講演会
シンポジウム“「機械安全」の新しい波 ―「機械安全マネジメント」を企業経営のプラスミッションに―
SUMMARY
- “ 「機械安全」の新しい波―「機械安全マネジメント」を企業経営のプラスミッションに―”と題して、日機連主催でのシンポジウムを、平成18年10月4日(水)機械振興会館大ホールにおいて開催した。
参加者は機械および電気機械などの製造業を中心に、約200名の多数にのぼり、これは昨年の労働安全衛生法の改正や、昨今の多発する機械の安全性の不具合による災害事故を受けた「機械安全」に対する関心の高まりを示すものと言える。
- このシンポジウムは「機械安全」普及活動の一環として、日機連の機械安全推進特別委員会(委員長:前沢淳一/ 三菱重工業(株)代表取締役 副社長)の下に「機械設計リスクアセスメント普及部会」(主査:佐藤昌良/(株)東京機械製作所 取締役)を設置して企画・立案したもので、シンポジウムという形態は日機連として初めての試みであった。
- シンポジウムの狙いは、「機械安全」のいろいろな側面から幅広く課題を提供して、企業が「機械安全」を実践するに当たって、責任と義務を求める仕組みや、認証制度、保険制度などにも目を向け、これら全体を俯瞰して議論する中で、企業に問題認識を新たにしてもらうということにあり、日機連としては、これらを通じて「機械安全」の取り組みの輪が機械を製造し、使用する企業各位にさらに広がっていくことを期待したものである。
- プログラムでは、「機械安全」に造詣の深い向殿政男氏をはじめ、杉本旭氏、栗原史郎氏、松本俊次氏などの先生方による基調講演と、座長の向殿氏のもとに、日頃「機械安全」の実践に努力されている業界関係者の首藤俊夫氏、宮川光雄氏、松前嘉昭氏、大村宏之氏などをパネリストに加えてのパネルディスカッションからなり、“「機械安全」のインフラは整備されているのか?”また、“企業にとって「機械安全」を実践するインセンティブは何なのか?”などについて、会場の参加者との質疑も含め、活発な討議を展開した。
- シンポジウム終了後には、参加者全員を対象にアンケート調査を実施し、その回収率は約60%であった。その結果を見ると、ほぼ全員の人から好意的な評価を受けることができた。特に、基調講演に対しては「設計者の責任や技術者の倫理」などに関心が高く、パネルディスカッションでは「保険制度」、「企業事例」など専門家による具体論の展開があって、“大変興味深く、有意義であった”と好評であった。
また、企業が抱える解決すべき課題としては、「安全確保に対する技術力の向上」や、「企業内の人材育成」などで、更に、次回希望するテーマとしては「国際安全標準や法規制などの内容・動向」などが上位にあり、これらは、今後の日機連の「機械安全」に係る普及活動計画を示唆するものであると考える。
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今回のシンポジウムは、内容が大変盛り沢山だったこともあって、時間的に制約が厳しくなり、十分な議論が尽くせなかったテーマもあったが、参加者に「機械安全」を取巻く社会的環境などについての問題認識を共有してもらうという所期の目的は達成できたと思う。
シンポジウムの内容
(1)基調講演
1. 「機械安全」を取り巻く最近の動向(PDFファイル557KB)(禁無断転載)
講師: 向殿政男 明治大学 理工学部 学部長
・ 安全を取り巻く現状 (労働災害に見る)
・ 国際安全規格の理念 (機械安全を例に)
・ 安全と技術と社会 (安全曼荼羅と安全学)
・ より高度な安全の実現に向けた恒常的活動へ
2. 機械安全における設計者責任と安全シナリオ(PDFファイル1.66MB)(禁無断転載)
講師: 杉本 旭 長岡技術科学大学 大学院 教授
・ 誰の責任か? (日本の民法、国際規格)
・ ハインリッヒの法則
・ 危険源なきリスクはなし(安全シナリオ)
・ 安全確認の原理(「止まる安全」、シンドラーエレベータ事例など)
3. 安全スタンダード先進国へ(PDFファイル225KB)(禁無断転載)
講師: 栗原史郎 一橋大学 大学院商学研究科 教授
・ 最近の事故や不祥事をスタンダードの視点から見る
・ 規制と市場の組み合わせで安全を高度化
・ 経営資源間および社会との間で「安全連鎖」を形成
(ヒト、モノ、機械設備、カネ、情報・知識)
・ 品本主義への挑戦(第三者認証)
4. 企業事例にみる「機械安全」への取り組みの実態(PDFファイル969KB)(禁無断転載)
講師: 松本俊次 技術コンサルタント 技術士
・ リスクアセスメントによる「機械安全」取り組み事例
・ 「機械安全」のニーズと動機
・ 「機械安全」と経営環境:日米の違い
・ 米国の労災に関わる法及び保険の実態
(2)パネルディスカッション (参考資料 「機械の安全」確保のための社会的仕組みと企業の取組概念図(PDF91KB)
1.サブテーマ1
社会的仕組みなど「機械安全」のインフラは整備されているか?
(1) 法体系について考える
・ 改正労安法による「努力義務」規定、責任の所在などについて
・ JIS規格(国際安全規格)と法の関係
・ 市場と規制との関係からみた法規制の在り方について
(2) 標準化(スタンダード)について考える
・ スタンダードの意義、戦略について
・ 望ましい安全規格体系とは?
(3) 適合性評価(認証)・保険制度について考える
・ 「機械安全」の認証制度は機能しているか?
・ 保険制度が有効に機能するためには?(欧米との差異の観点から)
(4) 事故災害情報の管理について考える
・ 情報の収集と管理方法について
・ データの分析と情報の開示について
(5) テーマ1のまとめ
・ 我が国の社会的仕組みは如何にあるべきか?
(安全要求基準の明確化と立証の仕組み、企業努力の報われる社会環境の改善)
2.サブテーマ2
企業のインセンティブなど「機械安全」のニーズはなにか?
(1) 企業における「機械安全マネジメント」の意義について考える
・ 機械安全マネジメントとは?
・ 製品ライフサイクルの安全確保のための体系化の考え方について
・ 機械導入のマネジメントシステムの実践について
・ 機械安全に係る企業と工業会の在り方について
(2) テーマ2のまとめ
・ ネガティブな側面(罰則や社会的責任など)と、ポジティブな側面(企業価値を高めるなど)から考える
パネルディスカッション議事概要(PDF229KB)
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