山形県米沢市
株式会社織元山口
山口 英夫(44) 代表取締役
【推薦者】米沢市商工観光課
伝統的なジャカード織とデジタル技術を融合させた
「写真織」のテキスタイルアーティスト
株式会社織元山口
米沢市の伝統産業である先染め・細番手の糸によるジャカード織と、デジタル技術を融合した織物「PHOTOTEX(フォトテックス)」を創造。既存の電子ジャカード織り機とは発想を180度変え、デジカメやスキャナーの画像をパソコン上で紋様としてデータ化し、コントローラを通じて織り機を稼働させるシステムを独自開発した。作家一個人の興味の対象を、大判の織物として表現する手法は新しいアートとして高く評価され、各種コンペで入賞の常連に。作品は、米国メトロポリタン美術館やΜuseum of Art & Design などに収蔵されている。また、旧来の電子ジャカード織り機コントローラは設計思想の古さや、主要メーカーの撤退などから発展性を失っているため、同社による新たなシステムの開発・市販化計画が自治体との連携で進められている。
マンガ「ものづくり万歳!!」Vol.1 織元山口
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− そもそも、ジャカード織り機ってどんな機械なんでしょう。

 「紋紙と呼ばれる穴を開けた紙を使って、紋様を制御する織り機。これ以降、絵画のように複雑な紋様のタペストリーが量産できるようになりました。コンピュータ制御の電子ジャカード織り機が登場したのは80年代。ただ本体が500万円くらいなのに、紋紙を電子データ化するシステムが2000万円。うちじゃ、買えません・・・・・・」

 

− それで自分で開発することに。

 「MacIIというマシンで自分でプログラムを書いて、回路も組んで。既存の電子ジャカード織り機というのはまず織り機ありきの発想で、紋紙をフロッピーディスクに置き換えただけ。でも僕はあくまでパソコンありきで、デジカメで撮った写真を、プリンタの代わりに織り機で出力しようという考えだった。写真とテキスタイルの融合ということで『PHOTOTEX』と命名して、それで特許を取りました」

 

− 必要な分野の知識や技術は、どうやって身につけたんですか。

 「エレクトロニクスが好きで、就職したのも大手電機メーカー。そこでパソコン開発チームに配属されました。80年代初頭のパソコン黎明期で、ソフトもハードもすべてにかかわれた。ただ、僕はDCブランドで通勤するほどファッションも大好きで、勤め人としては浮いてましたね。でも、うちの家業を見直せたのはそのおかげです。で、会社を辞め、改めて服飾専門学校に入学。パソコン雑誌の発刊が相次いだ時代で、僕もある編集部でアルバイトをしていました。グラフィックデザインや印刷の知識は、そこで身につけたんですよ」

 

− 作品が世に出たきっかけは?

 「編集関係の知人に、アパレルや家具のデザイナーさんを紹介されたんです。すると『これは生地というよりアートだよね』と言われて。それがきっかけで、国際的なアートコンペなんかに出品して入賞するようになりました。海外のある美術評論家が批評してくれたんですが、元来タペストリーというのは、王侯貴族や実力者が自分の肖像とか神話をモチーフにしてつくらせたもの。それが僕の作品は、極めて個人的な視点で織りたいものを織ってる。織物を一個人の表現メディアとして使うのが新しいって。『そうか、俺ってそういうことしてたのかー』と(笑)」

 

− 織元山口には世界最大級のジャカード織り機があるそうですね。

 「今は世界最大ではないかもしれませんが、10年前イタリアに行って買ってきた幅4mの柄が織れる機械があります。実際に織物になるのは3.8mですけど。ただ、大型の織り機は大きな織物を織るというより、幅の狭い織物を同時に何枚も織るためのもの。イタリア製も量産が前提なんですが、さすがファッションの国で糸も16色まで使えるとか、懐が広かった。日本製だと効率優先のあまり糸の種類や色数が限られてしまうので」

 

− 作家としてのものづくりと、会社としてのものづくりの関係は。

 「まったく分けて考えてます。大きな織り機を入れてから、会社として緞帳(どんちょう)や舞台幕といった新しい商品もつくれるようになりました。でも、そうした製品には作家性ではなく、たとえば防炎性であるとか軽量化であるとか、納期の短縮とか、そういう面での工夫をしています。別の織り機では金糸・銀糸を使った袈裟(けさ)や宗教幕なんかも織っています。様々な種類の糸が使えるというウチの特徴を生かして。作家としては個人宅や別荘、お店のインテリアとか、テレビ番組のセット用とか、そんな仕事を受けています。そこでは作家・山口英夫のデザインが求められているので、積極的にアイデアを出します」

 

−「PHOTOTEX」に、米沢織の伝統は生きているのですか。

 「作品的には、むしろ伝統とは逆です。織りの職人さんって、より小さく緻密なものを目指す傾向がある。でも、僕はとにかく大きなものをつくりたい。雑草をモチーフにしたタペストリーなんか、前に立つと自分が虫になったみたいに感じる。しかも、近づいてみるとそれが織物だという意外性。あと写真のリアルさを、途中で人間の意思を介在させずにすべてデジタルで処理することにもこだわっています。ただ、織りの仕事の手間と時間の7、8割は、織り機に糸を仕掛けたり紋データをつくったりの地道な作業なんです。それは伝統的な技能なしにはできない。コンピュータを使う新しさも、その伝統の上に成り立っているということはいえるでしょうね」

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