受賞者紹介

宝飾ダイヤモンド研磨を応用して開発した「華真珠」を継承・進化させ、世界に新市場を開拓

山梨県甲府市
(有)小松ダイヤモンド工業所
その他受賞メンバー
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推 薦 者
山梨県宝石研磨工業協同組合
顔写真

小松一仁  (38)
代表取締役

「丸くあるべき」真珠を削る。その非常識が、常識を超えた輝きを生んだ
summary

世界で初めて、本真珠にカットを施した「華真珠」。それは、元の真珠とはまったく異なる輝き、質感をかもし出す。先代社長である小松氏の父親が10年かけて商品化。今は小松氏がデザインなどを手がける。発売当初、「真珠は丸いもの」という固定観念の強い日本市場では、なかなか広まらなかった。まず高く評価したのは、アメリカやヨーロッパなどの海外ジュエリーメーカー。海外の展示会への出展などを機に交流も増え、イタリアのデザイナーズブランド「スカヴィア」に採用されるなど、世界中に顧客を持つ。華真珠という材料を宝飾加工メーカーに製造販売するだけでなく、今後は自らもネックレスといった最終製品の加工を手がけ、ブランドに育てることを目標に掲げている。

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真珠の表面をカット。それが、想定外の不思議な光に

 あれこれ説明する前に、まずは写真をご覧いただきたい。これが真珠に見えるだろうか? 「鋭い」と表現するのがぴったりの光沢。にもかかわらず、真珠の中にもうひとつ真珠があるかのような、摩訶不思議な透明感を併せ持つ。面白いことに、薄暗い空間に置くと、さらに輝きを増したように見えるのだとか。ファッションショーに貸し出した時には、真っ暗な会場のピンスポットを反射して、「真珠の中でダイヤを光らせているのか?」と話題になった。
 「できたものを見て、初めてその素晴らしさに驚きました。計算してつくったわけじゃないんです」
 この類なき宝石は、真珠をカットすることで誕生した。カットといっても溝を付けたりするのではなく、ミラーボールのように面を削り出す。大きな真珠の場合は160あまりの面を付けて、一面ずつ磨いて仕上げていくのだ。ひと言で「削る」というが、真珠が輝くのは表面からのコンマ数mmまで。その下の核を露出させてしまえば、商品価値はない。そのすべては手作業だ。
 「水晶で有名な甲府ですが、当社はその名のとおり、ダイヤモンドのカットを専門にしてきました。ダイヤって"目方"が大事なので、できるだけ薄く削る技術が要求されるんですよ。そこで培ったノウハウが、この商品には生かされています」
 開発したのは、先代社長である小松さんの父、一男さん。10年の歳月をかけた新商品の初お目見えは、94年に開かれた国際宝飾展だった。小さなブースに「五重の人だかりができた」ほど、真珠をカットした世界初の商品は注目を浴びる。だが、あふれたのは賞賛の声ばかりではなかった。
 「当初は、同業者の間でも『真珠に傷を付けるとは何ごとだ』という反応がほとんど。"真珠はツルリと丸いもの"という常識、私に言わせれば先入観にとらわれた日本市場では、鳴かず飛ばずでした」
 転機は96年に訪れた。来日していたアメリカ人の業者が、たまたま同社商品を目にしたことがきっかけ。「すごい!」と評価された華真珠は、ほどなくアメリカで発売され、話題となる。外国人に「真珠は無傷であるべき」という先入観はなく、純粋にその美しさが受け入れられたのである。評判が逆輸入されると、本国での見方も一変。「もはや"奇抜な宝石"と見なすような人はいなくなった」という。

初めて父に尊敬の念を抱いた日、後継者となる気持ちが芽生える

 今も小松家の自宅3階にある工場は、幼少の頃の遊び場だった。中学時代から時々家業の手伝いをしていた小松少年は、高校生の時、父親から、いつも普通に使っている機械に"ある簡単な工夫"をすることで、誰もつくれない製品ができるようになると聞かされる。
 「工夫の内容は具体的にお話しできないのですが、いつも自分が動かしていた機械ですからね、すごい衝撃だったんですよ。『この人は天才だ』って、初めて父のことを尊敬した(笑)。それまで手伝いはしても、後を継ごうなどと考えもしなかったのですが、その時、『やってみようかな』という気持ちが芽生えたのです」
 一方、父は息子の継承意思を喜びつつも、折からのバブル崩壊もあって、事業環境は目に見えて悪化。先々、子どもに辛酸をなめさせるのは忍びないと、下請けからの脱却を目指して新商品の開発に乗り出した。そのひとつが、華真珠だったのだ。厳しい環境下、家業を継ぐという息子の決断、その行く末を気遣う父の愛情。独特の輝きは、そんな思いが結晶したものでもあった。
 「父は、『いいモノをつくれば、客は来る』と豪語するような、いわゆる職人気質の人。それが間違っているとは思わないのですが、十分だとも言えない。今は、黙っていても売れた時代とは違うのですから」
 世界的な展示会に積極的に出品する一方、08年には、アメリカ宝石カットコンテスト「Gemmys」に、華真珠がより輝く「ダブルリフラクションカット」で挑戦。「世界に向かってアピールしていくためには、権威ある第三者機関の評価が力になる」という考えのもとだ。結果、カット部門で第1位獲得という快挙を成し遂げる。
 「今後は、真珠という材料を供給するだけでなく、それを使ったネックレスなどの製品加工に取り組み、独自ブランドにしたい」
 小松さんの夢には、まだまだ続きがある。

(有)小松ダイヤモンド工業所

http://www.facetedpearl.com/

設立
1971年4月
資本金
300万円
従業員数
5名(2009年12月現在)
ワンポイント
ダイヤモンド加工に特化して創業。その技術を応用して、ダイヤ以外の宝石加工も行う。数多くの特許技術を保有

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ダイヤモンドと同じように、治具に取り付けた真珠を回転盤に押し付けて加工する

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