受賞者紹介

科学・ものづくり好きな青少年を育成するための幅広い招致活動と体験見学会の開催

京都府久御山(くみやま)町
京都機械工具(株) KTCものづくり技術館
その他受賞メンバー
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推 薦 者
全国作業工具工業組合
顔写真

宇城邦英  (57)
代表取締役社長

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同社設立50周年記念事業の一環として、02年に「KTCものづくり技術館」を建設。翌年から、セミナー&工場見学&ミュージアムで、ものづくりの一体型体験会や研修を無料で提供。小学生から大学生、親子、企業、プロの技術者まで、年代・職業・見学テーマに応じた様々なプログラムを用意、きめこまやかな対応を展開している。工場では、材料切断・鍛造から表面処理まで、金属加工のほぼ全工程を見学でき、またミュージアム内では同社の様々なハンドツールを実際に試せる場も。「おもてなし、こだわり、挑戦、共感」をキーワードにしたハード・ソフト両面からものづくりの魅力を体感できる。来館者数は年間平均で5000人におよび、10年2月現在で、全都道府県から150 校以上の学校、世界76カ国から2000人以上の海外技術者研修を受け入れている。

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全社一丸の建設プロジェクト。45の社内チームを編成し

 巨大なドロップハンマーが振り下ろされ、腹の底まで響き渡る轟音や振動と共に、1000tのエネルギーで特殊鋼材が成形される鍛造現場。工場見学コースで最初に案内されるこの工程で、まずほとんどの見学者が度肝を抜かれるという。
 同じ敷地内でハンドツールを一貫生産している同社は、業界では国内唯一の存在。一見シンプルに見えるレンチやドライバーなどの工具類が、いかに様々な工程を経て、いかに熟練技術者の手塩にかけられ誕生するのかを体感できる。これまでも同社は、近隣の学校の社会科見学や、プロのメカニックたちの研修を無料で受け入れてきた。その進化系として、「KTCものづくり技術館」新設の構想が生まれたのは、会社設立50周年を2年後に控えた98年。宇城さんは、次の50年に向けた新たな価値観を創造したいと考えていた。
 「創業以来、お客さまの声に応えたものづくりをしてきました。つまり育てていただいた。これから先、もっとお客さまの声を聞き、私たちのものづくりへの思いも伝える、そんな双方向の発展的な情報拠点にしたいと建設計画を立てました。記念館や研究施設を建てる案も出ましたが、過去を振り返るだけで、我々のためにしかならない施設では意味がないと思ったのです」
 まず、社内に9名からなる記念棟建設委員会を設け、さらに45のチームを編成。自薦他薦約100名の社員が部署を超えて参加し、本業のかたわら活動した。各チームの担当は、プロジェクトごとにショールーム、オフィス、屋上、ミーティングスペース、トイレ、階段に至るまで実に様々。「とことん本物を追求しよう」のかけ声のもと、設計デザインから部材、サービス内容まで密な議論を重ねた。アイデア出しや情報収集にとどまらず、良いと聞けば地方へも出向き、建築部材のサンプルまで入手するという熱心さ。
 「私も何カ所か社員と一緒に見に行きましたよ。館内のハード・ソフトすべてに、みんなのこだわりが込められています。だから『なぜ、ここはこうした?』と問われれば、すべて明確に答えられます(笑)」

進化を目指すチャレンジ精神。その感動と共感がつくり出す好循環のスパイラル

 しかし、計画当時は世界的な不況が懸念され始めた頃。本社屋も兼ね備えた建築ともなれば莫大な資金が必要だし、見学者の受け入れ態勢も強化しなくてはならない。なぜ、そこまでして実現したかったのか。
 「確かに、それどころではないという意見もありました。しかし、これすら不可能では、当社に未来はないと思ったのです」
 創業時から経営理念を遵守し、性能・品質にこだわり、買い求めやすい価格で製品を提供してきた。だが、「それは当たり前のこと」と、宇城さんは言い切る。
 「新たな価値観が必要だと思ったのです。当社はおかげさまで国内では業界トップです。ですが、さらに進化を遂げねばならない。どんな思いでつくっているのか。どんな製造方法か。そのこだわりに直接触れて『求めていたのはこれだ!』と感じていただき、つくり手と使い手が本物への思いを共感する。その共感から生まれる"感性価値"こそが、この先50年の当社の進化にもつながる。そう確信したわけです」
 ものづくりへのこだわり。それは常に使い手の心を満たし、プロメカニックをうならせ続ける"本物"へのあくなき追求にある。その理念は同館の随所にも貫かれ、そして02年に完成した。
 「修学旅行の一環で来館した高校生が、帰宅した夜にテレビで国際カーレースを見て、ピットクルーが手にする工具に当社のロゴを見つけて驚いたと。『俺たち、すごい会社へ行ってきたんだ』と、翌朝、学校で大騒ぎだったようです(笑)。時差があってもいいんです。本物を体感した子どもたちが何かを得て、将来、ものづくりの楽しさ、こだわり、ひいては心の豊かさまではぐくむことができたら……何より嬉しい」
 今できる限りの理想をかたちにし、そして明日にはさらなる進化を目指す。それが同社のものづくりであり、その精神で取り組んだこの館は、まさに"本物"の集大成。だから、何度訪れても新発見がある。これから先も、ものづくりの神髄を多くの人々の心に深く刻み続けることだろう。

京都機械工具(株) KTCものづくり技術館

http://mg.ktc.co.jp/

設立
1950年8月
資本金
10億3208万円
従業員数
280名(2009年12月現在)
ワンポイント
自動車整備用工具、一般産業用工具など、1万2000アイテム以上の高品質な製品とサービスを提供するハンドツールメーカー

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来館者はまず会社説明やセミナーを受講し、担当者の案内付きで工場見学へ。鍛造、機械加工、熱処理、表面処理など、工程ごとに分かれた各工場を回る。最後は質疑応答、双方向で意見を交わす

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約3000アイテムが展示されている1階のショールーム。工具を試せるツールカフェや実車を使えるガレージピットも。2階はDIY 室や歴史展示コーナーなどを設置。本社機能を果たす3階には、くつろぎの空間として社員OBも利用できる和室も完備

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京都府で第1号となった屋上ガーデンを造園。ハーブを中心に100 種以上が植栽され、メンテナンスは社員有志が行う

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来館者の国旗を揚げ、入り口のモニターには来館者名を映すなど、おもてなしの心が随所に

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熱心に見学する大阪府立今宮工科高等学校・機械科の皆さん