受賞者紹介

自動車向け金属パイプの製造に革命をもたらした「チューブフォーミングシステム」の開発

浜松市東区
國本工業(株)
その他受賞メンバー
市川光俊、内山智弘、國本裕樹、松尾正次
推 薦 者
浜松商工会議所
顔写真

國本幸孝  (62)
代表取締役社長

「みんなができること」と思っていた。それがオンリーワンの技術だと
わかった時、新たな挑戦が始まった
summary

「金属は"やさしくなでるように加工する"ことで、どのようにも変形する」。このコンセプトにもとづき、自動車向け金属パイプの曲げ、拡管、縮管、成形、肉厚コントロールといった工程を組み合わせて自動化した「チューブフォーミングシステム」を実用化した。金型でパイプを成形する同社の技術は、従来の「ベンダー曲げ」や鋳物製品に比べ、設計の自由度を向上させただけでなく、大幅なコストダウンを実現。鉄のほかチタン、アルミニウム、ステンレス、炭素鋼など、様々な金属に対応。同社の技術力をいち早く評価したトヨタを始めとする自動車メーカー、部品メーカーに製品を供給している。

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「高い機械は買えない」。試行錯誤の末にたどり着いた世界に二つとない技術

 エンジン周りや排気系を始め、自動車には数多くの金属パイプ、チューブ類が装着されている。パイプといっても、ただ"丸くまっすぐな"部品はほとんどない。曲がり、よじれ、膨らみ……中には冷却水を通すインレットウォーターという長いパイプのように、ぐにゃりと曲がり、やみくもにハンマーでたたいたように表面がデコボコの前衛芸術品のようなものもある。ほかの部品が効率的に据え付けられるよう、わざわざへこませているのだ。
 従来、こうした製品はパイプの端をつかんで曲げて角度を付ける「ベンダー曲げ」という手法や、ダイカスト(鋳物)で生産されてきた。これに対し、同社が編み出したのは「パイプを金型でプレス加工する」という独自技術。金属の「どんなかたちにものび、変形する」という性質を利用して、パイプにいろいろな方向から力を加え、目的のかたちに成形していくのである。
 「ノウハウは秘密なのですが、ベンダー曲げでは難しかった曲げと曲げの間に直線部分がない『連続曲げ』、鋭角に曲げる『極小曲げ』などもお手のもの。設計の自由度は格段に向上しました。金属を広げ、縮め、あるいは穴を開けといった加工と組み合わせることで、これまで溶接してつくっていた部品を一体成形することも可能になったんですよ」
 当然、加工時間もコストも減らせる。鋳物と比較しても、部品の軽量化、低コスト化などのメリットは歴然だった。
 同社が、金型によるパイプの加工に乗り出したのは01年のこと。主要取引先だった大手オートバイメーカーが、海外生産拡大と同時に、同社からの部品納入をストップしたのがきっかけだ。
 「家業をたたもうか、真剣に悩みました。そんな時、息子が『親父と一緒にものづくりがしたい』と言ってくれたんですよ。子どもが後を継いでくれると言っているのに、やめるわけにはいかないでしょ」
 國本さんはオートバイに見切りを付け、可能性があるとにらんだ四輪車の世界への参入を決意。運良く、同社の技術に目を付けた自動車部品メーカーから仕事を受けることができた。求められたのが、「パイプの曲げ」だったのだ。
 「どうして、プレスでやろうとしたかですか? 高価なベンダーの機械を買えなかったのです。ならば、今あるプレス機で何とかできないかと。ただし、当然ながら簡単にできるものではなかった」
 着手してから10カ月後、何とかかたちにはなった。だが、それは部分的に肉厚が足りず、真円であるべき部分が扁平につぶれた不良品。オーダーどおりにつくり込むのに、さらに数カ月。製造ラインが完成したのは、車の生産が始まるわずか1カ月前という際どいタイミングだった

高品質の製品を自動化で量産。それを実現してこそ、新興国に負けないものづくりができる

 苦労して確立した技術。だが、その時は「頑張れば、誰にでもできる」という程度の認識しかなかったらしい。05年、部品を出品したある展示会で、トヨタの担当者に「すごい技術だ」と評価されたことで、世の中にはない画期的なものづくりだったことに気づく。
 「実は、クルマにはパイプ製造の仕事なんて、そんなに多くないと思っていたのです。でも話を聞くにつれ、強度や軽量化といった点で、貢献できる部分がかなりあることがわかりました」
 同社の技術力にほれ込んだトヨタは、間に部品メーカーを介さない異例ともいえる直接取り引きを開始。同社もまた、取引先の難しい要求にも果敢にチャレンジする中で、さらに高度な技を身につけていった。
 國本さんが重視するのは、どんなかたちでもつくることができる技術と同時に、生産現場でそれを可能な限り自動化・省力化すること。現在は、8工程をひとりで操作する「チューブフォーミングシステム」を稼働させている。製造機械も自前だ。
 「既存の機械では、ほかにもできる製品にしかならないでしょう。工法から独自に考えて、低コストで速く、いいものをつくるのが当社のやり方。この國本モデルを、これからも追求していきたい」
 さらなる生産スピードのアップ、20工程をひとりで担えるような省力化。「それができれば、中国や新興国にも絶対に負けませんよ」と自信をのぞかせる。

國本工業(株)

http://www.kunimotokogyo.co.jp/

設立
1970年5月
資本金
2000万円
従業員数
61名(2009年12月現在)
ワンポイント
オートバイ用メインスタンド製造会社として設立。二輪から四輪車部品の製造に方針転換し、パイプのプレス加工技術を確立

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「金属はかたちを変えられる」という発想のもとに、金属パイプを金型で自在に成形。ありそうでなかった、ものづくりだ

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1回曲げて、曲げ終わる頃にまた曲げる。従来の「ベンダー曲げ」ではきわめて困難な加工がたやすくできる

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ターボオイルタンクとインレットウォーターという部品。いずれも國本さんが手にしているのが同社の製品。鋳造品に比べて小型、軽量、しかも安価だ

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