度末が期限のオープンイノベーション促進税制も延長すべきである。
併せて、イノベーションボックス税制についても、運用状況を踏まえつつ、中期的に対象となる知的財産や当該所得範囲の拡充等についても継続的に検討すべきである。
2.国内投資を広範に後押しする大胆な設備投資促進税制の創設
政府は、賃上げと投資の好循環の動きをより強固なものとし、中長期的な経済成長を実現するため、2040年度に官民国内投資を200兆円とする目標を掲げ、投資立国の実現を目指している。一方、米国・ドイツをはじめとする各国は自国に投資を呼び込むため、税制を含めた積極的な国内投資促進策を推進している。
日本においても、他国に劣後しないよう、立地競争力や企業の国際競争力の維持・向上、GX推進といった広範な経営課題に日本全体として対応すべく、企業の国内投資を積極的に後押しするため、業種や設備の範囲を限定しない簡素な手続きによる大胆な設備投資促進税制の創設が強く望まれる。
また、併せて、企業の設備、機械・装置等の償却資産の保有に課されている固定資産税は、国際的に極めて稀な制度であり、企業の国際競争力向上等に向けた設備投資を促す政策方向にも逆行しており、我が国製造業におけるサプライチェーン全体の国際的なコスト競争力の観点から撤廃に向けた抜本的な見直しを要望する。少なくとも、国内投資拡大の緊急性・重要性に鑑み、新規に取得した償却資産に係る固定資産税については即時に免税とすべきである。
なお、2050年カーボンニュートラル(CN)等に係る設備投資支援の観点から、既存の措置であるCN投資促進税制の延長・拡充や戦略分野国内生産促進税制の拡充・強化も行うべきである。
3.国際課税ルールに対する国際的な協調体制での取り組みと、実務負荷に配慮した国内法制の整備・見直し
デジタル経済の広がりに対応した新しい課税ルールの国際合意がなされ、日本においても、令和5年度税制改正以降、国際最低法人税率(グローバル・ミニマム課税:Pillar2)に係る諸制度の国内法制化が行われている。しかし、足元で、米国が、国際ルールと距離を置き、報復措置案を表明する等の動きがある。報復措置を撤回させるためのG7声明を踏まえ、現在、「共存」に向けた作業が進められているが、企業活動の妨げとならないよう、引き続き、国際的な協調体制の下で推進していく必要がある。
一方、日本の税制においても、グローバル・ミニマム課税と重複感のある外国子会社合算税制(CFC税制)については、目的外の増税や二重課税とならないよう、また、制度の重複や複雑化を回避し、我が国納税者にとって過度な事務負担とならないような見直しが必要であることから、適用免除税率の引下げ(現行の20%以上から15%以上)やグローバル・ミニマム課税で用いられる情報・計算結果の利活用を認める等の簡素化を行うべきである。
[連名団体]
(一社)日本化学工業協会、(一社)日本機械工業連合会、(一社)日本自動車工業会、(一社)日本造船工業会、(一社)日本鉄鋼連盟、石油化学工業協会、日本製紙連合会
以上
