受賞者紹介

平面スキャナーの常識を破り、様々な物の表面を画期的な質感でデジタル化するスキャメラの開発

京都府久御山(くみやま)町
ニューリー(株)
その他受賞メンバー
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推 薦 者
京都銀行 久御山支店
顔写真

井田敦夫  (58)
代表取締役社長

新しいニーズを創出しながら、ユーザーの要望に応えていく。その繰り返しが技術を進化させる
summary

スキャナーの高解像度とカメラの被写界深度を併せ持った、リアルで立体的な高精細画像を取り込める新コンセプトスキャナー「スキャメラ」を開発。光学ユニットをスキャン対象物の上に配置する非接触型上面スキャメラは、歴史的に貴重な文化財や美術品を始め、カタログ、飲食店のメニュー用写真などまで幅広く使われている。また、2m×2mの巨大サイズを上面スキャンできる「スキャメラ・ミュージアムⅡ」は、現場で組み立てて使用することができるため、同社の地元でもある京都では、襖絵や屏風のレプリカ、動かせない歴史的遺構でのデジタルデータ作成に活躍している。リアルなバーチャル空間を手軽につくり出せることから、子どもの情操教育やエンターテインメント分野での利用も期待されている。

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平面から立体物へ。専業だからこそできるスキャナーの常識への挑戦

 「スキャナー専業メーカーとして、光学ユニットを進化させ続けること。そこに私たちのベースがあります。進化をかたちにしたら、いったんリセット。そしてまた新たなテーマに取り組む。その繰り返しです」
 井田さんが社長に就任したのは01年。デジタル関連機器の価格が大幅に下落し始めた時期だ。それは、主に業務用スキャナーのOEM生産を行ってきたニューリーが、オリジナル製品の開発を決断するきっかけにもなった。
 一般的なスキャナーをつくり続けるという選択もあったはずだ。だが、目指したのは高付加価値のものづくり。磨き上げてきた独自の光学技術と画像解析技術をもってすれば、スキャナーの新たな市場を開拓することができるのではないか。技術開発畑出身の井田さんには、スキャメラがスキャナーの常識を覆す自信があった。
 光学ユニットの進化。それは、03年には対象物を上からスキャンする初の非接触タイプとして、04年には立体物を6方向からスキャンするマルチアングルタイプとして結実する。物を置くだけで立体的なイメージが撮れるスキャナー。
 「そんなオリジナル技術をまずは知ってもらって、認めてもらいたい。でも開発当初は、説明すること、そして理解してもらうことにひと苦労しました」
 それは、今までにないターゲットに向けて、ニーズを"創出する"ことでもあった。追って06年、2m×2mの巨大な立体物のスキャンを可能にしたのと前後して、同社はスキャメラの魅力が詰まったミュージアム「ニュージアム」を自前で開設した。
 「大きなものがスキャンできるようになって、ニーズが出てきました。使い方のアイデアも広がってきましたね。何より、ニュージアムをつくったことで、一般の方に興味を持ってもらえるようになった」
 畳や襖、屏風絵、油絵、刺繍、日本刀、楽器、変わったところでは昆虫も。微細なものから壁画サイズのものまで、ニュージアムにあるものは、ほぼすべてスキャメラでスキャンしたものだ。それをパネルなどに張り付けているのだが、パッと見、本物と見分けがつかない。どれも見事なまでに表面の凹凸感や素材感、奥行感が表現されている。
 「スキャン対象物には触れませんから、美術品や文化財にキズを付けることなくデジタルデータ化できるんです」
 スキャメラは、大学などの教育研究機関を始め、美術館や博物館の所蔵品、オークションのカタログ写真などで、その威力を発揮。最近では、映画やテレビの小道具、セットなど、活躍の場を着実に広げている。

できないものはない。あらゆるニーズに応えるそのラインアップに限界なし

 井田さんには忘れられないひと言がある。「スキャメラを開発した当初、ある展示会で、食材をスキャンしたデータを見た来場者から『キレイだけどおいしそうに見えない』と言われまして。これには、正直ヘコみましたねぇ(笑)。リアルというだけではダメで、おいしそうと感じさせる、機械のスペックとは違うところで、もっと人の五感に訴えなければいけないと」
 そんな声があれば、すぐに製品開発のテーマにしていく。それが、ハードウエアとソフトウエアを両輪と位置付ける、同社のフットワークの軽さだ。大々的な宣伝はしなくても、その認知度はクチコミを中心にじわじわと高まり、それにつれて様々な要望も持ち込まれてくる。これはスキャンできないか、あれはスキャンできないか。微細なものをスキャンする「スキャメラ・ミッドナノ・スコープ」から、2m×2mに対応する「スキャメラ・ミュージアムⅡ」まで、現在のスキャメラの豊富なラインアップは、自らが創出してきたニーズとユーザーの要望を掛け合わせてきた結果だ。
 「撮れないものがあると燃えるんです(笑)。スキャメラのラインアップは何百、何千種類になってもいいと思ってます」
 これまでも、そしてこれからも「今まで考えられなかったような使い方ができるものをつくる」という、その姿勢にブレはない。次のスキャメラではどんなことができるのだろう。その可能性に注目したい

ニューリー(株)

http://www.newly.co.jp/

設立
1979年8月
資本金
5584万円
従業員数
141名(2009年12月現在)
ワンポイント
京の子育て応援企業認証、厚労省次世代育成支援企業認定などを受け、高品質なものづくりを働きやすい環境整備でサポート

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この畳の間もスキャンしたもの。さながらだまし絵のようだ

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口に放り込めそうな寿司や菓子を始め、絵の具の盛り上がり、キャンバスの質感までとらえた油絵など、この高精細感と立体感はスキャメラならではのものだ。京都・実相院の原寸大「床緑」も、部屋の奥行き感と相まって一層映える

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上部のスキャンヘッド、スキャナー台の軽量化など、大型スキャナーに画期的な価値を付加した「スキャメラ・ミュージアムⅡ」

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