受賞者紹介

大阪府東大阪市
ハードロック工業(株)
その他受賞メンバー
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推 薦 者
(株)ベンチャーラボ
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若林克彦  (76)
代表取締役社長

開発しているものは「安全」。完璧を目指してつくり抜くには自分でやるしかない
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日本古来の建築に見られる「クサビ」の原理を応用して、ボルトナットのガタ(隙間)から生じる緩みを解消。凸型の下ネジに凹型の上ネジを被せるように締め付けることで緩みをなくす「ハードロックナット」は、鉄塔や長大橋、鉄道車両、原子力発電所など、特にメンテナンスが難しい場所や激しい振動・衝撃が加わるようなものに使われ、その威力を30年以上にわたって発揮している。世界でも最高レベルといわれる試験機を用い、常に安全性を実証していく同社。その姿勢には、海外メーカーからも厚い信頼が寄せられている。"安心を開発せよ!!"のポリシーのもと、「HLB (ハードロックベアリングナット)」や「スペースロックナット」など、意欲的な製品ラインアップを展開。

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「緩まない」を求めて2度の起業。その末に、たどり着いた夢のナット

 物語は60年にさかのぼる。当時、バルブメーカーで設計を担当していた若林さんは、国際見本市で緩み止め機構を持ったナットに出合う。
 「そのナットを家に持ち帰って、寝る前に1時間ほど眺めていたんですよ。そうしたら、ひらめいたんです。もっとコストをかけずにつくる方法を」
 若林さんは、バネを利用した最初の緩まないナット「Uナット」を開発。そして、事業化に向けて会社を設立したのだが、それはひらめきから2年後のことだった。
 「最初は、問屋さんに板バネの仕組みを使ったナットっていうのが理解してもらえなくてねぇ。ヘンなもの持ってくるなって怒られた(笑)。直接、ナットを使っているメーカーの工場に無料サンプルを配り歩いて、試してもらったんです」
 涙ぐましい営業努力と折からの高度成長期も重なって、Uナットは業界トップクラスのシェアを占めるようになる。しかし、若林さんにはUナットの弱点も見えていた。
 「たとえば掘削機とか、強い衝撃がかかるものだと緩んでしまうことがあるのです」
 理想のナットを実現すべく、若林さんはUナットの製造権利をすべて譲渡し、74年、新たにハードロック工業を設立する。
 「『ハードロックナット』のアイデアのもとになったのは、住吉神社の鳥居。日本古来の建築やね。あの緩みを止めるクサビからヒントをもらって、本当にイチから、いやゼロから開発に取りかかったわけです。最初は、なかなかかたちにならなくてねぇ」
 試行錯誤の末に生み出されたのは、凸型の下ナットを凹型の上ナットでロックする方式。ふたつのナットを使う構造は、作業の手間からすれば大きなデメリットになる。だが、あえて若林さんはこだわった。何物にも替え難い"安全"を実現するために。
 「とにかく、ハードロックナットは自分でやるしかないという気持ちが強かったんです。何かほかの製品開発も一緒にやるのでは、どれもダメにしてしまうような気がしてね。子どもを育てるのと同じ感覚。歩けるようになるまでには時間がかかるし、手もかかる。ハードロックナットが独り立ちするまでには、5、6年かかりましたかね」

35年間無事故の実績。その高いクオリティは安全性の世界標準へ

 「やっぱり、人の役に立てれば嬉しい。儲けることに執着してちゃダメです。ほどほどの利益は得たいですけどね(笑)。自分中心の考え方ではうまくいかない」
 そんな思いは、ハードロックナット誕生以来、ほかの製品も合わせて35年間無事故という実績になって表れている。産業機械、航空機や船舶、新幹線を始めとする鉄道設備、瀬戸大橋や明石海峡大橋、11年完成予定の新東京タワー「東京スカイツリー」などの建築物。さらには原子力発電所や風力発電設備、異色なところではジェットコースター、ボブスレーのそりのエッジ部分などまで。同社の製品は目に見えなくとも、我々の足元をいたる所で支えてくれている。
 「海外でいえば、台湾高速鉄道の締結装置にハードロックナットが採用されています」
 イギリスやオーストラリアの鉄道会社からも正式認証を受けるなど、そのマーケットは世界20カ国を超える国と地域におよぶ。
 まさに質実剛健。縁の下の力持ちを地でいく製品群を開発する同社だが、第三工場の2階には、一風変わった空間が広がっている。そこには、若林さんが愛してやまない鉄道模型のコレクションが所狭しと並んでいるのだ。ジオラマも見事だが、圧巻は13分の1スケールの蒸気機関車。実際に人を乗せて、全長80mのレールを一周する。
 「工場見学にいらっしゃる取引先の方々にも好評でね。これで遊んでもらうわけです。営業社員といってもいいぐらいの活躍をしてくれています(笑)」
 遊び心たっぷりの"会議室"。あくなき安全追求やアイデアの源は、こんな場にもあるのだろう。学生時代には、インクがペン先に付きすぎないインク瓶を開発したり、会社設立直後には、ちり紙をトイレットペーパー感覚で使えるホルダーや、鍋部分に角度を付けることで簡単に卵焼きがつくれる卵焼き器を発明したり。その発想の柔軟さに付いた愛称は「ナニワのエジソン」。ハードロックナットの開発にとどまらず、さらに完璧なる安全性を提供するため、今もなおアイデアの具現化に余念がない。

ハードロック工業(株)

http://www.hardlock.co.jp/index.php

設立
1974年4月
資本金
1000万円
従業員数
48名(2009年12月現在)
ワンポイント
自社専用の生産設備、規格にもとづく独自の試験機を使った製品テストなど、品質管理には徹底したこだわりを持つ

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サイズはもちろん、メンテナンスや交換が困難な個所に使われることが多いため、重量や錆への対策など、素材面でも様々なナットが製作されている

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日本だけでなく、世界10カ国以上の鉄道会社から使用認証を受けている。台湾高速鉄道の各種締結装置用に、およそ400万セットのハードロックナットが納入された

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世界最高レベルの全数検査装置。ナットの高さやネジの内径など、1/1000mmという高寸法精度で測定。信頼は厳格な検査体制から生まれる