高知県高知市
株式会社技研製作所
南 哲夫(55) 常務取締役 経営企画部長
【その他の受賞メンバー(五十音順)】 池田敏夫、田内宏明
【推薦者】(社)高知県工業会
圧入工法による建設施工技術とノウハウを活用した、
機械式地下駐輪場の開発および実用化
株式会社技研製作所
「エコロジー」な乗り物である自転車だが、一方で道路を不法に占拠し交通の妨げとなることも。しかし町の中心部には、もう駐輪場をつくるだけの敷地がない。こうした問題を解決したのが、機械式地下駐輪場「エコサイクル」だ。自立できない自転車を安定してハンドリングする技術の開発により、入出庫に要する時間は平均10秒。また、鋼鉄製の矢板を油圧で正確な円形に圧入し構造体とする独自の工法は、工事中の周辺環境に対しても「エコ」である。現在、全国7カ所で20基が稼働中だが、従来工法と比較して工費で4分の1、工期も4分の1~5分の1と「エコノミー」でもある。さらに地下駐輪場という機能はそのままに、ビルなどの基礎部分を兼ねることもできるため、地下有効利用の新しいかたちとして注目されている。
「エコサイクル」が減らすのは
違法駐輪や放置自転車だけではない。
工期もコストも環境への負荷も減らす

あっという間に入庫、あっという間に出庫。人を待たせない駐輪場

 「エコサイクル」とは同社が開発した地下駐輪場のこと。駐輪するにはまず、地上にある入出庫ブースの機械に管理用の磁気カードを読み込ませる。自転車をセットすると、ブースの入り口からアームが出てきて自転車の前輪をはさみ、中に引き込んでしまう。あとはリフトで地下駐輪スペースへ。文章ではスピード感がないが、実際にはあっけないほど素早い。出庫はさらに感動的で、カードを入れて平均10秒、最短6秒で自転車が現れる。開発責任者の南さんは言う。
 「社長に『10秒を切れ。誰だって待つのはいやだろう』と、非常に高い目標を設定されまして(笑)。無理だと思いましたが、この目標があったからこそ、ユーザーの視点に立ったいいものができた」
 エコサイクルは直径約7m、深さ十数mの円筒状の空間に設置される。内部には駐輪スペース(凹型断面のレール)が1層につき18台分放射状に配置されていて、それが8~10層ある。中心部にはリフトが通っており、台に仕込まれたアームが自動的に自転車を格納したり引き出したりする仕組みだ。
 実は同社には自動車用の機械式地下駐車場、「エコパーク」なるものがすでに存在していた。エコサイクルは、そのコンセプトを踏襲して開発されたのである。
 「しかし、4輪の自動車と違って自転車は自立できない2輪です。これをどう安定して移動させるか。試行錯誤の末、自転車というのは前輪さえ固定してしまえば安定するとわかって、今のシステムが完成したのです。どんなタイプにも対応できるよう、警察から放置自転車をもらって実験もしました」
 エコサイクルは、地上スペースに余裕のない大都市圏で好評で、違法駐輪や放置自転車の一掃に効果を挙げている。しかし、この駐輪システムの価値は単にそれだけではない。人や建物が密集した地域で、周辺への影響を最小限に抑えながら、地下に建設できるという点が高く評価されているのだ。そして、それを可能にしたのが、同社が40年来取り組んできた独創の「圧入工法」なのである。

 

既存の工法は問題山積。解決策は工法そのものを根底から考え直すこと

 圧入工法では構造材として矢板(板状の杭材。鋼鉄製、コンクリート製などがある)を使用する。エコサイクルに使われるのは、その断面形状からH形鋼矢板と呼ばれるもの。これを強力な油圧で一枚ずつ地中に押し込んでいくのだ。矢板の両端は互いにつながるようになっており、すべてを円形に圧入すれば、直径7mの鋼鉄製の円筒が地中に埋め込まれたことになる。この後、中の土砂を掘り出し、エコサイクルの機械部分をセットしたら、ブースをかぶせて完成。
 「この工法が革新的なのは、矢板の構造体が基礎と躯体(建築物の骨組み)の両方を兼ねるということです。従来の工法では基礎と躯体は別々。しかも基礎は巨大な鉄筋コンクリートの塊なので、工事は大がかりになる。また、本工事の前段階である仮設工事のコストや工期もばかになりませんでした」
 圧入工法ならこうした欠点がすべて解消するし、矢板は規格に沿った工業製品なので建築物の品質も安定する。また矢板を「叩き込む」のではなく、油圧で「押し込む」ので騒音も起こらない。あとはコンパクトな圧入機があれば、工事面積を最小限にできるはずだ。
 「でも、そんな小型で強力な圧入機は、どこの建機メーカーもつくっていない。うちは建設会社でしたが、それならというので自社開発してしまったんですよ」
 しかし小型の圧入機には、大きな問題点もあった。矢板を圧入しようとすると、硬い地面からの反力を受けて圧入機のほうが浮き上がってしまうのである。機械を大きく重くすれば問題は解決するが、それでは本末転倒だ。
 「そこで圧入機に専用の台を取り付け、工事に使う矢板数枚を重し代わりに乗せて、機械を地面に押さえつけた。この状態で、まず最初の矢板を3、4枚圧入。押し込まれた矢板は地盤の圧力で固定され、びくともしなくなります。この矢板の上端を圧入機の底部にあるクランプ(万力)でがっちりとはさみ込めば、機械自体が大地の一部となり反力に対抗できる。その後は、機械が矢板の上を移動しながら次々と圧入していくんです」
 さらに岩盤や、石のつまった硬い地盤でも圧入できる機材と工法も確立され、今や事前に地質調査さえ行えば、どんな地盤でも施工ができる。利用者には地上のブースしか見えないエコサイクルだが、地下には建設業界の常識を覆した革新的な工法が隠れているのだ。

▲このページの先頭へ戻る