シンポジウム「機械安全分野における安全専門家育成と有効活用並びに機械設備の安全確保に関するシンポジウム」

シンポジウム「機械安全分野における安全専門家育成と有効活用並びに機械設備の安全確保に関するシンポジウム」

講演会

日機連主催『機械安全分野における安全専門家育成と有効活用
並びに機械設備の安全確保に関するシンポジウム』を開催

 

日機連は、3月25日 (水)に女性と仕事の未来館ホール(港区芝)において「機械安全」に関する『機械安全分野における安全専門家育成と有効活用並びに機械設備の安全確保に関するシンポジウム』を、機械および電気機械の製造業を中心とする約170名の参加者を得て開催した。

 

本シンポジウムは、日機連の機械安全推進特別委員会(委員長・栗原史郎一橋大学大学院教授)の下に標準化推進部が進める「機械安全」普及活動の一環として、「機械安全と企業価値に関する検討部会」(主査:㈱東京機械製作所取締役常務執行役員)及び「機械安全を設備安全に展開するための課題と方策に関する検討部会」(主査:栗原史郎一橋大学大学院教授)において企画・立案され、平成21年2月12日開催の講演会「最近の機械安全国際規格の紹介」に引き続き実施したものである。

 

本シンポジウム開催の背景・趣旨は、以下である。

我が国の機械産業が、今後も国際市場をリードしていくために、また、我が国の産業事故の削減に貢献していくためにも、機械安全を確保し国際安全標準の考え方に対応していくことが必要とされる。こうした中で、平成18年4 月に改正労働安全衛生法が施行され、機械設備に対するリスクアセスメントとこれを踏まえたリスク低減対策を実施することが努力義務とされた。これが機械設備メーカーに対しても間接的に国際標準の考えに則った機械安全の取り組みを促すことになっている。

しかしながら、我が国では、一般に企業における機械安全に関する取り組みは遅れており、実施にあたって多くの困難が予想され、その一つに人材の確保と活用方策の構築がある。機械安全専門人材は、現状では圧倒的に不足しており、早期の人材育成が必要とされる。

日機連では、機械安全人材を短期的に効率よく育成する手段と、その人材の活用を図り機械安全を確実に確保する方策について平成19年度に機械安全人材部会を設置し、前年度までの機械安全専門人材に関する調査報告成果と合わせて、「機械安全分野における安全専門家育成と有効活用に関する提言(ガイドライン)」を纏めた。

そこで、本ガイドラインを紹介し、取り組み加速のための建設的なご意見を仰ぐとともに、包括的テーマである「機械設備の安全確保」を主題として「機械安全分野における安全専門家育成と有効活用並びに機械設備の安全確保に関するシンポジウム」を開催することとした。

 

〔シンポジウム概要〕

主催者を代表して日機連常務理事石坂清よりのご挨拶に引き続き、下記の二題の基調講演を実施した。

 

〔基調講演〕

1.長岡技術科学大学 専門職大学院 教授 杉本旭氏(ISO/TC199国内委員会主査)より『機械による「事故」と「責任」』について(PDFファイル3.3MB)(禁無断転載)

杉本教授による基調講演の内容は、(1)日本のモノづくり安全には「権威」(Authorized)がない。(2)「権威」なき安全は迷惑だ。(3)本当の意味でこれを解決して行かないと日本だけが取り残される。安全に「権威」を持ってやって行こうとの主旨で講演をおこなった。

具体的には、日本の現状で事故が起こると「事故」→「事後責任」→「Blame」のフローを「事前責任(設計)」→「事故(Accident)」→「救済(保険)」のフローに替えて行かなければならない。ここでの「事前責任(Responsibility)」は、権威ある安全のグローバルスタンダード(Guide51,ISO12100,ISO14121)の正式入口より入ることにより、リスクアセスメントを実施して、安全にたいし賭けなしに準拠(認証の概念)したことの「事前の説明責任(Accountability)」を果たすことである。これにより事故はAccidentと判定され、設計者は保護されるとの考え方である。すなわち、日本の現状では事故が起こると、やるべきことをやった結果の不可抗力の事故、あるいはそうでない避けられた事故なのかの判定の根拠がないため、安全の責任問題がクリアーでないのである。正規のリスクアセスメントの実施を含めて、この実行にはトップの権威付けが必要不可欠であるので、この考え方を取り入れて日本のモノづくりを強くして行って欲しいことを強調された。

 

2.日機連 標準化推進部長 川池襄(提言取り纏め時は部会の主査)より『機械安全分野における安全専門家育成と有効活用に関する提言(ガイドライン)の紹介』について(PDFファイル0.7MB)(禁無断転載)


  安全を実現しようという種々の活動のなかで何故人材に行き渡ったかというと、安全な機械を造ろうとしたとき、どうしたら安全になるのか安全がわかる人がいないと駄目であるからである。安全がわかる人をどう創っていったら良いかと考えたとき、教える人や教科書も必要であるといった社会のシステムを一挙に構築する話になってしまうが無理がある。そこで、部会の2年間でこの様な形にすれば、日本の現状と将来を目指しての間に橋を架けられるのではないかとの考えで提言が纏められた旨述べ、提言の内容を紹介した。本提言は、機械安全の専門家育成とその活用に向けて、機械に係る企業、業界、大学、国などが実施すべき内容について提言として纏めたものであるが、特に企業においては、人材を確保しても企業内でどの様なミッションを与えていくかの仕組みがないと実効は上がらない主旨より、職務に対応した機械安全専門家の育成を強調した内容となっている。

 

 

日機連 石坂常務理事
長岡技術科学大学 杉本旭氏
   
長岡技術科学大学 杉本旭氏
日機連 川池標準化推進部長
   

 

〔パネルディスカッション〕

 

基調講演に引き続き下記のメンバーによりパネルディスカッション、テーマ『機械設備の安全確保』を実施した。

モデレーター:杉本 旭氏  長岡技術科学大学専門職大学院 教授
                    (ISO/TC199国内委員会主査)

パネラー   :石川 君雄氏 日本設備管理学会 理事
           梅崎 重夫氏 (独)労働安全衛生総合研究所 機械システム安全研究グループ部長
           首藤 俊夫氏 (株)三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部
                       安全科学グループ 主席研究部長
           水野 恒夫氏 (株)ブリヂストン 安全管理部 主任部員 

(パネラーは全員「機械安全を設備安全に展開するための課題と方策に関する検討部会」委員)

 

 
パネルディスカッション演台
 
長岡技術科学大学 杉本旭モデレーター
   
日本設備管理学会 石川君雄パネラー
(独)労働安全衛生総合研究所梅崎重夫パネラー
   (株)三菱総合研究所 首藤俊夫パネラー 
   (株)ブリヂストン 水野恒夫パネラー
   
  
会場客席
講師各位

 

以下の各パネラーの提言に対して、パネルディスカッションを行った。概要は次のとおり。
〔(株)ブリヂストン 水野氏〕(PDFファイル0.5MB)(禁無断転載)  
 
■機械安全 - 産業機械メーカーとリスクアセスメント
 ・ 産業機械メーカーにおけるリスクアセスメントの浸透度
  -   依然として低い機械メーカーのリスクアセスメントの実施率
 ・ 産業機械の安全性の現状
  -  製品安全における消費生活用製品と産業機械製品の格差は拡がる一方
  -  お寒い産業機械の安全性の現状 
 ・ 産業機械メーカーが置かれている「無風状態」の背景
  -   基本的に事業者(機械使用者)責任を規定する労働安全衛生法
  -   厚労省と経産省の行政の狭間にある産業機械
■設備安全 - 産業機械ユーザーとリスクアセスメント
 ・ 機械のライフサイクルアセスメントの中でのユーザーの役割 
  -  ユーザー段階の個々のライフステージで行うべきリスクアセスメント
 ・ 機械メーカー、ユーザーの共通課題
  -  ライフサイクルアセスメントの法制化要件
  -  リスクアセスメントの実行基盤の整備
 ・ 機械ユーザーにも必要な機械安全技術者
  -   メーカーおよびユーザー段階の個々のライフステージで行うリスクアセスメントにおいて果たす機械安全技術者の役割、育成、資格認定制度
   
〔日本設備管理学会 石川氏〕(PDFファイル0.4MB)(禁無断転載)
 
 複眼的視点での安全確保
  -  ユーザーの立場で安全の議論を
  -  設備のライフサイクルで安全確保を(バスタブ曲線の視点)
  -  複合設備群の視点で安全の議論を
  -  安全確保のための保全を保全費用と故障ロスとの関係を長期(10年継続)で考察(保全費用×故障ロスの年次循環)。保全費は戦略的思考が必須
   
〔(独)労働安全衛生総合研究所 梅崎氏〕(PDFファイル0.6MB)(禁無断転載) 
 機械安全、設備安全、労働安全の統合運用にあたっての一考察(統合生産システム(IMS)におけるリスク低減戦略を事例として)
 
■機械安全,設備安全,労働安全の統合運用に関する不具合(第一の問題)
  -  機械の設計・製造者がリスクアセスメントや保護方策を実施せず,機械の使用者側に委ねている。災害防止対策の“ムリ・ムダ・ムラ”が生じ,労働災害が多発。また、コストアップの原因。
  -  機械の使用者は,本来,変更管理に徹して災害防止対策を実施すべきなのに,この点の認識なし。
■機械安全,設備安全,労働安全の統合運用に関する不具合(第二の問題)
  -  日本では、ISO12100などの機械安全規格にしたがって機械の設計・製造を行うのが常識となりつつある。しかし,機械安全に関する知識と技術が急速に普及する一方で,労働災害の発生件数は下げ止まり,重篤度が増大している機械もある。
   
〔(株)三菱総合研究所 首藤氏〕(PDFファイル0.2MB)(禁無断転載)
 
■問題の本質
  -  オペレータの事故よりも保全作業者の事故の方が圧倒的に多い
  -  全ライフサイクルに占める保全作業の比率はかなり高いにもかかわらず、機械安全のグループ安全規格に定めてある内容は、圧倒的にシステムオペレータの使用上の安全に関するもの
  -  単体としての機械安全の枠組みは、機械設備、ファシリティーとして合理的に設備安全を確保できるかという問いに対して、不十分であるとの認識
  -  欧米産業構造と我が国の産業構造の闘い
■論点の整理
  -  機械安全と設備安全の違いの明確化が必要
  -  製造現場に設置された状態での機械群の設備安全を担う人材のスキルについて
  -  設備安全に関する事業者とメーカの役割分担について
  -  設備安全に関する事業者とメーカのリスクに対する責任分担について
  -  事業者とメーカ間の新たなビジネスモデルの形態について
  -  日本の「ものづくり産業構造を」変革すべきか?また、変革するための条件は?
  -  必要とされている法体系及び規制制度について
■提言(新しい技術課題)
  -  メーカは、徹底したモジュール化とインターフェース規格戦略でビジネスモデルを変革
  -  ICカード(RFID)を導入し、認証しなければ設備を動かせない仕組みを検討
     
 

 

最後に杉本モデレーターより下記を紹介して締めとした。

Darmstadt工科大学 Alfred Neudorfer博士は、長岡技大システム安全系客員教授でもあるが、彼は、次のように述べている。

「安全の主役はあくまでも現場の労働者である。機械設計者は、彼らの安全な使用(Safety of use)を助けるために事前に準備する立場である。彼らに安全な使用を求めるのは、設計によって全ての危険が取り除かれることはなく、安全な使用の条件を、設計者は、彼らに提示しなければならないからである。

機械安全では、設計で確保できなかった危険を、安全管理に委ねる。つまり、委ねられた危険の管理能力が前提である。日本は安全管理に特に優れた能力を持っている。KYTは、設計で確保できなかった危険に対処する優れた安全管理手法である。我が国(ドイツ)では、日本と比べて安全管理が弱体であり、安全が設計に強く依存している。使用安全が十分当てにできないために、全体の安全レベルが抑えられているのである。

安全は、設計で残された危険を安全な使用でどのように対処できるかにかかっている。有能な安全管理部門を有する日本は、安全の先進国になるだろう。10年後には、きっと、我が国(ドイツ)から多くの人が、日本に安全を学びに来ることになるでしょう。」

 

KEIRIN
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
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