講演会
日機連講演会『機械安全国際規格の紹介』を開催
日機連は平成23年12月22日(木)に東京証券会館(東京都中央区茅場町)において講演会『機械安全国際規格の紹介』を152法人、14団体と個人による270名の参加者を得て開催した。 本講演会は、機械設備の安全性確保に携わる方々に機械安全の規格類についての理解を深めて頂くことを目的に、毎年度、機械安全国際規格開発の動向と主要な規格について解説する講演会を普及活動の一環として開催した。
先ず初めに日機連・石坂清常務理事より多数の参加者への謝辞と共に今回講演の四人の講師によるテーマの趣旨を説明してから講演を行った。 講演はISOとIECの国内部会を代表して、IEC/TC44部会の主査である長岡技術科学大学・福田隆文教授より『IEC/TC44の動向』を、またISO/TC199部会の主査である名古屋大学・山田陽滋教授より『ISO/TC199の動向』と題して各部会の位置づけや活動内容の説明を行い、新規および改定される規格の動向を短時間の中でポイントを絞って報告を行った。 続いて各部会の事例として住友重機械工業(株)・石川篤氏より『ISO14119(インターロックガード)』と題して現在の改定状況、1998版との対比、今後の動向を具体的な事例を用いて解説した。最後にテュフ ラインランド ジャパン(株)・杉田吉広氏より『IEC60204-1(機械の電気装置)』と題して現在の改定状況、制御回路及び制御機能について現在何が国際会議で議論されているかを中心に講演した。
講演後の聴講者アンケートから、回答者の96%の方々が参考になったとの評価を頂くと共に貴重なご意見を多数頂き、今後の機械安全の活動に反映させたい。
講演会のテーマと講師は以下の通り、
・「IEC/TC44の動向」(PDFファイル 1.63MB)(禁無断転載) 福田 隆文氏 長岡技術科学大学 技術経営研究科 システム安全系 教授 (IEC/TC44 部会主査)
・「ISO/TC199の動向」(PDFファイル612KB )(禁無断転載) 山田 陽滋氏 名古屋大学 大学院工学研究科 機械理工学専攻 教授 (ISO/TC199 部会主査)
・「ISO14119(インターロックガード)」(PDFファイル 3.3MB)(禁無断転載) 石川 篤氏 住友重機械工業(株) プラスチック機械事業部 技術部 部長(ISO/TC199 国内WG主査)
・「IEC60204-1(機械の電気装置)」(PDFファイル 781KB)(禁無断転載) 杉田 吉広 テュフ ラインランド ジャパン(株) テクノロジーセンタ 製品部 燃料電池グループ 室長(IEC/TC44/MT60204-1 エキスパート)
[講演概要] 1.『IEC/TC44の動向』 [福田 隆文氏 長岡技術科学大学 技術経営研究科 システム安全系 教授] (IEC/TC44 部会主査)
- IEC/TC44の担当範囲(機械類の安全性―電気的側面)
・IEC/TC44は機械及び関連装置の安全の内電気を用いる部分を扱う。
- IEC/TC44の組織
・国内委員数66名(内 国際エキスパート14名) ・主査:福田 隆文(長岡技術科学大学)副主査:藤本 康孝(横浜国立大学)
- IEC/TC44参加国
・Participating countries:20 Observer coutries:14 ・ISO13849とIEC62061の統合についてフランスが積極的に動いている。
- IEC/TC44部会(国内)活動概要
・IEC(国際電気標準会議)/TC44(機械類の安全性―電気的側面)の日本国内委員会 ・IEC/TC44が扱う規格の制定・改正に参画 ・IEC/TC44が扱う規格に対応するーJISの制定・改正原案の作成
- IEC/TC44の規格(グループ安全規格)とJISの関係
- IEC/TC44の今後の重要技術
・制御機能の安全性、通信の安全性、ソフトウェアの安全性、カメラ利用保護装置
- IEC60204シリーズ、IEC61496シリーズ、IEC61310シリーズの関連規格の紹介
- IEC/TC44で検討中の新規格の紹介
- 将来議論される可能性のある分野
・画像処理による識別技術 ・RFIDの応用 ・ソフトウェアの安全性立証・無線制御の安全性の立証
- 終わりに
・IEC/TC44部会の10年を超える活動により最近は規格の提案・策定への参画へと変化して 欧米主要国に並ぶ存在感を示すようになった。
2.『ISO/TC199の動向』 [山田 陽滋氏 名古屋大学 大学院工学研究科 機械理工学専攻 教授] (ISO/TC199 部会主査)
- ISO/199の組織
・国内委員数35名 ・Participating countries:26 Observer coutries:25 ・主査:山田 陽滋(名古屋大学)副主査:斉藤 剛(労働安全衛生総合研究所)
- ISO/TC199の担当範囲
・動力源を持つ機械類の安全性を取り扱う(安全装置、並びに安全確保のための物理的側面 を含む)。 ・機械の設計のための基本概念および一般原則(ISO12100) ・リスクアセスメント(ISO/TR14121-1) ・制御システムの安全関連部(ISO13849) ・安全距離、両手操作制御装置、非常停止装置、インタロック装置、ガードなどの基本的な安 全性を取り扱う規格(ISO13854、ISO13850他)。 ・機械設計のための衛生事項を取り扱う規格(ISO14159 他)。 ・他の機械安全規格及び製品安全規格を策定するためのガイド(ISO/TR18569他)
- ISO/TC199部会活動概要
・ISO/TC199が扱うISO規格の策定・改定に参画。 ・ISO/TC199が扱う規格に対応するJISの策定・改定原案の作成。
- ISO/TC199最近の動向
・ISO13849-1とIEC62061の統合のための文書策定を開始予定→ジョイントWGの設置。 ・ISO13849-1に関連した新規作業アイテムの考案。 ・ISO13849-1へのPLの導入。 ・定期見直しによる改定作業。 ・人間工学的要求事項の導入。
- 主な規格の動向
・新規提案された規格(ISO13849-1関連、追補など)。 ・改定作業中の規格(ISO13850 ISO14120 ISO14119 ISO13849-2他)。 ・改定作業を終了した規格(ISO12100? ISO13857 ISO11161 ISO13855他)。 ・新規に発行された規格(ISO29042シリーズ)。
- ISOとJISの対応表の説明
- 今後予定している活動
・ISO13857に関連したTRの検討。 ・RFIDとカメラを用いた存在検知手段の規格化検討。
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長岡技術科学大学 福田 隆文氏
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名古屋大学 山田 陽滋氏
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3.『ISO14119(インターロックガード)』 [石川 篤氏 住友重機械工業(株) プラスチック機械事業部 技術部 部長] (ISO/TC199 国内WG主査)
- ISO14119とは?
・機械の安全ガードに関連するインターロック装置の設計および選定のための一般要求事項
- ISO14119の各国対応
・米国(ANSI B11.19) 欧州(EN 1088) 韓国(KS B ISO14119) 中国(GB/T 18831) 日本(JIS B9710)
- ISO14119:1988の改定作業
・1998年:第1版発行 ・2007年:AMENDMENT1発行 ・2008/7:WD発行 ・2009/9:CD発行 ・2011/9:DIS発行
- 現行版(1988)とDIS版(2011)の対比
- 適用範囲
・機械の安全ガードに関連するインターロック装置の設計と選定の原則。 ・エネルギー源の特性如何にかかわらない。 ・インターロック装置を作動させるガードの部品も含まれる。
- 用語(変更点)
・定義される用語が大幅増(9→30個)。 ・インターロック装置をTYPE1~4に分類。 ・アクチュエータのコード化レベルの定義が追加。 ・無効化に関する定義が追加。 ・ガードロッキングの開放手段の定義が追加。
- TYPE1~4インターロック装置説明
- アクチュエータのコード化レベル紹介
- 無効化の可能性を最小にする実装方法と無効化の動機とその除去または最小化
- 無効化対策と無効化の可能性を最小にする設計の考え方
- ガードロッキング装置の種類と保持力及び静的な最大操作力、補助的解除方法
- インターロック装置の選び方と使用環境に対する配慮
- 制御の要求事項
- ANNEX(付録)の抜粋の説明
- 今後の予定
・DISの投票期限(2012/2/22)までに投票とコメント提出 ・FDISの発行と投票:~2012年中旬 ・ISOとして正式発行:~2012年中 ・JIS B9710の改定作業:2012年後半~2013年
4.『IEC60204-1(機械の電気装置)』 [杉田 吉広氏 テュフ ラインランド ジャパン(株) テクノロジーセンタ 製品部 燃料電池グループ 室長] (IEC/TC44/MT60204-1 エキスパート)
- IEC 60204-1改定動向
・第1版IEC 204-1:1967 ・第2版IEC 204-1:1981 ・第3版IEC 60204-1:1992 ・第4版IEC 60204-1:1997 ・第5版IEC 60204-1:2005 → JIS B9960-1:2008(MOD)技術的内容に修正あり。 ・第6版IEC 60204-1:201X → 現在CDに対して提出されたコメントの審議中。 2012/1に第13回ミーティング予定。
- IEC 60204-1の紹介
・1)適用範囲 2)引用規格 3)用語及び定義 4)一般要求事項 5)入力電源導体の接続、断路器及び開路用機 6)感電保護 7)装置の保護 8)等電位ボンディング回路 9)制御回路及び制御機能 10)オペレータインターフェイス及び機械に取り付けた制御機器 11)制御装置:配置、取り付け及びエンクロージャ 12)導体及びケーブル 13)配線 14)電動機及び関連装置 15)附属品及び照明 16)マーキング、警告標識及び符号 17)技術文書 18)検証
- IEC 60204-1の第4版から第5版への改定ポイント
- IEC 60204-1の規格の目的と適用に関する指針
- IEC 60204-1の適用範囲
・稼働中には手で運搬出来ない機械に用いる、電気・電子・プログラマブル電子の装置及びシステムについて規定する。連係して稼働する一群の機械も適用範囲に含む。 ・機械の電気装置の電源接続点から内側 ・公称電源電圧:交流1000V以下、直流1500V以下 公称周波数200Hz以下他
- 制御回路及び制御機能の分類
- 制御回路の電源、電圧、保護の説明
- 起動機能と起動に関する条件
- 停止機能と停止に関する条件
- 停止機能の停止カテゴリの説明
- 運転モードの制御機能の説明
- 安全機能及び/又は保護方策の中断の説明
- 運転及び非常操作に関する一般事項の説明
- 非常停止、非常スイッチングオフに関する一般事項の説明
- ケーブルレス制御に関する制御の制限、停止、複数の操作盤及び電池電源を用いる操作盤の説明
- 保護インタロックに関する説明
- 故障時の制御機能に関する説明
- 故障時のリスクを最小にする方策
・制御回路を機能設置用保護ボンディング回路に接続する。 ・制御機器を接続する。 ・非通電による停止。 ・被制御装置への制御回路導体をすべて開閉。 ・直接開路動作機能をもつ開閉機器の使用。 ・望ましくない作動を起こす故障を低減するような回路設計。
- 故障時の制御機能に関する部分的又は全体的冗長性の採用の説明
- ダイバーシティ(多様化設計)による故障時の制御機能の説明
- 故障時の機能試験の採用に関する説明
- 終わりに
・改定中の規格:・IEC60204-1(第6版) ・IEC13849-2(第2版) ・ IEC13850(第3版) ・開発中の規格:・IEC62061(追補1) ・ISO13849-1(追補1) ・IEC62745(ケーブルレスコントローラ・ IEC62061とISO13849-1の統合
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住友重機械工業(株) 石川 篤氏
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テュフ ラインランド ジャパン(株) 杉田 吉広氏
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この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
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