monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
キーワードから探す 地域から探す ムービーを見る まんがで読む
世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
京都府 島津 フラットパネルX線センサ X線診断システム
京都市中京区
(株)島津製作所
佐藤敏幸(49歳)
基盤技術研究所   
主幹研究員/部長 京都市中京区
(株)島津製作所
佐藤敏幸(49歳)
基盤技術研究所   
主幹研究員/部長
X線を直接電気信号に変換する
フラットパネルX線センサー
およそ100年の間、アナログ撮影が主体だったX線撮影のデジタル化を目的に、X線を直接電気信号に変換するX線センサーを開発した。構造としては、液晶ディスプレー用TFTパネルの表面に、コピー機の感光体ドラムに使われているアモルファス・セレンを蒸着させたもの。X線照射でアモルファス・セレンの層に発生する電荷を、TFTパネルが受け止めて電気信号に変換する。静止画にも動画にも対応。そして、患者のX線被曝量も減らせる。03年9月に、9インチ角サイズの新開発X線センサーを搭載したデジタルアンギオグラフィックシステム(心臓などの臓器の血管を撮影するシステム)が製品化され、翌年11月には、17インチ角サイズを搭載したX線撮影システムが製品化された。
結果には、必ず原因がある。
いやでもそれを見つめなければ
問題の解決はできない
受賞者のドキュメントを読む
Company Profile
(株)島津製作所
http://www.shimadzu.co.jp/
1875年創業。131年という長い歴史を持つ島津製作所は、96年に日本で初めてX線撮影に成功した会社で、以来、X線診断システムを主とする各種医療診断機器や分析・計測機器などを開発製造してきた。その技術力には内外で定評があり、02年12月に同社の田中耕一さんが生体高分子の新しい構造解析法を開発した功績で、日本人で12人目のノーベル賞を受賞したことは記憶に新しい。
TFTパネルにアモルファス・セレンの層を蒸着させたフラットパネルX線センサー
TFTパネルにアモルファス・セレンの層を蒸着させた
フラットパネルX線センサー
島津製作所では医療システムや分析機器を製造している
島津製作所では医療システムや分析機器を製造している
X線センサーは、各種X線デジタル撮影システムに搭載
X線センサーは、各種X線デジタル撮影システムに搭載
真っすぐに通過していくX線を受け止めるセンサーをつくれ
 X線写真などに代表されるX線を使った診断システムは、19世紀末に発明されて以来、いまだにフィルム撮影が主体で、デジタル化が遅れていた。デジタル化できなかった理由は、X線にはあらゆるものが真っすぐ通過してしまう性質があり(それゆえに人体の透視撮影ができる)、レンズさえも通過して屈折集光ができなかったから。一般的なデジタルカメラでは、レンズで集めた光を、指先に乗るほど小さなCCDという受光素子で電気信号に変換する。しかし、X線で人体胸部の透視画像をデジタル撮影しようとすれば、レンズでの集光ができないので、人体胸部の面積と同じサイズのCCDが必要になる。そんなものは世の中に存在せず、仮につくったとしても、途方もなくお金がかかるものになってしまう。
 しかし、医療の他の分野ではデジタル化が加速しており、X線診断システムだけが乗り遅れるわけにいかなかった。その開発を任されたのが佐藤さんである。
「CCDに代わる大型サイズの受光装置が必要でした。そこで目を付けたのが、パソコンなどの液晶モニターに使われているTFTパネル。これを使えないかと考えた」
  TFTパネルというのは、電気信号を画像に変換する出力装置だが、それを逆に使い、画像(X線)を電気信号に変える入力装置にするということだ。TFTパネルなら、胸部を写すサイズを確保できる。
 X線を照射すると電荷を生じるアモルファス・セレンの層をTFTパネルの上に載せ、発生した電荷をTFTが受け取り、電気信号として取り出すという構造を考案した。しかし、それには大きな問題があった。
「弊社は医療用の診断システムを専門に開発してきた会社ですので、TFTパネルの技術がなく、アモルファス・セレンをTFTパネルに蒸着(蒸発させて積層させる技術)する半導体技術もなかったのです」
 専門外の技術を新たに自社開発するのでは時間がかかりすぎる。そこで、TFTパネルの技術を持つシャープと、アモルファス・セレンの蒸着技術を持つ山梨電子工業の3社で共同開発することになった。
主張がぶつかってケンカにも。問題を一つ一つ潰しながら……
 小型の試作品をつくったところ、理論に問題がないことがわかった。そこで、90年代後半からいよいよ製品ベースの9インチ角X線センサーの開発に取り組んだ。
「試作品は動作確認のためだけなので、蒸着層は数百μm程度の厚さで良かったんですが、製品ベースでは10倍の1oの厚さが必要でした。アモルファス・セレンを蒸発させて成膜し、1万Vの電圧をかけて撮影するのですが、何度やっても均一な層ができず、TFTの配線からノイズを拾い、思いどおりのものがまったくできなかった」
 同社の場合、製品開発にかける期間は通常2年程度だが、結果が出ないまま3年が経過していた。従来なら打ち切りになるところだが、その時期、会社を取り巻く環境が大きく変わりつつあった。外資系の医療診断機器メーカーが日本市場へ大攻勢をかけてきたため、同社は得意分野のX線診断システムに注力することを決めたのである。期せずして会社の将来を背負うことになり、いよいよ失敗が許されない状況になった。
「プレッシャーは大きいし、この頃になると、うまくいかない焦りから担当者同士でケンカになった(笑)。各社の技術課題を明確にして調整する必要があり、TETと蒸着層、それぞれの問題を検証して切り分け、一つ一つ潰していった」
  開発を始めて5年後の03年9月、世界初の直接変換方式フラットパネル・ディテクタが完成。新開発のX線センサーは200万画素に相当する高精細なデジタル画像を映し出し、動画にも対応できた。また、感度が高いのでX線の照射量を従来の2分の1〜3分の1にでき、患者の被曝量を減らすことにも貢献。さらに2年後には17インチ角のX線センサーの開発にも成功した。
「結果には必ず原因があります。人はいやなことから目をそらしたくなるものですが、原因が何かを謙虚に見つめなければ答えは絶対に見つかりません」
 まさに、執念の蓄積が実を結んだ。佐藤さんらが開発したX線センサーは臓器の血管や人体内部を映し出すX線診断機器に搭載され、医療の現場で活躍している。
ページTOPに戻るページTOPに戻る
その他の受賞メンバー(五十音順)
●島津製作所/鈴木悟
●シャープ/石井裕、山根康邦
●山梨電子工業/島和彦、吉留光廣
このWebサイトについて (C)2006 日本機械工業連合会