受賞者紹介

超大画面・超薄型・低消費電力・フィルム型ディスプレーの技術開発

兵庫県神戸市
篠田プラズマ(株)
その他受賞メンバー
石本学、井上雅生、四戸耕治、芝地正行、澁川芳雄、平川仁、牧野哲也、山崎洋介、若月貢
推 薦 者
篠田プラズマ(株)
顔写真

粟本健司  (49)
取締役

いける!と直感を信じたからこそ人を驚かせ、感動させる視界を覆うほどの超大画面が実現した
summary

近年ますます大型・薄型化が進むディスプレーだが、それにつれ消費電力は増す一方。加えて、製造設備や製造電力も問題視されている。同社は、それらの課題を克服する新技術PTA (プラズマチューブアレイ)を開発。表示部分の薄さわずか1mmで曲面表示も可能な、世界初の100型以上の超大画面フィルム型ディスプレーを製品化した。従来の薄型ディスプレーに比べ薄さ5分の1、重量10分の1、消費電力3分の1で、製造のための巨大設備投資も不要。さらにプラズマチューブを敷き詰めた1m×1mのサブモジュールを組み合わせることで、超大画面を設置できるため、運搬方法も設置場所も選ばない。09年11月には、兵庫県明石市立天文科学館に同社製の「SHiPLA(シプラ)」145インチディスプレーが初納入された。次代デジタルサイネージとして、その注目度はますます高まる。

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映像の未来を賭けた直径1mmのチューブ。事業撤退から新会社設立へ

 145インチの超大画面サイズでありながら、表示部の重さはわずが7.2kg。家庭用電源でも使用可能な低消費電力で高画質を誇る。それを可能にしたのが、PTA(プラズマチューブアレイ)という新技術。直径1mmのガラス管に、発光構造の構成要素を封入し、赤・緑・青の光の三原色蛍光体を3本一組で構成したのがプラズマチューブ。これをたくさん配列し、発光電力を供給する薄いフィルム状の電極シートで挟み込む。こうしてつくられた1m四方のシートを設置場所で組み合わせ、超大画面プラズマディスプレーが完成する。その薄さ1mm。折り曲げて表示することもできる。発光原理は従来のプラズマディスプレーと同じでも、そこから先はまったく新しい技術だ。
 次代超大型ディスプレーの開発をテーマに、研究が始まったのは98年。富士通研究所でのことだった。ここに"プラズマディスプレーの父"と称される技術者がいた。
 「現在、当社の会長兼社長である篠田です。01年、その篠田がフェローに昇格して所内に研究室を持てることになったのです。じゃ人を集めようと。それまでは篠田と石本が核となって研究し、私がウラでお手伝い。わずか3人で研究していました」と笑う粟本さん。ご自身は駆動回路が専門だ。
 3年間、地道に続けてきた研究開発は実用化、商品化への可能性を模索すべく本格稼働する。様々な部署からヘッドハントよろしくメンバーをスカウトした。
 転機が訪れたのは05年春。富士通は、ディスプレー事業からの撤退を発表した。
 「実用化のメドがつきそうだという時期に撤退決定……。このままやめてしまうのは、あまりにももったいない。研究を続けるために退職するか、それとも研究所に残るか、そんな選択を迫られたわけです」
 フェロー研究室ごと他社に移る案もあったが、彼らが出した結論は、起業。
 「あまり深く考えないようにしていました(笑)。考えるとリスクばっかり浮かびますから。ただ、プロトタイプの段階で、すでに"いける!"という直感はありました」
 研究室メンバーのうち6人が新会社に参加することになった。粟本さんは研究を続けながら、残るメンバーの異動先などのフォロー、新会社設立準備に明け暮れた。

研究開発から製造、管理まで。すべての工程を自社内で一体化

 いわゆる耐震偽装事件のあおりを受けて、社屋の開設は遅れたものの、07年には転籍も完了。研究開発から生産まで行える一貫体制を整えた。
 「製造工場も社内につくりました。開発にしろ製造にしろ、それぞれお互いに譲れない部分がある。離れていると、どうしてもそこにデスバレーができてしまうんです」
 富士通時代、製造現場と一体になって研究を続け、フルカラープラズマディスプレーを完成させた篠田さんの流儀を具現化した環境だ。
 「研究開発部門がつくったものを製造部門がカタチにする。安定品質の検証もしなければならない。製品化に向けて本格稼働した時点では、長寿命化と見た目の改良がテーマでした。使ってもらえるカタチ、販売できるカタチにするということですね。そこに、2年かかりました」
 研究室でできたからといって、それがそのまま商品になるというわけではない。既存技術の応用とはいえ、そこにあるのは世界初の技術。研究開発から製造、品質管理までを自前で有し、密なリレーションシップを構築するのは必然でもあった。
 「初めから等身大表示ありきで取り組んだ研究ですからね。昨年秋に明石市立天文科学館に納入した製品『SHiPLA』が145インチ。今後は、200から300インチを目指していくことになります」
 SHiPLA=シプラとは、同社製品のブランド名。開発から10年。薄型ディスプレーはフィルム状という究極の姿を手に入れた。通常の大型ディスプレーではできない曲面表示や頭上への設置など、使う側のイマジネーションをも刺激する。ただ画面を大きくしただけでは、考えもおよばないような映像の使い方も自在だ。直径1mmのガラスチューブには、粟本さんらの夢、そして映像文化の未来が詰まっている。

篠田プラズマ(株)

http://www.shi-pla.jp/

設立
2005年6月
資本金
1億4420万円
従業員数
60名(2009年12月現在)
ワンポイント
"技術は愛"をポリシーに、次代超大画面ディスプレー技術「プラズマチューブアレイ」で世界に挑むベンチャー企業

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表示部分の薄さはわずか1mm。フィルム状なので曲面表示も可能。直径1mmのガラスチューブの中に蛍光体、放電保護膜、放電ガスを形成し、1m四方の電極シートで1000本のガラスチューブを挟み込む。このサブモジュールを組み合わせることで超大画面に

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研究室と製造工場が一体化された社内で改良テストを繰り返し、より高品質なものづくりを追求

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