monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
キーワードから探す 地域から探す ムービーを見る まんがで読む
世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
愛媛県 気相法 触媒 ラクタム
愛媛県新居浜市
住友化学(株)
和泉好高(55歳)
理事 愛媛県新居浜市
住友化学(株)
和泉好高(55歳)
理事
硫安フリーのカプロラクタムプロセスの
開発と工業化
ナイロン繊維の主原料であるカプロラクタムは、主に石油から取り出されるベンゼンから製造されるが、従来プロセスではその過程で硫酸アンモニウム(硫安)が副生される。こうしてできる硫安は、原料代より価格が低く、取り出すためにはエネルギーも必要で経済的ではなく、さらにプラントの腐食対策が必要となる。同社は、独自の触媒を開発することで新しい製造プロセスを実用化、完全な硫安フリーを実現した。製造に必要な原材料は25〜40%に削減(=原材料費低減)、必要なプラント数も60〜70%に減らすことができる(=資本回転率の改善)。また、硫酸など腐食性流体をプラントから排除できるため、設備費、補修費共に大幅に削減された。
新たな触媒の開発で、半世紀以上続く懸案事項に答えを出すことができた
受賞者のドキュメントを読む
Company Profile
住友化学(株)
http://www.sumitomo-chem.co.jp/
1913年創業。愛媛県新居浜の別子銅山で、銅の精錬の際に生じる排ガスによる環境問題を緩和するため、その排ガスから肥料を製造することを目的に設置された「住友肥料製造所」(現愛媛工場)が発祥。愛媛工場は現在、総合化学メーカーである同社の基礎化学品部門を支える生産基地となっている。
海外大手企業があきらめた技術にあえてチャレンジ
「カプロラクタムからつくられる化学製品は何か?と聞かれても、一般の人には答えられないでしょうね」と和泉さんは笑う。答えは、ストッキングなどに使われるナイロン。絹の代用品として開発されたこの合成繊維は、今や、私たちの生活になくてはならないものだ。
 主として、石油から分離されるベンゼンを粗原料とするこのカプロラクタム、いくつかの生産法(プロセス)が編み出され、現在もそれらが共存している。ただし、どのプロセスを採用しても解消できないネックがあった。副生物として硫酸アンモニウム(硫安)ができてしまうことだ。窒素肥料として使い道がある硫安。しかし、できると困る理由が2つある。
「窒素肥料をつくるのだったら、尿素を原料にしたほうが安上がり。わざわざカプロラクタムから“持っていく”メリットはありません。それと、結果的に硫酸
を使うことになるため、装置の腐食対策にコストをかけねばならないのも痛い」
 そのため、ドイツで世界初のカプロラクタム商業生産が開始された42年には、すでに“硫安フリー”を目指した研究も始まっていたそうだ。同社が基礎研究に着手したのは84年。和泉さんは、同社プロセス研究所などでの勤務を経て愛媛工場に戻った93年から、直接タッチするようになった。
 ところで、同社が開発を目指した「気相法」と呼ばれるプロセス。実は、海外の大手化学メーカーがパイロットプラントの建設まで行いながら、ギブアップしていた経緯がある。品質面での問題をクリアできなかったのだ。だから、「業界では(気相法でつくる)『住友のラクタムは使い物にならないぞ』などとささやかれる始末」だったそう。そんな風説を覆すためには、とにかく高品質の製品をつくるしかなかった。
   
原材料を25〜40%に削減。品質にも折り紙付き
 こうして98年に、同社の歴史で初のプロジェクトチームが結成された。実際にプラントを動かす現場の人間と、研究所メンバーとの合同チーム。翌年には月産5000t規模の実証プラントが稼働する。だが、最初はやはりトラブル続きだった。
「固まったカプロラクタムをスムーズに流すために、プラントに銅パイプを巻き付けて、そこにスチームを通して温めた。最初から二重パイプにしておけば、そんな苦労をしなくても済んだのですが。あの時は、四国中の銅パイプがなくなったと、大騒ぎになりましたよ(笑)」
 化学プラントは昼夜の別なく稼働している。交代制を取ってはいるものの、何かが起これば、夜中だろうが何だろうが構わず招集がかかる。「私も丸2日間、一睡もできなかったことがありました」と和泉さんは振り返る。
 プラントを動かしながら、並行して様々な技術的改良を加えた結果、新プロセスでの生産にメドが立ったのが01年。03年から、世界初の硫安フリープラント商業運転が始まった。
 他の会社にできなくて同社にできた最大の理由は、化学反応を介在する触媒の違い。自社開発のまったく新しい触媒を使うことで、半世紀以上続いた業界の懸案事項に、ひとつの答えを出したのである。
 新しいプラントは、硫安をまったく副生しないだけではない。原材料を25〜40%に削減でき、また“余計な”化学反応をカットしたシンプルなプロセスであるため、プラント自体を小さくすることが可能。従来法に比べ高品質のカプロラクタムを製造できるのも、大きなメリットとなっている。同社が生産する月産18万tのカプロラクタムのうち、すでに8万tが新プロセスで生産されている。
ページTOPに戻るページTOPに戻る
その他の受賞メンバー(五十音順)
浅野浩幸、市橋宏、尾崎達也、北村勝、佐藤洋、嶋津泰基、橋本留治、深尾正美、松井修平
このWebサイトについて (C)2006 日本機械工業連合会