受賞者紹介

ツキ板への樹脂含浸により、柔軟で耐久性のある天然木シートと天然木織物を開発・実用化

大阪市天王寺区
ゼロワンプロダクツ(株)
その他受賞メンバー
●東洋突板工芸(株)/大関一宏
●龍谷大学/大柳満之
●(株)立野矢/立野将初
●山松織物/山松祥伸
●マルサク(株)/山本雅洋
推 薦 者
(株)ベンチャーラボ
顔写真

樋口伸一  (55)
代表取締役

自分が欲しくなるような木のバッグ。その探究心が原動力となり、新素材開発へと導いた
summary

檜や黒檀などの天然木を薄くスライスして得られる「ツキ板」に、高分子化合物の樹脂を含浸させることにより、柔軟で折り曲げに強い天然木自在シート「テナージュ」を開発した。寸法変化がなく、縫製も可能だ。従来型では、強度を保つ目的で表面をプラスチックやフィルムで覆っているため、天然木の風合いが失われるのが難点だったが、この「テナージュ」は木目の美しさ・温もりをそのまま残せる。インテリア、携帯電話、パソコン、車の内装などの工業製品に幅広く活用されている。さらに、同シートを一定幅に裁断し、西陣織の技法を応用して経(たて)糸として使用するという画期的な方法により、木目を再現した京織物「木織テナージュ」も開発。テナージュよりもさらに応用性が高く、高級生地として製品化も実現。従来の革製品や布製品と同様、様々な分野での利用が期待される。

summary

 学生時代からバッグが好きで、いずれは自分でつくりたいと考えていた樋口さん。常日頃、どんなバッグにしようかと模索していたが、出張先のジュネーブで衝撃的な出合いをする。木製のアタッシェケースだ。一目で木の温もりと美しさにひかれた。
 「ところが手に取ってみて、その重さにびっくりしました。木をくり抜いただけのバッグですから当然なんですけど(笑)」
 軽くて自分でも欲しくなるようなバッグをつくりたいと、帰国後、木工会社や縫製工場を訪ね歩いた。ツキ板の裏にコート紙を張り付けて強固にして縫えば、思いどおりのバッグになるのでは。だが、誰に聞いても「木は縫えない」と断られ続けた。
 「そんなに言うならと、ある縫製職人が目の前で縫ってくれたんです。業務用ミシンの針が通って、縫えた!と思ったら、ツキ板がパリッと割れた。『だからムリだと言っただろう』と鼻で笑われましたよ」
 縫製がムリならば、逆の発想でバッグの表面にツキ板を接着剤で貼ってみた。が、まさに「取って付けたような感じ」で、納得できる仕上がりではなかった。
 「縫える木なんて、探せばあるだろうと思ったけれど、どこにもない。誰に聞いてもそんなものは世の中にないと。技術立国ニッポンなのに、縫える木がつくれないのかと思いましてね。わからないことはわかる人に聞け、というのが私の信条で、結局大学の教授に相談したんです。『人が考えないようなことを考えるのは素晴らしい』と励ましていただいて。共同研究をしてくれる教授がどこかにいるかもしれないと言われ、あちこち聞き歩きました」
 そして、龍谷大学に協力を求め、二十数名が居並ぶ教授会でプレゼンに臨んだ。
 「最初は誰ひとり興味を示してくれなくて、ウケないテーマなんだと落ち込みました」そんな中、手を差し伸べたのが大柳教授だ。まずは、龍谷大学のレンタルラボで基礎研究から開始。そして2年半後、天然木自在シート「テナージュ」の開発に成功する。特許流通アドバイザーの紹介で、九州の東洋突板工芸と生産ライセンス契約を結び、製造ラインも整えた。そして念願の自社製バッグも実現。しかし……。
 「日本とアメリカで特許も取って、さぁバッグが売れるぞ!と思いました。でも、思うように売り上げが伸びない。縫える木はできたけれど、もっと柔軟にデザインできる素材に進化させなくてはダメだ」
 布のようにならないか。樋口さんは、またもや様々な専門家に聞いて回った。協力してくれた人たちのためにも、立ち止まるわけにはいかなかったからだ。

地域も業種も超えて、6人のプロがひとつのチームに。

 樋口さんが苦慮しているちょうどその頃、京都でも木と格闘する職人たちがいた。「木を糸にして織物ができないか」と商社に依頼され、職人仲間(山松織物の山松氏、マルサクの山本氏)と挑戦を続けていたのが、織物会社・立野矢の立野さんだ。木をスリットして糸状にし、同時にそれを巻き上げ、織り、元の木目をそのまま再現する。この至難の業は、3人の熟練職人の技をもってしても思うようにはいかず、一度ならず二度までも商社に「できない」と断った。だが、相手もあきらめない。
 「ここまでできているのに、と言われて、職人の意地に火が付いてしまって(笑)。設備投資したくなかったから断ったけれど、金が続く限りやってやろうと」立野さんは新たな織り機を購入・改造し、試行錯誤を重ね、そしてやっと納得の仕上がりを得た。
 「ちょうどその頃、知人から、『縫える木を糸にして織れないかと聞き回っている大阪の人がいるらしい。立野さんたちならできるんじゃないか』と言われまして。その木に刺繍ができるのなら、ラクにできるよと答えたんです」
 素材チームと織物チームが出合ったのには、このような背景があったのである。6人は互いの職場を行き来し、それぞれのプロフェッショナルな技に触れながら、議論を交わし開発に臨んだ。そして、生まれたのが「木織テナージュ」だ。樋口さんの熱意から始まり、つながった6人の心意気と技。それはまるで美しい織り目が見せる木目のように、輪を描き、しっかりと織り込まれている。

ゼロワンプロダクツ(株)

http://www.zeroone-pro.com/

設立
1998年2月
資本金
1000万円
従業員数
5名(2009年12月現在)
ワンポイント
天然木シートと天然木織物の製造販売、およびそれらを活用したオリジナルデザインのブランドビジネスを展開

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天然木を厚さ0.1~0.3mmにスライスした薄板に樹脂を充填し、木の導管に浸透させることで繊維を柔軟かつ丈夫にした「テナージュ」。様々な工業製品に対応

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「テナージュ」を幅2mmにスリットし、経糸として織り込むことで、木目の再現と自動織機織りを可能にした「木織テナージュ」。樹種や横糸の材質・織り方などにより、風合いがまったく異なるのも魅力

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「木織テナージュ」を使用したレディースブランド「VEGATWOOD (ヴェガトウッド)」が、10年春にデビュー

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6人が顔を合わせればすぐに議論が交わされる。互いの技術をリスペクトしつつ、日々改良を目指すからだ