受賞者紹介

限界を超えた超薄肉・超微細プラスチック製品を金型製作・成形加工で可能にする技術を確立

山梨県上野原市
(株)かいわ
その他受賞メンバー
●(株)かいわ/網野真紀、石井真、木下貴浩、竹下義郎、山本正年
●三菱電機(株)/林貴之
推 薦 者
(株)牧野フライス製作所
顔写真

山添重幸  (45)
代表取締役

ベテランの力? 匠の技? いいものづくりは、それ以上に自由な発想や創意工夫があってこそ
summary

通常のプラスチック成形の常識が通用しない、超微細製品の加工を可能にする金型を製造し、成形品を製造販売。"世界最小のプラスチック製品"で、携帯電話、家電製品、自動車関連など、様々な製品の小型化・高密度化に貢献している。精密なだけでなく、量産のニーズにも対応。プラスチックを流し込む時に、空気だけをうまく「押し出す」金型が、そうした高度なものづくりを可能にしている。社員には20代の若者も多い。「機械を100%知り尽くした」彼らの技術力、創意工夫を発揮させることで、ほかのメーカーがつくれなかった製品を世に送り出している。

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どこにもできない微細・精密金形製作、樹脂成形加工に特化

 肉眼では判別不能、ルーペで何であるかをやっと確認でき、顕微鏡を通して眺めれば……。同社が自社技術のアピールを主な目的につくった、プラスチック製のクワガタ。全長2・6mm、米粒の上に楽々3匹は乗りそうなそれを目にすると、あまりに精巧な出来映えに驚く。
 この「世界最小のクワガタ」に象徴されるように、同社は超微細・高精度プラスチック成形加工技術を得意とする。ミクロン単位の金型や、それを使ってつくる携帯電話関連部品、コネクターケースなど、様々な製品で精密産業を支えているのだ。
 「当社は、困っている顧客の要望に応えるものづくりを基本にしています。相手方からもらった図面でいいものをつくるのが、実は一番難しい。だからこそビジネスになるのです」
 国立天文台から「どこも受けてくれないのだが、お宅はできますか?」と持ち込まれたのも、そんな仕事だった。チリで進行中の宇宙観測「ALMA」計画。そこで建設される望遠鏡の電波フィルターの製作である。同社がつくるほかの製品に比べると大型ではあるが、表面には微細で正確な溝を刻まなければならない。同業他社が二の足を踏んだその部品、山添さんは図面を見た瞬間に「これならできる」と確信したそうだ。その直感は正しく、社員は6カ月ほどで製品化にメドをつけた。
 「通常つくっているものは、小さいけれど、たとえば携帯カメラのオートフォーカス部品といった"数が必要"なもの。だから、精巧なだけでなく、不良を出さずに量産できないと、顧客の要望に応えたことにはなりません」
 工場は、夜間は無人で稼働する。それでも、検査不要なほどの高品質な製品をつくれるのは、「それを可能にする環境があるから」。外観は普通の町工場の風情ながら、同社の心臓部は地下工場にある。より振動が少ない条件下で、高度な加工、精密測定が行われているのだ。ただし、強さの秘訣はそれだけではない。

育てたいのは作業者ではない。100%機械を使いこなす「技能者」

 「マンネリが会社を悪くする」「匠の技では、本当の金型はできません」。世界最先端のものづくりというバックボーンがなかったら戯言にしか聞こえない発言の中に、その答えがのぞく。 「他社ができない製品をつくろうとしてきてわかったのは、長く仕事に携わっていれば、イコール技術力が高いという図式は成り立たないということ。むしろ、経験を積んだベテランは、『この精度は無理だ』というように"できない基準"を勝手に設定してしまうのです。キャリアの浅い人間に対しては、往々にして『君は、まだここまでしかできないよ』と"教育"したりする。それは、決して会社全体のレベルアップにはつながりません」
 むろん、技術者は若ければいいということではない。同社の高度な技術を支えているのは、そのユニークな社員教育にある。たとえば機械の操作は、機械メーカーや会社の先輩から教わるのが一般的だが、同社はそうしない。「メーカーの人が、機械を100%使いこなしている保証はない」というのが理由だ。
 「ウチでは、新入社員に取扱説明書を徹底的に読ませ、使い方だけでなく構造まで勉強させます。半年くらいは、ひたすら四角なら四角いものをつくっては精度を測る。これの繰り返し。訓練というより、機械で遊ぶという感じですね。でも、それをやってこそ、いいものがつくれるようになる」
 実際の仕事でも、期日や精度などの目標値を設定するだけで、どのようにつくるのかは個々の社員に任せる。機械を知り尽くした若者の自由な発想、創意工夫が、ほかに真似のできない製品として結実するのだ。
 本文冒頭で紹介したクワガタ。これは、入社2年半の女性社員がデザインから金型製作まで手がけた。ちなみに、彼女がつくったのは雄。雌は、負けじと入社2年の男性が完成させた。
 「社員を教え育てて、作業者にするのが僕の目標ではありません。どこの会社に行っても一番になれる"技能者"になってほしいのです」
 ものづくりの基本は、人。この「町工場」は、改めてそれが真理であることを教えてくれる。

(株)かいわ

http://www.kaiwa-net.co.jp/

設立
1968年4月
資本金
1000万円
従業員数
14名(2009年12月現在)
ワンポイント
微細、高精度をターゲットに、あらゆるニーズに応えるプラスチック成形加工の金型、樹脂製品を製造販売

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受賞メンバーのひとり、網野真紀さんがデザインから金型製作まで担当した「世界最小のクワガタ」。雄雌が並んだ携帯ストラップも販売

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針のような工具が、金型を「削り出す」

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この小さな町工場から、"驚き"の製品群が発信されていく