monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
長野県 シングルシン スマートコーダ レゾルバ
長野県飯田市
多摩川精機(株)
北澤完治(51歳)
モータトロニックス研究所技監 長野県飯田市
多摩川精機(株)
北澤完治(51歳)
モータトロニックス研究所技監
ハイブリッド自動車搭載VR形レゾルバシステムの開発および製品化
高回転・高出力の電動モーターを高精度に回転制御するためには、モーターの回転子の回転角度をリアルタイムに検出する角度センサーが必要になる。ハイブリッド車の駆動システムは、ガソリンエンジンとモーターが一体化したかたちになっているため、角度センサーは150℃以上の温度と高振動にさらされ、ミッションオイルに浸った環境に置かれる。同社では、こういった過酷な環境下でも高い信頼性を発揮する角度センサーとしてVR形レゾルバ「シングルシン」を開発。さらに、出力信号を正確にデジタル変換するRD変換器「スマートコーダ」も開発した。世界初のハイブリッド車「プリウス」以外にも、フォード「エスケープ・ハイブリッド」やホンダ「アコード・ハイブリッド」にも搭載されている。
世界初のハイブリッド車「プリウス」を
世に送り出すためには、
常識を超えた角度センサーが必要だった
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Company Profile
多摩川精機(株)
http://www.tamagawa-seiki.co.jp/japan/index.html
1938年設立。創業以来、68年間、「角度」を測定する機器の開発・製造を行っている。戦前は軍事用航空機の油量計器を製造し、その技術は現在も防衛関連機器の角度センサーに引き継がれている。同社の角度センサーは、国立天文台野辺山観測所やハワイのスバル望遠鏡に採用されており、97年にはトヨタの「プリウス」にVR形レゾルバ「シングルシン」を納入。技術力の高さを内外に示した。
1年で発売するため、新型の角速度センサーを量産せよ!
 一般的な電動モーターは、スリットを切った回転子に2本のブラシ(電極)を接触させ、回転子の動きに連動して電磁石の極性を反転させることで、回転トルクを生む構造になっている。しかし、自動車を駆動するような高回転・高出力のモーターでは、回転子に接触しているブラシが摩擦で焼き切れるので、ブラシレスにする必要がある。レゾルバとは、ブラシの代わりに回転子の回転角を検出する角度センサーのこと。創業68年の歴史を持つ同社は、戦前からモーターを高精度に制御するレゾルバをつくってきた。ただ、自動車会社との取り引きが始まったのはごく最近のことだという。
「93年頃に、トヨタからRAV4EVという電気自動車(EV)のモーター用、JR総研から電車のホイールインモーター(ホイールと一体化したモーター)用のレゾルバを受注したのがきっかけでした」
 この新製品の開発を担当したのが北澤さんだ。EV用レゾルバは150℃以上の温度と高振動という過酷な環境にさらされる。今までの方法では、こういった環境にとても耐えられない。そこで、楕円のようなかたちの鉄板を回転
子に取り付け、周辺部のコイルで出力電圧の変動を読み取るVR式を考案した。とはいえ、当時、電車用レゾルバは実験のための試作品で、EV用にしても月産数十個程度で、ほとんど手づくりで納めている状態。開発・製造体制は牧歌的でのんびりしたものだった。
 しかし、状況を一変させる事件が起きる。
「96年に、トヨタの奥田社長(当時)が突然、『1年後にハイブリッド車を発売する』と宣言。それで、1年でハイブリッド車のモーター用レゾルバを月産2000個生産できる体制を構築することになったのです」
 通常、自動車部品の開発・量産には2年程度の猶予がある。しかし、与えられた期間はその半分。要求性能も極めて高かった。ハイブリッド車の駆動システムは、ガソリンエンジンと電動モーターが一体化しているため、レゾルバはミッションオイルにも浸る。そんな過酷な環境下で、高い信頼性が要求された。また、量産品である以上、低コストにする必要もあった。
これが「VR形レゾルバ」。ハイブリッド車に搭載するモーター用の角速度センサーである
これが「VR形レゾルバ」。ハイブリッド車に搭載する
モーター用の角速度センサーである
高温、高振動、オイル下という過酷な環境でVR形レゾルバは高信頼性を発揮
高温、高振動、オイル下という過酷な環境で
VR形レゾルバは高信頼性を発揮
納入直前に、大問題が発覚。会社に泊まり込んでの対応
 基本設計はEV用に開発したVR形レゾルバが使えそうだった。ただ、ほとんど手づくりの製品と同じ性能を量産品で実現しなければならない。それまで同社は高精度な製品の少量生産を手がけていたため、実は“大量生産”は初めての体験でもあった。
「数カ月で仕様を決め、金型を発注しなければならない。金型はひとつ2000万円。失敗は許されないが、失敗を恐れていては前へ進めない。緊張の連続でしたね」
 意外にも予想以上に開発は順調に進み、納入の数カ月前には立ち上げた製造ラインから製品が流れてきた。耐久試験にクリアすればプロジェクトは終了するはずだった。
 ところが、ここで大問題が起こる。ラインから出てきた製品が、要求される特性を満たしていなかったのだ。
「原因を特定するため、会社に泊まり込んで対策検討・再評価を繰り返しました。納入期日まで日数がなく、トヨタさんに謝罪して待ってもらおうと、腹をくくるところまできました」
 角度センサーは駆動システムのコアに位置するパーツだ。待ってもらえば「プリウス」発売は延期になる。大変な事態である。
「最後の最後でブレークスルーがあり、量産にギリギリ間に合った。今思えば、むしろあの時に問題が発覚して良かった。納入してからでは遅いですからね」
 当初、レゾルバからの信号を角度情報に変換するRD変換器は海外製品を採用していたが、数年かけて、より信頼性の高いRD変換器を自社開発した。両方合わせたシステムで今回の受賞となった。
 現在、このVR形レゾルバシステムは、トヨタ以外にもホンダやフォードのハイブリッド車、さらには電気自動車の世界最高速度記録を持つ慶応義塾大学の「Eliica」にも搭載されている。また、電動パワステへも転用され市場を広げつつある。環境対策のために開発が進められている電気自動車や燃料電池車は、モーターを駆動システムに持つ。北澤さんらが開発した技術は、その中核に生かされるはずである。
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その他の受賞メンバー(五十音順)
櫛原弘、菅沼明、牧内浩三、松澤重利、三村尚史
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