monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
東京都 更生 スパイラル SPR
東京都豊島区
足立建設工業(株)
秋元榮器(61歳)
常務取締役 東京都豊島区
足立建設工業(株)
秋元榮器(61歳)
常務取締役
老朽化した下水道管を、掘り起こすことなく新管同等によみがえらせる管路更生工法
世界で初めて、老朽化した下水管を掘り起こすこともなく、水が流れた状態のままで更生する「SPR 工法」を開発。下水管などの内壁に沿うかたちで、新規開発のプラスチック(塩ビ)の帯をスパイラル(らせん)状に張り付けていく工法。耐腐食性、耐摩耗性、対薬品性・掃流性に優れ、また、管の強度が上がるというメリットも。工事の際の交通への影響を最小限にとどめると共に、重機による騒音や排気ガス、掘り起こした時の残土や老朽管などの産業廃棄物の問題もなく、環境に優しいという点でも注目を集めている。98年には矩形渠(くけいきょ)、馬蹄形渠(ばていけいきょ)など、様々な形状の管の断面に対応する「自由断面SPR工法(自走式製管方式)」を開発した。
先手必勝、誰もやらないからやる。
何が欲しいのかを常に考えて、
失敗を恐れず常識にとらわれないこと
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Company Profile
足立建設工業(株)
http://www.adachi-tokyo.co.jp/
1966年設立。土木工事(上下水道)を専門分野として、様々な取り組みを続ける。業務を特化することで技術、人材共に高い専門性を有している。現在の主な業務は、老朽化した管渠(かんきょ)の補修・維持管理、地震災害対策など。現会長は、89年に設立された「日本SPR工法協会」の副会長を務め、工法の普及や技術向上などの活動にも尽力している。
帯状のプラスチックをスパイラル状に巻いた管。
これを下水管の中でつくっていく
帯状のプラスチックをスパイラル状に巻いた管。
これを下水管の中でつくっていく
プラスチックの帯は硬いが、柔軟な変形も可能。
自由断面への対応は、この帯があればこそ
プラスチックの帯は硬いが、柔軟な変形も可能。
自由断面への対応は、この帯があればこそ
空想と実現不可能なアイデア、その積み重ねが発明につながった
 下水道。重要なライフラインにもかかわらず目には触れない。普段、何気なく歩いている道路のほんの数十p下で、管のリフレッシュ工事が行われていても、気付くことはない。地面を掘り返すことも、流れる下水を止めることもなく、それができる工法。世界初となる「SPR工法」開発の先頭に立ったのが、自らを“ロマンを追いかける担当”と称する秋元さんだ。
「こういうことが必要だ、社会ニーズがあるという情報を会社が察知してね。で、これはうちがやらなきゃ誰もやらないだろうから、それなら先手必勝だと」
 きっかけとなったのは80年代前半、羽田空港の配水管の更生だった。飛行機の発着を止めることはできないから、滑走路や誘導路は掘り返せない。結局、この時は、欧州で実績を挙げていた工法で対処したが、日本の事情に合った管渠更生工法の研究・開発は、東京都下水道局を始め、関係機関の検討課題になった。
「当初は、プロジェクトじゃなかったねぇ。趣味みたいなもん、道楽(笑)。もう完全に空想というか、実現不可能なめちゃくちゃなアイデアばっかりで。それで特許取っちゃえとか言ってた(笑)。で、今の工法につながったのは、ブリキ のダクト管みたいに、ブリキの帯をスパイラル状に巻いていってパイプをつくるやり方ね。でも、下水道だから、ブリキじゃサビちゃうからダメ、ステンレスならサビにくいけど高すぎてダメ」
 下水管の中で、帯状の部材をスパイラルに巻いていき、管の内壁に密着させる。問題は、部材の素材。そんな時、秋元さんの耳に、積水化学工業がオーストラリアの企業からプラスチックの帯をスパイラル状に巻いて管をつくる技術を輸入した、という情報が入る。積水化学は独自に、この技術をベースにパイプの製品化を考えていた。
「それじゃ、プラスチックを使ってみようと。で、実験機と単純な構造の帯をつくってやってみたんだけど、巻いていくうちにどんどん太くなっちゃったり(笑)。で、テープを巻く時に引っ張りながら巻くと、きっちり巻けるってところから、油圧を使って引っ張る力を調整したりしてね」
  実験期を経て、秋元さんは共同開発の提案を東京都下水道局に持ち込む。追って、積水化学も同様に下水道局に提案。足立建設と積水化学、役者はそろった。
常に高い理想を追い求める。そこには経験も法則もない
 新しく創設された「東京都下水道サービス」が両社の技術を検証。最終的に機械施工は足立、帯は積水のものをベースにすることで合意、86年に研究会がスタートした。
「よくケンカしましたよ。プラスチックは硬質塩ビだから硬いんです。機械的に無理やり曲げるとパキーンと折れるし。当時の積水の製造担当者とかね、開発の人は、秋元さんの機械はスチールを巻く機械だ。プラスチック巻く機械じゃないとかね(笑)」
  割れる問題だけではない。プラスチックだけの帯だと自重でたわんでしまったり、形状を保てず丸まってしまうため、帯にスチールを入れたりと、秋元さんの帯への要求「こんなもん欲しい、あんなもん欲しい」は高まる一方。機械のほうも、86年の実験開始以来、簡単な現場から難しい現場へと場数を踏むごとに改善・改良が加えられる。双方の技術は現場で鍛えられ、現場で熟成していった。もちろん、そうした努力は、今も続いている。現在では、口径5000oまでの、ほぼどんな形状の管にでも対応できる“自由断面”にまで昇華されたSPR工法。だが、ロマンに終わりはない。
「理想は理想だから高く持たないと(笑)。ステップバイステップですね。現在は自走式で半自動化なんだけど、究極は完全自動で最終工程までできちゃうこと。人がマンホールの中に入らなくてもいいような。それと、満水状態での水中製管、施工だね」
  掘らなくて済む工法でやっているのに、掘り返さざるを得ない状況に追い込まれてしまうこともあった。それも今では笑い話。
「我々は、何か発想が出てくれば、あれやれこれやれ、試作機つくれ〜ってなる。コスト関係なくね(笑)。新しい何かを開発するには、経験とか法則とかも無視しなきゃダメな時もあるんです。理屈は後からくっ付ける。まず、かたちにしてみる。技術屋さんにとって金勘定は二の次だと(笑)」
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その他の受賞メンバー(五十音順)
●足立建設工業/内田広治、村木健二、山城浜夫
●積水化学工業/今川明、北山康、菅原宏、高谷明彦、渡辺充彦
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