受賞者紹介

100年前の旧式織機を復元・改良し、世界初の「たてよこよろけもじり織り」を開発

愛媛県今治市
工房織座
その他受賞メンバー
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推 薦 者
愛媛県産業技術研究所 繊維産業技術センター
顔写真

武田正利  (59)
代表

最新マシンでもできないことはある。技術の原点にさかのぼって考えたことで、常識外れのアイデアが生まれた
summary

日本各地にある織物工場から、100年ほど前に製造された廃棄同然の旧式織機を買い取り、壊れた部品を自ら設計するなどして復元。さらに改良を加えながら、オリジナルの「着尺一列機」を完成させた。ゆるいテンションとスピードで糸にストレスをかけず、天然素材を生かした手織りに近い味わいのあるコットンマフラー、ショール、キャップなど、オンリーワンの織物製品を生産・販売している。また、高速革新織機には真似できない「もじり織り」(2本の縦糸が横糸にもじり合うように絡んで織物組織を固める)に、特殊な変形筬(おさ)と制御装置を併せることで、縦糸・横糸の両方をよろけさせる「たてよこよろけもじり織り」を世界で初めて開発した。

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無個性で画一的な製品を高速・大量生産し続ける……。そんな仕事への情熱が薄れる

 日本一のタオル生産量を誇る今治市のタオルメーカーに勤務していた武田さん。会社員時代は技術者として工場の責任者を務めるかたわら、市やタオル組合からの依頼を受け、大正から昭和時代初期に活躍した旧式織機の復元作業にも携わっていた。
 「日本で初めてつくられたタオル織機『ヒゴ織機(わな織り)』や『2丁筬(おさ)バッタン織機』『足踏み式タオル織機』など、廃棄同然の旧式織機を、織物産地にある工場から譲っていただき、自分で復元してはタオル資料館などに納めていました。その経験を通じて、日本の織物や織機の原点に触れるうちに、高速革新織機には真似ができない、やさしいものづくりの魅力にひかれていったんです」
 また武田さんは、昔から「拭く」以外のタオルの使い道を模索しており、11年前に勤務先で、タオル製造技術を生かした"今治産・コットンマフラー"を開発・製品化している。この「巻く」商品が、予想を超える大ヒット。会社および地場産業の業績向上に大いに貢献した。しかし、その売れ行きに反比例するように、無個性かつ画一的な工業製品を高速で大量生産する、自分の仕事への情熱が薄れていく……。そして05年11月、武田さんは38年勤めた会社に別れを告げ、独立を果たした。
 「大量生産にかかわる仕事は、もうやりたくなかった。自分にしかできない技術で、数は少なくとも、いかに高い付加価値のある商品をつくって勝負するか。大手企業と競争しなくても勝てるマーケットはどこか。そう考えた結果、旧式織機を使って、職人の技や美意識、そして思いをも織り込むことができる商品をつくろうと決意。また、新しい織技術の開発も目標としました」
 武田さんは、再び徳島や京都などの織物工場を訪れ、旧式織機の回収を開始する。豊田佐吉氏が発明した豊田式織機など、数台の織機を入手した。これらを復元、さらに改良を重ね、世界でたったひとつのオリジナル「着尺一列機」を完成させる。ここから、武田さんが起こした「工房織座」の挑戦が始まっていく。

小さな工房が生み出した世界初の織技術の肝は、旧式織機と特殊筬の協奏

 「まず、縦糸がウェーブしたようなデザインのよろけ織りにトライしてみました。平織り、綾織り、朱子(しゅす)織りなどの通常の織り方では、洗濯することにより、よろけが真っすぐに戻ろうとします。が、着尺一列機に改良を加え、2本の縦糸が横糸にもじり合うもじり織りで構成することで、その問題は解消できました。さらに高速革新織機では絶対に真似できない織技術を追求し、開発に成功したのが縦糸と横糸を同時によろけさせるという、世界でも例を見ない『たてよこよろけもじり織り』です」
 この手法で織られた布は、平面であるにもかかわらず、表面に凹凸感があるような立体的デザインが生まれ、何とも不思議な模様を浮き立たせる。この特殊な織技術を実現するために、どうしても必要だったもの……。それが、織機に設置して縦糸の密度を決めるオリジナルの特殊筬だ。
 「京都・丹後にある工房に何度も通い、打ち合わせを重ねながら完成させたものです。この筬なくして、『たてよこよろけもじり織り』は実現しませんでした。また当初、筬の動作を制御するためにコンピュータを導入しましたが、旧式織機と相性が合わなくて誤作動が多発。その後は、フィルム形式の制御装置が活躍しています」
 スローに働く旧式織機が織りなすコットンマフラー、ショール、キャップなどの商品原料は、最上級のコットン、シルク、リネン、ウール、和糸といった天然繊維だ。染色加工も、本藍、草木、ハーブ、柿渋などの手染めが中心。どこまでもこだわるから、同工房の商品は、織機1台につき1日20~30枚しかつくれない。だが、強烈なオリジナリティと高級感、希少性が徐々に評判を呼び、今では全国各地のセレクトショップなど50軒を超える小売店や有名通信販売会社が商品を取り扱っている。
 「様々な企業から提携話をいただいていますが、今後も規模を追う経営はしません。うちのスタンスを崩すことなく、お客さまを増やしていくことはできるはず。織物の原点を探れば、まだ誰も見たことがない織技術を開発できると信じていますから」

工房織座

http://oriza.jp/

設立
2005年11月
資本金
-
従業員数
6名(2009年12月現在)
ワンポイント
旧式織機を復元・改良し、世界初の織技術「たてよこよろけもじり織り」を開発。高付加価値のオリジナル商品を生産している

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復元・改良された豊田式織機など、旧式織機6台が稼働する工房

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波状に形成した特殊筬。織機に設置し、上下に動かすことで縦糸と横糸に「よろけ」のデザインを織り成す

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制御装置も昔ながらのフィルム方式で動いている

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不思議な立体感をかもし出す「たてよこよろけもじり織り」でつくられたマフラー。肌触りが良く、通気性や保温性にも優れている

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工房に隣接するファクトリーショップ「織座」。定番商品のコットンマフラー、ショール、キャップ、一点ものなどを販売中