受賞者紹介

ベンダ工法による省資源・高歩留まりの金属リング製造技術を確立

広島県呉市
ベンダ工業(株)
その他受賞メンバー
●ベンダ工業(株)/大鹿守、八代一成、八代公治、山根孝
●青島奔達汽車配件有限公司/八代行雄
●ベンダ鮮光工業(株)/金貞漢、鄭潤鎬、劉權範
推 薦 者
(財)くれ産業振興センター
顔写真

八代恭宏  (68)
代表取締役会長

鋼材にも個性や主張がある。それを読み取って先回りしなければ、思いどおりにはならない
summary

設立当初より、鋼材の冷間曲げ工法の開発に取り組む。日本全国のトンネルで、同社のベンディング技術で加工されたH形鋼の部材が使用されるなど、実績は数多い。70年代初頭、リングブランク(リングギア用素材)の連続大量生産技術の開発に着手。生産効率面で問題の多かった既存の工法に代わり、角鋼材の冷間曲げと電気抵抗溶接を組み合わせた独自の工法を開発。75年、世界9カ国で「金属リングの製作方法およびその装置」として、特許を取得。「ベンダ工法」と命名し、本格的に自動車部品産業に参入した。現在では直径10㎝以下の芝刈り機用から1m級の船舶、建機用まで多種多様なリングを製造。リングギアの世界シェアは、自社推計15%でトップである。

summary

世界の鉄を曲げてやる!冷間加工のプロが引き受けた自動車業界からの依頼とは

 鋼材を曲げる加工を「ベンディング」といい、鋼材を加熱して行う熱間加工と、常温で行う冷間加工がある。前者は設備が大規模で、製造時間もコストもかかるのが欠点。一方、同社が得意とする冷間ベンディングは、鋼材本来の性質である強靭さ、粘り、弾力を利用しつつ加工するという、技術的な難しさがある。
 「私の父が創業した頃、鋼材の冷間ベンディングができるところは、ほとんどなかった。だから工法も機械も自分らで開発して、特許も取りました。『世界の鉄を曲げてやる!』が、当時のスローガンでね(笑)」
 70年代初め、ある自動車メーカーからこんな依頼が舞い込んだ。「リングギア」の素材となる鋼材のリングブランク(歯を刻む前のリング)を、冷間ベンディングで大量生産できないか? リングギアというのはエンジンのフライホイールに取り付ける歯車で、セルモーターの回転をクランク軸に伝え、エンジンを始動させる役割を持つ。
 「それまでは鋼板の打ち抜きプレスや鋼管の輪切りか、あるいはローリング鍛造という大がかりな製法でやっていた。でも打ち抜きプレスなんて、リング以外の残りの鋼板には使い道がない。原材料の8割がスクラップです。ならば角鋼材を冷間曲げ加工して、溶接する方法でやってみようと」
 専用のベンディングマシンから自社でつくる必要があったが、若き日の八代さんは張り切って開発を始めた。まずは鋼鉄の丸棒材をローラーで角断面に圧延加工する。この角棒材を3つのローラーで丸め、コイル状に何段も巻いていく。ところがコイルの外径と内径の伸び率の違いから、断面が台形になってしまい、巻き取りが均一にいかない。仕方なく、力づくで修正を施した。
 「この問題は、丸棒材を圧延するローラーの形状を変えて、角棒材の断面を初めから台形にすることで解決しました。そうすれば逆に、曲げ加工後に断面が長方形に仕上がる。もっともこれは量産開始後の話。当初はできたリングも4面を削って修正していたのですが、それも不要になりました」
 さて、角棒材をコイル状に巻き終えたら、側面を縦に切断する。すると切れたリングが大量にできる。あとは切断面を溶接してリングにするだけだ。
 「ところが、でき上がったリングは真円ではなく、一方に長いいびつなかたち。カッターの刃の厚み分と、溶接で溶けて縮む分でリングの円周が短くなっていたんです」

鋼材の性質を利用しろ!!画期的な問題解決法「オーバーラップ」

 ならば縮む分を計算して円周を長めにし、切断した両端が重なり合う「オーバーラップ」をつくるようにしたらどうか。冷間加工直後の鋼材は、わずかながら加工前の状態に戻ろうとする。この「スプリングバック」という性質が利用できるかもしれない。
 「まず、コイル材の中に内径より大きい芯金を入れ、コイル全体を伸ばして広げてやる。その状態で切断して芯金を抜けば、リングはスプリングバックで縮む。この時、オーバーラップが生まれるはずだと」
 しかし、大きな芯金を無理に押し込んだりしたら、コイル材が傷付いてしまう。みんなが頭を抱える中、解決法を見いだしたのは先代(父親)だった。まず中空の芯金をつくり、コイル材の中にセットする。その後、芯金の中に別の棒状の治具を押し込み、芯金ごとコイル材を広げていけばいい!
 「名案でしたが、父がやり方を男女のことにたとえて真剣に説明するものですから、感心するより先に笑ってしまいました(笑)」
 芯金の材質に苦労したものの、この方法は見事成功。オーバーラップ分は溶接時にバリとして周囲にはみ出し、リングは真円になった。後に鋼材の種類やリング径によって、オーバーラップ量を決める方程式もできた。これでバリを落とせば完成――ではない。鋼材部分と溶接部分では鋼の組成が異なるため、強度にムラが生じるのだ。
 「そこでリングを840度まで加熱した後、大型扇風機で冷却して焼きならしをしてやる。すると鋼材は均一な組成に戻るんです」
 さて、焼きならしを終え今度こそ完成!!かと思いきや、ここでとどめの1工程。これまでの加工で生じたわずかな誤差を矯正するため、最後にプレス機にかけるのだ。この矯正プレス機の型、実は径をやや大きめにつくってある。プレス後、リングをはずすと……そう、スプリングバックで今度こそ正しいサイズのリングになるのである。

ベンダ工業(株)

http://www.benda.co.jp/

設立
1964年9月
資本金
5850万円
従業員数
94名(2009年12月現在)
ワンポイント
H形鋼、角鋼、パイプなど鋼材の冷間ベンディングのエキスパート。「ベンダ工法」は世界9カ国で特許を取得

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左:1. 原材料となる鉄の丸棒材
右:2. ローラーで角断面に加工

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左:3. 曲げながらコイル状に巻き取る
右:4. 切断するとオーバーラップのあるリングに

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左:5. リング(上)の切断部を溶接し(中)、バリを取る(下)
右:6. 加熱・冷却して焼きならし

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左:7. 矯正プレス
右:8. リングブランク完成