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TFTパネルにアモルファス・セレンの層を蒸着させた
フラットパネルX線センサー |
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| 島津製作所では医療システムや分析機器を製造している |
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| X線センサーは、各種X線デジタル撮影システムに搭載 |
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X線写真などに代表されるX線を使った診断システムは、19世紀末に発明されて以来、いまだにフィルム撮影が主体で、デジタル化が遅れていた。デジタル化できなかった理由は、X線にはあらゆるものが真っすぐ通過してしまう性質があり(それゆえに人体の透視撮影ができる)、レンズさえも通過して屈折集光ができなかったから。一般的なデジタルカメラでは、レンズで集めた光を、指先に乗るほど小さなCCDという受光素子で電気信号に変換する。しかし、X線で人体胸部の透視画像をデジタル撮影しようとすれば、レンズでの集光ができないので、人体胸部の面積と同じサイズのCCDが必要になる。そんなものは世の中に存在せず、仮につくったとしても、途方もなくお金がかかるものになってしまう。
しかし、医療の他の分野ではデジタル化が加速しており、X線診断システムだけが乗り遅れるわけにいかなかった。その開発を任されたのが佐藤さんである。
「CCDに代わる大型サイズの受光装置が必要でした。そこで目を付けたのが、パソコンなどの液晶モニターに使われているTFTパネル。これを使えないかと考えた」
TFTパネルというのは、電気信号を画像に変換する出力装置だが、それを逆に使い、画像(X線)を電気信号に変える入力装置にするということだ。TFTパネルなら、胸部を写すサイズを確保できる。 X線を照射すると電荷を生じるアモルファス・セレンの層をTFTパネルの上に載せ、発生した電荷をTFTが受け取り、電気信号として取り出すという構造を考案した。しかし、それには大きな問題があった。
「弊社は医療用の診断システムを専門に開発してきた会社ですので、TFTパネルの技術がなく、アモルファス・セレンをTFTパネルに蒸着(蒸発させて積層させる技術)する半導体技術もなかったのです」
専門外の技術を新たに自社開発するのでは時間がかかりすぎる。そこで、TFTパネルの技術を持つシャープと、アモルファス・セレンの蒸着技術を持つ山梨電子工業の3社で共同開発することになった。 |
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小型の試作品をつくったところ、理論に問題がないことがわかった。そこで、90年代後半からいよいよ製品ベースの9インチ角X線センサーの開発に取り組んだ。
「試作品は動作確認のためだけなので、蒸着層は数百μm程度の厚さで良かったんですが、製品ベースでは10倍の1oの厚さが必要でした。アモルファス・セレンを蒸発させて成膜し、1万Vの電圧をかけて撮影するのですが、何度やっても均一な層ができず、TFTの配線からノイズを拾い、思いどおりのものがまったくできなかった」
同社の場合、製品開発にかける期間は通常2年程度だが、結果が出ないまま3年が経過していた。従来なら打ち切りになるところだが、その時期、会社を取り巻く環境が大きく変わりつつあった。外資系の医療診断機器メーカーが日本市場へ大攻勢をかけてきたため、同社は得意分野のX線診断システムに注力することを決めたのである。期せずして会社の将来を背負うことになり、いよいよ失敗が許されない状況になった。
「プレッシャーは大きいし、この頃になると、うまくいかない焦りから担当者同士でケンカになった(笑)。各社の技術課題を明確にして調整する必要があり、TETと蒸着層、それぞれの問題を検証して切り分け、一つ一つ潰していった」
開発を始めて5年後の03年9月、世界初の直接変換方式フラットパネル・ディテクタが完成。新開発のX線センサーは200万画素に相当する高精細なデジタル画像を映し出し、動画にも対応できた。また、感度が高いのでX線の照射量を従来の2分の1〜3分の1にでき、患者の被曝量を減らすことにも貢献。さらに2年後には17インチ角のX線センサーの開発にも成功した。
「結果には必ず原因があります。人はいやなことから目をそらしたくなるものですが、原因が何かを謙虚に見つめなければ答えは絶対に見つかりません」
まさに、執念の蓄積が実を結んだ。佐藤さんらが開発したX線センサーは臓器の血管や人体内部を映し出すX線診断機器に搭載され、医療の現場で活躍している。 |
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