講演会日機連講演会『機械安全国際規格の紹介
日機連は、12月15日 (火)に女性と仕事の未来館ホール(港区芝)において「機械安全」に関する講演会『機械安全国際規格の紹介―人を検出する保護設備関連特集―』を、機械および電気機械の製造業を中心とする約200名の多数にのぼる参加を得て開催した。 本講演会は、日機連の機械安全推進特別委員会(委員長・栗原史郎一橋大学大学院教授)の下に標準化推進部が進める「機械安全」普及活動の一環として、「機械安全実現へのセカンドフェーズに関する検討部会」(主査:㈱東京機械製作所取締役常務執行役員)及び「機械安全を設備安全に展開するための課題と方策に関する検討部会」(主査:栗原史郎一橋大学大学院教授)において企画・立案され、実施したものである。 講演会開催の背景、趣旨は以下である。 機械安全国際標準にも示される機械安全に対する基本的考え方は、欧米だけではなく、アジア諸国にも浸透してきており、国際的な共通概念となってきている。 我が国の産業界では、従来は機械で安全を守るという考え方が薄かったため、現状でも機械安全国際標準の考え方は十分に浸透しているとは言えず、欧米に比べて機械の安全性に関しては低いレベルにあると言わざるを得ない。さらに、労働災害事故件数が下げ止まりの傾向を示し、逆に規模の大きな事故が数多く発生している現状においては、早急にリスクアセスメントの技術的根拠となる機械安全国際標準の考え方を我が国にも積極的に浸透させて定着することが必要と考えられる。そのためには機械安全国際標準規格類の考え方をより深く理解する必要がある。 そのため、日機連では、昨年度までに主要な機械安全国際規格を解説する講演会を開催してきた。機械安全国際標準では、機械のリスクを低減又は除去するために、バリア(機械的隔壁)を使わずに一定の区域に存在又は接近する人を検出する保護装置に関する規格類があり、保護装置として重要な位置づけとなっている。しかし、適用に当って適切でない又は不十分なケースが散見される。近年、それらの規格類の改訂版が発行されており、正しく適用すること及び人の存在を検知する技術の将来動向について注視することが必要である。 そこで、本年度は、それらを含めて紹介する「機械安全国際規格の紹介―人を検出する保護設備関連特集―」と題した講演会を開催した。 講演会では、冒頭に、主催者を代表して日機連標準化推進部長の川池襄より、以下の重要な連絡事項を報告した後、講演に入った。 『まず始めに、皆様ご関心がある「機械安全分野の制御システム安全関連部」のEU圏における適用規格について、昨日(12月14日付)に公式の連絡が入ったのでご紹介します。 すなわち、EU圏では新機械指令の発効と合わせて、今年の12月29日をもってEN954-1(制御システム安全関連部のクラス分がカテゴリB,1~4)が、新規格EN ISO13849-1(制御システム安全関連部のクラス分がカテゴリB,1~4とパーフォーマンスレベルa~eの組み合わせ)に置き換わり、EN954-1が失効すると以前より案内されていましたが、このたび、12月29日以降(期限は未定)もISO13849-1に加えてEN954-1も適用延長がなされたとの公式連絡がありました。』 講演の講師とテーマは以下のとおり、 ・一橋大学大学院 商学研究科 教授 栗原 史郎氏 (日機連「機械安全推進特別委員会」委員長) ・(独)労働安全衛生総合研究所 機械システム安全研究グループ部長 梅崎 重夫氏 ・ オムロン(株) IABカンパニー セーフティ事業部 開発部 第2開発課 高原 孝義氏 ・ SUNX(株) センシング事業部 センサ・セーフティ商品部 セーフティ商品グループ 長谷川 佳宣氏
〔講演概要〕
(独)労働安全衛生総合研究所 部長 梅崎 重夫氏 本講演会では、保護装置を現場で活用する際の留意点と、現場で必要と考えられる保護装置と支援機器のあり方、および危険点近接作業を対象とした保護装置と支援機器の具体例として、アルミサッシ加工用プレス機械、ロール機、二次加工用プレスブレーキ、丸のこ盤を対象としたシステムを紹介した。今後は、空間全域を三次元で走査可能な監視技術、人体と物体の識別技術、無線通信を用いた遠隔操作制御・非常停止技術などについて産業機械への具体的な活用を進める予定である。 オムロン(株) 高原 孝義氏、 SUNX(株) 長谷川 佳宣氏 本講演会にて紹介した規格は、「機械類の安全性」分野のA,B,C階層構成の規格体系で「ISO12100-1,2:2003(JISB9700-1,2:2004) 機械類の安全性―設計のための基本概念、一般原則」規格及び「ISO14121-1,TR-2: 2007 機械類の安全性―リスクアセスメント」規格と合わせて最上位のタイプAの基本安全規格(すべての機械類で、共有の基本概念、設計原則を扱う規格)の下位であるタイプBのグループ安全規格(広範囲の機械類で利用できる安全または安全装置を扱う規格)に類別されるものである。 また、タイプAの基本安全規格で規定されている「設計者の観点によるリスク低減プロセス」で設計者によって講じられる保護方策である「ステップ1 本質的安全設計方策」、「ステップ2 安全防護及び付加保護方策」、「ステップ3 使用上の情報」の所謂スリーステップメソードの「ステップ2」に係るもので、同様に基本安全規格で「ガード及び保護装置は、本質安全設計によって合理的に危険源を除去できず、またリスクを十分に低減することもできない場合、人を保護するために使用しなければならない。」と明記・位置づけされているものである。 これらの規格類の発行年月、名称、JIS化状況は、下表のとおりである。
講演では、講師の豊富な実践経験から事例を交えながら詳細を解説した。 最後に、日機連 常務理事 石坂 清より閉会にあたっての挨拶を述べ終了した。
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