monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
香川県 アクリルパネル 水族館 スクリーン
香川県三木町
日プラ(株)
中條 利史(57歳)
取締役工場長 香川県三木町
日プラ(株)
中條 利史(57歳)
取締役工場長
水族館の概念を変えた巨大アクリルパネル製作技術
ガラスより軟らかく、安全で、強度も高いアクリル。同社はこのアクリル素材を使った製品の製造・加工で高い技術力を誇る。02年にオープンした、沖縄美ら海水族館の巨大水槽「黒潮の海」の窓には、同社が製作した高さ8.2m、幅22.5m、厚さ60pのアクリルパネルが設置された。パネルを積層して厚みを出す接着技術、接着剤の硬化時に強度を増す熱処理技術、そして1枚20tのパネルを7枚、現場で接着し水槽の躯体に接合する施工技術。同社独創のノウハウがいかんなく発揮され、一本の柱もなく7500tの水圧に耐える巨大な窓が完成した。この製品は1枚のアクリルパネルとして、また水族館の窓として、世界最大であることが、ギネスブックによって認定されている。
観客を、まるで海の中にいるかのような気分にさせてあげたい。そんな思いから、世界最大のアクリルパネルの窓が生まれた
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Company Profile
日プラ(株)
http://www.nippura.com/index.html
1969年設立。翌年には、屋島山上水族館に世界初のアクリル製回遊水槽を納入。水槽を始め、様々なアクリル製品の製造・加工を行う。94年、モントレーベイ水族館のアクリル窓で、世界に知られる存在に。この分野の第一人者となる。世界40カ国以上で実績があり、日本でも大阪・海遊館や旭山動物園の白クマ舎などが有名。
表面を磨き上げられた大尺板。接着面は接着剤を流すと透明になるため、磨くのは積層後に表と裏になる2面だけでいい
表面を磨き上げられた大尺板。接着面は接着剤を流すと透明になるため、磨くのは積層後に表と裏になる2面だけでいい
研磨中のアクリルパネル。この研磨装置も同社鉄工部製作のオリジナル。軟らかいアクリルの研磨には、細心の注意が必要だ
研磨中のアクリルパネル。この研磨装置も同社鉄工部製作のオリジナル。軟らかいアクリルの研磨には、細心の注意が必要だ
何枚も積層していることが唯一わかるのが、断面。しかし正面から見るとまったくわからないから不思議
何枚も積層していることが唯一わかるのが、断面。
しかし正面から見るとまったくわからないから不思議
分厚く積層されたパネルを切断するための巨大丸ノコ。切り落とした端材はリサイクル用に海外へ
分厚く積層されたパネルを切断するための巨大丸ノコ。
切り落とした端材はリサイクル用に海外へ
寿司屋の活魚水槽に始まり、モントレーベイ水族館へ
 第3次水族館ブームといわれる今、水槽の窓は日々大型化し、かたちも多種多彩。それを可能にしたのが、飛躍的に進歩した透明なアクリルパネルの製造・加工技術だ。水族館ブームがきた時、建設を請け負った日本のゼネコンの担当者たちは、こぞって先行する海外の水族館の視察に出かけた。そして水族館の関係者に尋ねた。「この巨大なアクリル窓は、どこがつくっているのか?」。答えはこうだった。「それはあなたの国の“ニップラ”という会社ですよ」。
 中條さんはその“日プラ”の工場長だ。
「入社した当時はアクリルとか、そういう樹脂の出始めの頃。そのうち、お寿司屋さんとかにある活魚水槽、あれがブームになりましてね。枠を使わずアクリル板同士を接着してつくるのがうちの技術で、店に運び込んで設備工事までやるようになった」
 とはいえ、当時の売り上げの中心は、大手の下請けでつくっていたアクリル製の電球の傘だった。そんな矢先にやってきたオイルショック。アクリルの値上がりで需要が減ったうえに、下請けの同社には製品価格を上げることさえままならない。
「それでもう、下請けではダメだと社長が決心して、自分たちの力で水族館の水槽なんかを受注しようと営業を始めたんです。けれども日本では、誰も香川の中小企業なんて相手にしてくれません。そこで思い切って海外に活路を求めたわけです」
 その努力は、アメリカの由緒ある水族館、モントレーベイ水族館からの受注となって報われた。日プラの仕事は高く評価され、その名は海外で一気に広まったのである。
沖縄の美ら海(ちゅらうみ)が、客の眼前に広がるような窓を
 沖縄に建設される美ら海水族館から、目玉となる「黒潮の海」展示水槽の話がきたのは、01年のこと。設計図には何と、外枠の高さ8・2m、幅22・5mという、世界にも例のない超巨大な窓が付けられていた。驚く中條さんたちの前で、それを見た同社の社長はさらにすさまじいことを言った。
「観客には窓があることさえ忘れてほしい。まるで海の中にいるみたいな気分になれるよう、水と魚以外は視界から消せないか」
 それは途中に何の補強材も入れず、アクリル板の接着だけで窓をつくってしまおうということだった。この提案を受け、窓の周囲のコンクリート製の梁がより強度を増すべく設計変更された。香川の工場にはアクリルメーカーから縦8・5m×横3・5m、厚さ4pのパネルが続々と届けられた。
「うちで大尺板と呼んでる特注品で、ほかにこんなの使う会社はありません(笑)」
 この大尺板は届いた状態では凸凹して曇っているため、表面を磨く必要がある。まずは機械で、最終的には手作業で磨き上げると、次はそれを接着剤で積層して厚みを増す作業だ。美ら海水族館のパネルの厚みは、なんと60p。それには大尺板を十数枚重ねなければならない。その接着剤も同社独自のノウハウでつくられたもの。
「この接着剤を僕らは“シラップ”言うてるんですけど、張り合わせた後、圧力をかけないとシラップが縮むし、かけすぎるとヒビが発生する。圧のかけ加減が微妙なんです。あと硬化する時に温度が高いと発泡する性質があるんで、接着する環境は常に一定の低い温度に保つんですわ。ところが張り合わせた後は逆に温度を上げて湿気を取らないと、接着面が白く曇ったり、強度が出なくなってしまう。昔は無知で怖いもん知らずだったから、よく失敗したもんです。その積み重ねで安定したノウハウができて、今の若い者は平気でやってるけど、僕らは今、それを見ていて怖いのよな(笑)」
 この接着剤を流し込んだ面は磨かなくても透明になってしまう。だからピカピカに磨くのは積層した表と裏の2面だけでいい。しかも固まると、性質も強度もアクリルそのものとほぼ同化してしまうというスグレモノである。ただ、この作業中に一粒の気泡、一筋のキズでも入ろうものなら、十数枚積層したそのパネルはもう使えない。そうなると、損害額はベンツ数台分!
 こうして完成したアクリルパネル7枚が、沖縄に運び込まれた。最後の組み立て作業は水槽の中。50tのラフタークレーンで1枚20tのパネルをつり下げ、7枚を縦に “シラップ”でつなぎ合わせたのである。
「1枚になった透明な壁は、ジャッキでゆっくりと平行移動させました。そうして外枠にぴったりと密着させたんです」
 完成した水槽には7500tの海水が注ぎ込まれ、3頭のジンベエザメを始めとする無数の魚たちが、まさに黒潮の海の中のように群舞した。その迫力は、つくった中條さんたちさえ震えを覚えるほどだった。
あきらめず、こだわり続ける大切さ。次は前よりもっと進んだものを!!
 モントレーベイ水族館の受注が決まった時、何とアクリルパネルに36%もの関税がかかると聞き、社長は驚いた。あわてて日本の関係省庁にかけ合ったが「どうしようもない」と、相手にされなかった。
「そこで社長はアメリカ大使館に飛び込んで、何とかならんかと話をしたそうです。同情した大使館員がワシントンのお役人を紹介してくれた。すると『これはただの水の壁、アクアウォールではないか』と、ものの20分で2.7%になったそうです(笑)」
 こだわること、あきらめないこと、体を張って飛び込んでいけば先が見えてくる、という同社の社風は、技術面にも生きている。今、中東のドバイに向けて送り出されているアクリルパネルは、美ら海をしのぐ厚さ75p、1枚27t。 世界で認められたこの日本の中小企業は、今も香川の片隅で「もっと大きいもの、もっと素晴らしいもの」をつくり続けているのである。
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