受賞者紹介

鋳物に比べCO2排出量10分の1、環境汚染低減、リードタイム15分の1の匠フレーム構造を開発

岐阜県美濃加茂市
ヤマザキマザックオプトニクス
その他受賞メンバー
伊藤健一、兼松弘行、北本哲一、古田靖博、宮川直臣、吉沢勝利
推 薦 者
ヤマザキマザックオプトニクス(株)
顔写真

武藤善博  (56)
技術部 次長

日本の伝統建築の手法をレーザー加工機のフレームに継承する。この突飛な案が予想外の効果を生んだ
summary

同社が製造しているレーザー加工機の土台部分(ベースとコラム)は、従来、鋳物業者への外注で製造されていた。しかし、こういった大きな鋳物フレームの製造には3、4カ月もの時間を要するため、受注を先読みして発注する必要があり、無駄な在庫を抱えることも多かった。また、鋳物の製造には高度な技術が必要なうえに現場は3Kで、近年、業者は減りつつある。そこで同社では、平板の鋼板をレーザー加工機で精密切断加工し、日本の伝統建築に用いられている「ほぞ」「楔(くさび)」「継ぎ手」といった締結手段と、ボルト締結、溶接を組み合わせて構造物をつくる「匠フレーム」構造を開発。劇的な製造時間の短縮と製造原価削減、環境負荷の低減を実現した。

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鋳物の製造業者の減少で、レーザー加工機の製造が危機を迎える

 「20年来、レーザー加工機の開発を手がけてきて、部下には『レーザー加工機の土台部分は鋳物でなければならない』と教えてきた。だから、トップから『鋳物以外の方法を考えなさい』と指示された時は、正直抵抗がありましたね。とはいっても、鋳物での製造が今後は難しくなるという現実から目をそらすわけにはいきませんでした」
 レーザー加工機などの土台を鋳物で製造するには、土台とまったく同じ形状の木型をつくり、砂に埋めて型を取り、そこに溶かした金属を流し込んで固め、最後に焼きなましをする。基本的には外部の鋳物製造業者に委託するわけだが、製造期間はレーザー加工機のベースの場合で3、4カ月もかかる。だから、受注を予測して発注をかけておく必要があり、無駄な在庫が発生する原因になっていた。
 だが、それ以上に問題は、廃業する鋳物業者が増えていること。鋳物製造には高度な技術力が求められるうえに、現場作業は危険でつらい仕事なので、後継者が育たないからだ。「このままでは安定した鋳物供給を望めない」という危機感があった。鋳物以外の製法としては製缶という方法もあるが、これも一長一短ある。製缶はパイプや形鋼などの鋼材を切断し、溶接して構造物をつくる製法で、鋳物に比べて材料強度は高いが、鋼板を溶かして接合させるので寸法精度が落ち、加工時間が長くなる。また、レーザー加工時の振動でフレームが共振すると、加工精度が悪くなり、送り速度に制限が出る。

法隆寺の五重の塔はなぜ1000年以上たっても倒れないのか

 鋳物や製缶に代わる製法はないか。
 開発技術者たちを集めて検討を重ねた結果、少々突飛とも思える案がトップから出てきた。
 「1000年も前に建てられた法隆寺の五重の塔はなぜ倒れないのか。ほぞや楔(くさび)といった釘を使わない建築手法にならって、地震などの振動を吸収する方法を用いてみてはどうかと」
 製缶は、溶接によって構造物が一体化するため共振が収まりにくくなる。ならば、溶接ではなく、ほぞや楔、継ぎ手など、極力溶接を使わない手法で組み立てれば、振動が起きてもかみ合わせた部分で摩擦が起き、振動のエネルギーを効率良く吸収して振動が収まるはずと考えたのだ。組み合わせる鋼板を切断加工して、ピタリとかみ合うよう高精度にほぞや継ぎ手などをつくるのは、まさにレーザー加工機の真骨頂ともいえる分野。この方法ならフレームを内製することも可能になる。
 開発が始まったのは04年初頭。試作を繰り返すうちに、新開発フレームの驚異的な性能が明らかになった。
 「鋳物フレームと新開発フレームをハンマーでたたいて音を聞き比べると、前者は鐘のように”ゴ~ン“と響きますが、後者は”ゴン“と収まる。もはや誰の目にも明らかで、それまで半信半疑だった私も”これならいける!“と確信を持ちました」
 しかし、苦労したのはその後。理論的に仕組みを解明し、どの個所にどの接合手段をいくつ設けるかなど、設計の基準が必要だ。鋳物や製缶であれば一体構造物なのでシミュレーションによる解析が可能だが、部材が完全に接合されていないフレームでは挙動が複雑なのでそれができない。
 「一つ一つの接合部を実測して、パラメータ処理によって設計基準を明らかにする必要があり、そこに一番苦労しましたね」
 こうして04年11月に新開発フレームは実用化され、日本の伝統建築の先人に敬意を表し、「匠フレーム」と名付けられた。
 匠フレームはレーザー加工機の土台部分としての性能もさることながら、数々のメリットを生み出した。製造期間はたったの9日間(現在は5日間)に短縮されて在庫を抱え込むことがなくなり、製造原価も抑えられる。鋳物のように大量のエネルギーを使う必要がなくなり、CO2排出削減にも貢献する。
 「トップからの前人未到な提案でしたが、新しいことを否定せず、挑戦したことが成功の要因だったと思います」
 匠フレームは、レーザー加工機だけではなく、半導体製造装置や建設関連機器などへの幅広い応用が期待されている。

ヤマザキマザックオプトニクス

http://www.mazak.jp

設立
1965年6月
資本金
8000万円
従業員数
180名(2009年12月現在)
ワンポイント
85年にレーザー加工機の製造を開始。CNC装置やリニアモーターの開発・製造も行い、パイプなど3D形状に対する独自の切断技術を持つ

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木造の伝統建築で使われるほぞや楔、継ぎ手などの手法を用い、400点におよぶ鋼板の部品を組み合わせてレーザー加工機の土台部分(ベースやコラム)が完成する

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自社製のレーザー加工機で鋼板を精密に切断加工してフレームの部材をつくる。これでベースやコラムの内製が可能になった

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匠フレームはほぞ、ほぞ穴、楔、継ぎ手、ボルトなど、機械的な締結手段や回り止め点付け溶接により構成される