一般的な電動モーターは、スリットを切った回転子に2本のブラシ(電極)を接触させ、回転子の動きに連動して電磁石の極性を反転させることで、回転トルクを生む構造になっている。しかし、自動車を駆動するような高回転・高出力のモーターでは、回転子に接触しているブラシが摩擦で焼き切れるので、ブラシレスにする必要がある。レゾルバとは、ブラシの代わりに回転子の回転角を検出する角度センサーのこと。創業68年の歴史を持つ同社は、戦前からモーターを高精度に制御するレゾルバをつくってきた。ただ、自動車会社との取り引きが始まったのはごく最近のことだという。
「93年頃に、トヨタからRAV4EVという電気自動車(EV)のモーター用、JR総研から電車のホイールインモーター(ホイールと一体化したモーター)用のレゾルバを受注したのがきっかけでした」
この新製品の開発を担当したのが北澤さんだ。EV用レゾルバは150℃以上の温度と高振動という過酷な環境にさらされる。今までの方法では、こういった環境にとても耐えられない。そこで、楕円のようなかたちの鉄板を回転 |
子に取り付け、周辺部のコイルで出力電圧の変動を読み取るVR式を考案した。とはいえ、当時、電車用レゾルバは実験のための試作品で、EV用にしても月産数十個程度で、ほとんど手づくりで納めている状態。開発・製造体制は牧歌的でのんびりしたものだった。
しかし、状況を一変させる事件が起きる。
「96年に、トヨタの奥田社長(当時)が突然、『1年後にハイブリッド車を発売する』と宣言。それで、1年でハイブリッド車のモーター用レゾルバを月産2000個生産できる体制を構築することになったのです」
通常、自動車部品の開発・量産には2年程度の猶予がある。しかし、与えられた期間はその半分。要求性能も極めて高かった。ハイブリッド車の駆動システムは、ガソリンエンジンと電動モーターが一体化しているため、レゾルバはミッションオイルにも浸る。そんな過酷な環境下で、高い信頼性が要求された。また、量産品である以上、低コストにする必要もあった。 |