monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
北海道 クラッチ 摩擦材 AT
北海道千歳市
(株)ダイナックス
渋谷隆夫(55歳)
常務取締役/開発本部長 北海道千歳市
(株)ダイナックス
渋谷隆夫(55歳)
常務取締役/開発本部長
耐久性と摩擦特性を兼ね備えた
オートマチック車用新規クラッチディスク
オートマチック(AT)車のトランスミッション(自動変速機)に使われているクラッチディスクは、鉄のリングの表面に摩擦材が張り付けられている。この摩擦材には、かつて健康被害を引き起こすアスベストが使用されていた。同社は、“脱アスベスト”に挑戦。83年に天然繊維と合成繊維などを組み合わせ、さらに摩擦調整剤を配合した母材に、フェノール樹脂を含浸させ熱で固めた、国産初の摩擦材(ペーパー摩擦材)の開発に成功。これにより環境問題が解決されただけでなく、耐久性などの性能面でも従来製品を凌駕。AT車の「進化」に大きく貢献している。
“系列”が当たり前の自動車部品の世界に
あえて後発で挑んだ以上、
いいモノをつくること。それしかなかった
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Company Profile
(株)ダイナックス
http://www.dxj.co.jp/
1973年創業。米国RM社と大金製作所(現エクセディ)との合弁企業としてスタート。RM社から摩擦材を輸入していたが、業績は低迷。輸入販売から自社開発に方針転換し、87年にはRM社との技術援助契約を解消、技術的な独立を果たす。91年、現社名に。北海道の千歳市と苫小牧市に工場が稼働するほか、米国、中国にも生産拠点(いずれも現地法人)がある。
“脱アスベスト”を至上命題に国産摩擦材の開発にチャレンジ
 アスベスト(石綿)による健康被害が社会問題になっているが、その有害性を巡っては80年代初頭にも大騒ぎになったことがある。現在、国内で販売される新車の95%近くはオートマチック(AT)車。実はその普及に、同社の新型クラッチディスクの開発が極めて重要な役割を果たしたのだ。
 1枚のクラッチ板を「人力」で操作するマニュアル車に対し、AT車はトランスミッションに装備された薄い何枚ものクラッチディスクを付けたり離したりすることで、自動変速を行う。押し付けた時、ディスク同士を確実に“締結”させるために、表面には摩擦材が張られている。その材料として、アスベストが使用されていたのである。
 大学卒業後、81年に入社するや、いきなり“脱アスベスト”の難問を突き付
けられた渋谷さんは、「基礎があっての応用ではなく、ほとんどゼロからのスタートでした」と振り返る。当然のことながら苦闘の連続。
「トランスミッションの内部って、潤滑油で満たされているのですよ。そんな中で、ディスクを押し付けたり、また離したり。“滑らせながら止める”という、二律背反を克服する材料が求められるのです」
 同社はすでに、紙(セルロース)を素材にした製品開発に取り組んでいたが、摩擦材としての強度を持たせることは無理だと判断。研究を進め、同じ紙でも発想と材料を変えた、「ペーパー摩擦材」と呼ばれる初の国産品の開発にたどり着いたのは、83年のこと。商品化までには、さらに3、4年の年月を必要とした。
トランスミッションの内部。円盤状のクラッチディスク同士を押し付けたり、離したりして変速する
トランスミッションの内部。円盤状のクラッチディスク同士を押し付けたり、離したりして変速する
4年間売上高ゼロの苦境を越えついに世界のトップに立つ
 実は、渋谷さんが入社したのは、偶然に近かった。就職活動をしていた時、同社を 「ちょっとのぞいてみようか」と軽い気持ちで訪問したことが、運命を変えた。
「別に本命の会社があったのですが、『明日から来い』という熱意に押されて……」
 同社の設立は73年。当初は米国メーカーとライセンス契約を結び、製品(摩擦材)を輸入し加工・販売を行う会社だった。しかし、国内メーカーのニーズに合致する製品を供給することができず、創業から4年間は何と売り上げゼロ。その後も業績は低空飛行を続けていた。
 そんな状況を打開するために打ち出した方針が、自社製品の開発。具体的には“脱アスベストを実現したクラッチディスク用摩擦材”の実用化だった。渋谷さんが同社を訪問したのは、ちょうどその頃。会社側からすれば、「合成化学が専門の大卒の青年」は、転がり込んできた金の卵に見えたことだろう。
 一口に摩擦材と言っても、メーカー、車種などによってすべて異なる。エンジンが高出力になれば、それに合わせたクラッチディスクが必要になるし、トランスミッション自体の小型化も進む。加えて、半永久的な品質保証が当然のように求められる世界。こうしたシビアな要求に応えるためにも、技術革新のスピードを緩めるわけにはいかない。
「これまで紙をベースにしてきたのですが、今、不織布を素材にした製品の開発に取り組んでいます。すでに実用化段階にきており、一部のメーカーで採用が始まりました」
 こうした技術力が評価され、同社のクラッチディスクは、世界の自動車の07年モデルで、シェア40%を獲得。初めてトップの座に踊り出た。
「当社は、メーカーの“系列”がほとんどの自動車部品の分野に、あえて後発で乗り込んだ。だから、食べていくためには認められる製品をつくること、それしかなかったのですよ」
 そんな同社のDNAが、今日も世界の自動車産業を支えている。
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その他の受賞メンバー(五十音順)
伊東勝広、大関則行、久保田雅三、小林隆弘、設楽利弘、高橋仁、竹崎謙一、正木宏生、向一仁
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