monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」
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受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
富山県 コストハーフ ダイカスト技術 低圧化
富山県射水市
アイシン軽金属(株) 
大沢勝実(48歳)
DC製造部部長 富山県射水市
アイシン軽金属(株) 
大沢勝実(48歳)
DC製造部部長
アルミダイカスト
低圧化技術確立による生産革新
アルミダイカスト部品は、高温で溶かしたアルミを金型に流し込み、圧力をかけて冷やし固めるという製法でつくられる。従来は70〜100MPa(メガパスカル)という圧力をかけることが常識とされていたが、金型の中で起きている現象を実験で解析し、46MPaという低い圧力で製造する技術を確立。製造コストの半減や、製造スピードの大幅短縮を実現した。現在では同社のアルミダイカスト製造ラインの約8割が低圧製造に切り替えられた。これにより、中国の企業とも互角の価格競争力を得ることができた。
“アルミダイカストの製法で業界の常識といわれてきたやり方を打ち破れたのは、絶対にあきらめなかったから
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Company Profile
アイシン軽金属(株)
http://www.aisin-ak.co.jp/
1970年設立。ダイカスト鋳造メーカーとして創業し、75年には押出製法による製造も開始した。83年11月に品質管理の高さを認められてデミング賞を受賞するなど、高品質な製品をつくるメーカーとして知られる。02年2月には生産累計80万tを達成。現在は株主であるトヨタのほか、自動車メーカー向けに、エンジンやトランスミッションなどのアルミダイカスト部品を供給している。
「どうせ失敗するよ」と嘲笑されたこともあった
 自動車のエンジンやトランスミッションなどを構成するアルミダイカスト部品の製法は、「たい焼き」のつくり方に似ている。高温で溶かしたアルミを金型に流し込み、高圧をかけて冷やし固めるのである。
 かつてアルミダイカスト業界には“常識”があった。アルミを流し込んだ後にかける圧力は70〜100MPa にしないと良い製品がつくれないとされ、何十年にもわたってどこの会社も同じやり方だった。もしそれより圧力を下げると、製品表面に「湯境」と呼ばれる線上の亀裂ができ、内部に欠陥が発生し不良品になったりするからだ。その常識に挑戦したのが大沢さんである。
「きっかけになったのは、83年にデミング賞(日本科学技術連盟の表彰制度)を受賞したこと。弊社の品質管理の高さを評価していただいたわけですが、同時にものづくり自体は弱いという指摘を受けたのです」
 そこで同社では5年ごとにビジョンを掲げ、ものづくりの実力を高める挑戦を始めた。95年から始まった「V2000」計画では、すべてのコストを2分の1にする、”コストハーフ“を掲げた。背景にあったのは競合他社の中国進出で、価格競争力を高める必要があった。しかし、コストを半減するのは並大抵のことではない。小手先の方法ではダメで、製造法を根本から見直すことが求められた。開発テーマとして挙げられた約20の新技術のうち、大沢さんに課せられたのは「鋳造圧力の低減」だった。
「圧力を下げることには先人たちが何度も挑戦している。しかし、うまくいかなかったから何十年もそのままになってきたんです。業界の中には、“無駄だからやめとけ”とからかう人もいました」
   
あきらめなければ必ずブレークスルーがやってくる
 圧力を下げることのメリットには、「非常に高価な金型が長持ちする」、「圧力をかける機械を小型で安価なものに替えられる」、「バリ(つなぎ目に流れ込んだ余分)が発生しにくくなってバリ取り作業を減らせる」など、いくつも考えられた。
「まず、圧力が低いとなぜ湯境ができるのかを突き止める必要があった。コンピュータのシミュレーションではできないものが、現物にはできる。現場主義でやるほかない。実験を繰り返してようやく判明したのは、金型にアルミを流し込む時に、予想以上に早く温度低下が起きていたことで、破断チル層という部分的に凝固したものができ、アルミ溶湯の流れを阻害していたのです」
 問題の発生原因がわかれば、解決法は見えてくる。アルミの湯温が下がらないようにすればいい。湯温を650℃から670℃に上げ、温度が下がらないうちに一気に流し込むために、注湯から金型内への充てん完了までの時間を10・7秒から5・4秒に短縮し、圧力を半分の46MPaに設定した。気泡をつ
くらないようにゆっくり流し込むのも業界では常識だったが、倍のスピードにしたのだ。その代わり、ガス抜きを大きくして空気を排出しやすくした。低圧だからそれが可能になったわけで、ここでもひとつ常識を打ち破ったのである。
 低圧化が実現すると、先に挙げた以外にも様々なメリットがあることがわかった。製造スピードは格段に速まり、圧力をかけた時にアルミの湯が飛び散ることが減って、作業者の安全性が高まった。何より、本当にコストを約半分に削減した。
「私ひとりの力ではなく、全員がコストを半分にすることに本気で取り組んだおかげ。業界の常識とされる技術の中にも、ブレークスルーの芽が残されている。やりたいようにやらせてもらえた半面、ギブアップを許してもらえなかったのも事実(笑)」
 まさしく、アルミダイカスト製品の製造法に革命を起こしたのである。
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