調査・研究
令和4年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業について
当会では、経済産業省公募の令和4年度「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業費補助金に関する補助事業」を受託、実施した。
自動車や電機・エレクトロニクス分野等と異なり、ロボットの導入が進んでいないサービスや三品産業分野等においては、人手不足といった社会課題の解決のためのツールとして、ロボットに対する期待は極めて高いと考えられるものの、現時点では、特定の企業の活用を想定した活用範囲の狭いロボットの利用を前提とした開発や供給が行われる傾向にあるため高コストとなり、幅広くロボットが普及していない。そこで、ロボットの導入が進んでいないサービスや三品産業分野等にフォーカスをあて、ユーザー側の既存の業務プロセスや施設環境等を見直すことを前提とした、「ロボットフレンドリーな環境」を構築するための開発を行うことが本事業の目的である。
本補助事業において、「施設管理A1」、「施設管理A2-1」、「施設管理A2-2」、「施設管理A3」及び「食品」の分野において研究開発を行った。施設管理分野A1では「ロボットとエレベータ・扉との連携標準化」を開発課題に三菱地所㈱に、施設管理分野A2-1では「施設の物理環境の標準化」を開発課題に東急不動産㈱・㈱東急コミュニティー・ソフトバンク㈱・㈱日建設計に、施設管理分野A2-2では同じく「施設の物理環境の標準化」を開発課題に森トラスト㈱に、施設管理分野A3では「複数ロボットの群管理制御の標準化」を開発課題にパナソニックHD㈱・NECネッツエスアイ㈱に、食品分野では「盛付工程及び出荷工程の自動化を実現するための各種標準化」を開発課題に(一社)日本惣菜協会・㈱ベルク・マックスバリュ東海㈱・㈱ヒライ・㈱デリモ・カネカ食品㈱・㈱ジャンポリア・イケウチ㈱・㈱グルメデリカ・㈱八葉水産を、それぞれ事業者に選定、補助事業を実施した。
補助事業の効果は次の通り。
・ 施設管理分野A1に於いては、大手エレベータメーカーが初めて連携し、複数メーカーの設備が混在してもメーカーフリーなエレロボ連携システムを構築し、また、ワーカーの利便性に直結する実用的先進サービスを実現した。今後は、群管理前提の規格を整備し、ワーカー満足度向上サービスの横展開を図る。
・ 施設管理分野A2-1に於いては、ロボフレレベル評価に基づく物理的課題、施設利用者安全確保など運用上の課題を整理し、施設側での物理環境対策、ロボット側の対策、人(運用)側による対策それぞれについて検討、効果検証を行った。将来、施設状況に応じて合理的にロボフレ化を実現する手法の開発が期待できる。
・ 施設管理分野A2-2に於いては、昨年度、仮定義した「ロボフレレベル」の妥当性を検証、ロボット実装時において運用上の課題となる物理環境課題を洗い出した。また、各社のロボットが共通利用できる共有マーカー標準仕様を検討し、ロボフレマップの活用例を提示した。今後は、ロボフレレベルの規格化、共有マーカーとロボフレマップの規格化に向けた検討を行い、ユースケース創出とサンプルデータの収集を図る。
・ 施設管理分野A3に於いては、複数のロボットとロボット管理プラットフォーム(PF)での群管理の実証を行い、群管理の標準化に必要な要素として3点(標準的ロボット制御、PF間の情報連携、標準的運用ルール)の仮説に整理した。今後は当該仮説と要因例を想定し、ロボット群管理TCにおいて標準化議論を進める。
・ 食品分野に於いては、「惣菜盛付」ロボットシステムの更なるエンハンス、小型化に加えて、より工程を広げ「弁当盛付」「蓋閉め」「製品移載」ロボットシステムを開発した。また、ロボフレな環境構築に向けて「惣菜製造ロボットの最適化」「デジタルツインによる全体最適」「量子コンピューターによるロボット・人混在のシフト計算」「ロボットシステム・アズ・ア・サービスの立ち上げ検討」にも取り組んだ。
各分野の成果は以下を参照。