受賞者紹介

新しい測定原理にもとづく、簡便、安価、高精度なコンクリート構造物非破壊検査装置の開発

北海道雄武(おうむ)町
日東建設(株)
その他受賞メンバー
●アプライドリサーチ(株)/境友昭
●iTECS技術協会/極檀邦夫
●東海大学/林拓見
推 薦 者
雄武町
顔写真

久保 元  (58)
代表取締役社長

このままでは事業は先細り。だが、リストラはしたくない。選んだ道は
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コンクリート構造物の表面をハンマーで軽くたたくだけで、内部の圧縮強度の推定、表面劣化度合い・剥離度合いの検知を可能にした、「コンクリートテスター(CTS)」を開発。従来の「テストハンマー(反発硬度法)」や「打音法」に比べ、測定精度が格段に高く、精密なデータを残せる。経済性が高いのも大きなメリットだ。構造物の危険部位が正確にわかるため、"ピンポイント"の補修作業が可能に。検査も実際の補修作業も、安く短時間で行える。コンクリート構造物の老朽化が社会問題となる中、非破壊検査の切り札として活躍の場を広げそうだ。今年5月には、さらに価格を下げた新機種を発売する予定。

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トンネル事故に触発され、非破壊検査の共同研究グループに

 99年6月、山陽新幹線の福岡トンネルで天井部のコンクリート塊がはがれ落ち、走行中の車両を直撃。幸い大事故には至らなかったものの、コンクリートの「安全神話」を覆す出来事として、社会に衝撃を与えた。
 衝撃を受けただけでなく、事故に触発されて、コンクリート構造物の強度などを非破壊で手軽に検査できる装置を開発した人物がいる。オホーツク海に面した小さな町で、土木・建設業を営む久保さんだ。
 「今後も起こり得ることだし、コンクリートの補修は社会的なテーマになると直感しました。少したって、所用で大学の恩師である極檀先生を訪ねた時、何げなく研究テーマを聞くと、コンクリートの非破壊検査を共同研究しているというじゃないですか。その場で仲間に入れてほしいと頼みました」
 久保さんが即断したのには、理由がある。
 「先々、公共事業が減っていくのは明らかでした。でも地域経済を考えると、リストラはやりたくない。雇用が維持できる新たな事業分野を、必死で探していたのです」
 ただし、やみくもに異業種に参入しても勝機は薄い。少ない投資、本業関連、資本力ではなく技術力で勝負できる分野といった条件を、自らに課していた。恩師の研究テーマは、それらにピタリと合致した。
 極檀さんを中心に、10年ほど前から取り組まれていたのは「衝撃弾性波」という振動の波形を解析して、内部の様子を探る研究。ほどなく装置は完成し、同社は01年に、それを使った構造物の診断事業に乗り出す。今までにない、正確な非破壊検査が可能になった。ただ、問題もあった。装置自体が高価なことに加え、データの解析が難しいのだ。もっと簡単に、低コストで検査することはできないか――。
 実は、比較的安価な非破壊検査はすでにあった。「テストハンマー法」と「打音法」だ。しかし、コンクリート面の反発硬度を検出する前者は、肝心の測定精度に難があり、複雑なデータ補正が必要なこともデメリット。後者は、名のとおり熟練の技術者が点検ハンマーでたたき音で判断するのだが、客観性の保証がなくデータも残らない。
 久保さんらは、こうした従来技術とは一線を画す検査法の開発に注力。04年、ついにプロトタイプの完成にこぎつける。新しい測定原理による、高精度非破壊検査装置「CTS‐02」が発売されたのは、翌年のことだった。

安く簡単に、そして正確にコンクリート内部を把握でき、改修コストの大幅削減に貢献

 ハンマー型の装置の内部には、加速度計が内蔵されている。測定面を軽くたたくと加速度を測定し、その波形を自動解析して内部の様子を知らせてくれる仕組み。コンクリートの圧縮強度のみならず、劣化や剥離度合いまで検知する。1万5000データがSDカードに記録できるのも特徴だ。
 「公的機関による研究でも、テストハンマーをはるかに上回る精度、経済性が認められました。この装置を使えば、たとえばパソコン画面上に、内部強度の"等高線図"を色分けして表示することができます。強度不足の部分をピンポイントで補修する、といったことも可能になりました」
 信頼性の高さは、コンサルティング会社や補修会社などのほか、国土交通省、農林水産省、北海道庁といった"公"も、続々と採用していることが証明している。ただ、販売実績240台余りのうち、115台は道内向け。「全国規模の市場を考えれば、普及はまだ緒についたばかり」なのである。
 同社は機器を販売するだけでなく、それを使ったコンサルティング(調査・診断)業務も行っている。札幌に置く支店は、2年前に建設業からコンサル専業にシフト、黒字転換した。新たな事業は狙いどおり雇用をつなぎ止めただけでなく、「今年は初めて大学生の新卒者を採用する」までに成長を遂げた。厳しい経済環境にある北海道の土木・建設業の挑戦は、見事に花開いた。
 「部品製作は、いろんな会社に外注しているのですが、可能な限り"メイド・イン・北海道"にこだわりました。とにかく、北海道に元気になってもらいたい。当社のようなちっぽけな企業でも、全国から注目されるものづくりができる。技術力に都会も田舎もないんですよ」
 製品はすでに「全国」を飛び越え、お隣韓国でも採用された。北海道発の技術が世界ブランドになる日も、そう遠いことではないかもしれない。

日東建設(株)

http://www.nittokensetsu.co.jp/

設立
1773年3月
資本金
2000万円
従業員数
52名(2009年12月現在)
ワンポイント
土木を主体にした建設業としてスタートしたが、公共事業激減を見据え、コンクリート構造物の非破壊検査事業に乗り出す

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肉眼ではわからない、コンクリート構造物の内部が一目瞭然に

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ハンマーで壁面を軽くたたくだけで、正確に測定。この手軽さがウリのひとつ

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北の大地から、画期的な検査装置を世界へ

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