群馬県太田市
株式会社大嶋電機製作所
梅澤 隆男(53) OSI-UMSS 開発推進室 室長
【推薦者】群馬県工業振興課
「小さな型内に大きな工場」を実現した
成形型内成膜システムの開発
株式会社大嶋電機製作所
自動車用のランプを主力製品とする同社は、従来、多くの同業他社と同じように、レンズやハウジングなどそれぞれの部品を個々に成形した後、それらを組み付けて生産していた。02年に完成させた「OSI(Oshima original System Injection)」成形工法は、こうした成形加工、組み立て、接合までを同一の成形型内で行うという画期的なシステム。単純に言えば、金型に材料を入れるだけで完成品が出てくるのだ。今回受賞対象となった「OSI-UMSS」は、さらにスパッタリング(真空蒸着)工程までをも、型内システムの中に組み込んだ。専用の大規模な設備はいらなくなり、部品類の在庫も必要ない。製造に要する時間も大幅に短縮されるなど、成形加工の現場に革命をもたらしつつある。

製造業の基盤である金型までも
海外に流出してしまう。

ならば、
「日本でしかつくれない金型システムを!」

「価格競争では負ける」。

“究極の工法”開発の出発点にあった、大いなる危機感

 「小さな型内に大きな工場」。同社の、ランプ成形型内完成システム・OSIにじか書きされたこのフレーズが、その革新性、込められた技術のすべてを語っているといっていい。同社が得意とする自動車用のランプに例を取ろう。バルブ(電球)が装着されるハウジングの部分とレンズとでは、使う樹脂の種類が異なる。それぞれ別の成形機(金型)でつくった後、組み立て、接合するのが普通のやり方だ。しかしOSIは違う。ひとつの金型に2種類の樹脂を流すだけで、ハウジングもレンズも成形。しかもその中でロボットが組み立て、接合を行い、取り出してすぐに製品の検査まで済ませてしまうのだ。
 「ご覧のように、少し大きな金型っていう感じでしょ? 今までは部品をつくって、ストックしておいて組み付ける。当然のように複数の金型と接合装置が必要でした。それがこの1台でできてしまうのですから、省スペースという点だけ取っても、大変なメリットです」
 開発に着手したのは90年代の後半。「日本製鋼所が、エンジン関連の部品を中空射出システムで樹脂化したことを知り、それをランプ製造に応用できないかと考えた」のがきっかけだ。だが底流には、自社のものづくりに対する強い危機感があった。
 「単品成形では、海外との価格競争に勝てない。そもそも、製造業の基盤ともいうべき金型が海外に流失してしまうのでは、話になりません。“日本でしかつくれない金型”にするしかないと、けっこう悲壮な決意だったのですよ」
 意を決した梅澤さんは、当時の同僚ふたりと共に社長室のドアを叩く。研究開発のテスト金型など、実験機を導入するための資金を出してもらうためだ。事前に、「ボーナスはいらないから、500万円出してください」と話すことに決めていた。腹をくくって、「苦しい時こそ挑戦しなければ」と力説する3人の話を聞き終えた社長の答えは、「1000万円出すから、やってみろ」だった。
 「『研究開発だけでなく、量産に結び付けてほしい』というのが社長の考えでした。嬉しかったですけどねえ、これは失敗できないぞと逆にプレッシャーを感じました」
 試行錯誤の末に、システムが完成したのは00年だった。

 

新たなシステムの導入が切磋琢磨を生み、現場を変えた

 「OSI‐UMSS」は、それをさらに進化させ、ハウジングの内側に金属膜をつくるスパッタリング工程までをも、内部でできるようにしたシステムだ。
 「『さすがに無理だろう』というのが、最初に話を聞いた専門家の感想でしたね。たとえば、スパッタリングには不可欠な真空状態をどうやってつくり出すのだと」
 同社が取った方針は、異業種の力を借りること。金型や機器メーカーなどと積極的に交流し、技術力を高めていったのである。03年度の「群馬県産学官連携提案型研究開発」に選ばれ、補助金も得た。
 「どういう経緯で応募したのか、実はよく思い出せないんですよ。とにかく開発費を何とかしなくてはとの思いで、書類ができたのは締め切り当日の朝。寝ぼけまなこで提出に行きました。最終審査では、審査員の多くが『本当にできるの?』という感じ。ところが、その場にいた中川威雄先生(東大名誉教授)が『あなた、本当にやる気ですか?』と。その一言に“技術者魂”を呼び覚まされる思いがしました」
 スパッタリング工程にはクリーンルームや大規模装置が必要なことに加え、運搬などにも気を使わねばならない。指紋がわずかに付着しただけでアウトである。繰り返すが、同じ成形機内でこれらの仕事をこなす同システムには、そうした危険はいっさいない。成形と成膜を同時並行で行うから、この工程にかかる時間は従来の半分。製品にもよるが、製造コストも2分の1近くに削減できるのだ。
 技術革新は現在進行形である。
 「成形と成膜を一緒にやる以上、たとえばスピード面で“相手”の足を引っ張るわけにはいかない。双方の技術者がそうならないように、いや一歩でも先に行くように、切磋琢磨するようになりました。新しいコンセプトのシステムが、新しい人材を生み、育てている。これほど嬉しい誤算はありません」
 海外に負けないものづくりのヒントが、ここにもある。

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