monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
愛知県 アイシン からくり 設備
愛知県安城市
アイシン・エィ・ダブリュ(株)
池田重晴(59歳)
生産技術本部ものづくりセンター
センター長/工機部次長
STE(スーペリアテクニカルエキスパート) 愛知県安城市
アイシン・エィ・ダブリュ(株)
池田重晴(59歳)
生産技術本部ものづくりセンター
センター長/工機部次長
STE(スーペリアテクニカルエキスパート)
無動力搬送台車ドリームキャリー・
現代によみがえる「からくり」の技術
ゼンマイの力だけで動く、日本の伝統的なからくり人形「茶運び人形」にインスピレーションを得た無動力搬送台車を開発。電気や石油などのエネルギー資源、モーターなどのアクチュエーターを使わずに、載せる製品の重さとそれに反発するバネの力のみで稼働するところから、環境面での注目度も高い。本格的な研究開発は、03年に建設された「ものづくりセンター」で、池田さんを中心に行われている。現在、この仕組みを利用した製造装置や生産ラインの設計、また、池田流「モノ創り」を若いスタッフに伝えるなど、後進の育成にも力を入れている。“どうしてもモーターなどのアクチュエーターを使う場合は、必ず3つ以上の動作をさせる”。これが、ものづくりセンターの基本精神。
人との出会い、ものづくりの環境、
両方がそろっている器だからこそ、
技能を技術に仕立て上げられる
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Company Profile
アイシン・エィ・ダブリュ(株)
http://www.aisin-aw.co.jp/
1969年設立。自動車のトランスミッションなどを開発する駆動系、カーナビなどを開発する情報系、そして車載用・住宅用の空気清浄機などが主力製品。トヨタ自動車を始め、国内、海外の自動車メーカー、カーナビメーカーに採用されている。ものづくりセンターの入り口には豊田佐吉翁の「研究と創造」、現社長の「夢と感動」という、2つの言葉が刻まれたモニュメントが飾られている。
現場の環境改善が実を結び、
誕生したものづくりセンター
 母に楽をさせたい。そんな一途な思いが、画期的な発明を生み出す原動力になることがある。トヨタ・グループの祖、豊田佐吉翁が環状織機を発明したように、池田さんが開発した「無動力搬送台車ドリームキャリー」も、まさにそこが原点だった。
「父が病気がちだったもので、おふくろが農業から家のことまで一切合切をやってたんですね。農業用機械を買うお金はありませんでしたし。で、思ったのが、何かこう“からくり”でね、農作業や仕事を楽にしてやることはできないもんかなぁと」
 結局、実現はできなかったけれど、と残念そうな表情を見せる池田さん。しかしその思いは、21世紀になって、池田流「モノ創り」として開花することになる。少年時代の池田さんを虜にしたからくり。それは、お盆に載せたお茶をカタカタとかわいらしく運んでくる、茶運び人形だった。
「江戸時代のものですが、これが今の機械のもとになってるといいますかね。電気モーターなんて使ってないですから、無動力の思想なんです。
それと、ながらの思想。たと えば、豊田佐吉翁の織機。ひとつのモーターの動きを利用しながら、カムと組み合わせて布を織るシャトルを縦横無尽に動かす。〜しながら〜するという、つまり、何かひとつの動きを利用しながら、次から次へとほかの動きをさせていく。その動きは多ければ多いほどいいわけです」
 しかし、こんな池田さんの“無動力・ナガラ思想”が、最初から会社に受け入れられたわけではない。池田さんは生産ラインの現場で25年近く、環境改善の工夫、努力と共に研究も細々と積み重ねていた。
「設備が故障するでしょ。そうすると何にも手が出せない。それが悔しくてね。じゃあ、自分たちでつくっちゃおうと。そうすりゃラインで働く人たちだけで運営ができる。自分の城は自分で守ろうと」
 現同社社長が、池田さんの取り組みに着目し、設備投資の抑制とスペース・コスト2分の1を目標に、会社の事業として「ものづくりセンター」をつくったのは03年。
レバーを引くだけで動き出す「ドリームキャリー」。電気的な動力はいっさい使わない
レバーを引くだけで動き出す「ドリームキャリー」。
電気的な動力はいっさい使わない
断崖絶壁から生まれる“いいもの” 。
とてつもない夢と理想が道を開く
 センターに置いてある茶運び人形は、スタッフ育成のため、池田さんがメンバーに手づくりさせたもの。ものづくりセンターは、そういうところなのだ。
「会社のトップが先頭に立って、私の無動力・ナガラ思想を認めてくれてね。大きな器をつくるから、しっかり研究開発しろと。それが、ものづくりセンターなんです。技能を技術に仕立て上げるオールマイティーな人間の集団なんですわ、我々のチームは。自分で考えて、自分で加工したり、組み立てたり、全部する。こんなことができる研究所は、ここだけでしょう」
 だが、会社の事業になったことで“結果” という新たなプレッシャーが生まれた。
「人間はプレッシャーと言いますか、緊張感を絶えず持ち続けていかないと前進しないですね。いつも断崖絶壁にね、置いとくと。そうすれば、何かいいものができてきます(笑)。創造性がどんどんわいてきます。それに、注目されるほど燃えますね」
  入社以来、周囲の否定的な意見も、常に「叱咤激励だとプラスにとらえるようにしてきた」と笑う。現在、無動力・ナガラ思想の研究開発は、工場のライン一式をつくるまでにレベルアップしている。
「ドリームキャリーは、自分の夢の半ばくらいという感じですかね。最終的には、自動車と同じように動かしたいなぁ」
 もし、それが達成されてしまえば、その時の池田さんの夢は“空、飛べんかなぁ”に膨らんでいる。次から次へと柔軟に発想する、とてつもない夢と理想を描く。それが、池田流「モノ創り」なのだから。
「必ずしも名選手じゃなかったですけど、多くの人に私の考え方を、共感、共有化してもらって後世に残していければと。人間は絶対、潜在能力持ってますからね。若くても優秀な人は、いっぱいいますから。古い人間にはない若い人たちの良さ、時代背景を踏まえながらのものづくりは、いつの時代でも必要でしょう。人と巡り会うことと、その場を与えることが大切なんですね」
 現社長、そしてチーム。出会いなしにはドリームキャリーは生まれなかったかもしれない。池田さんは、素直にそう思っている。
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その他の受賞メンバー(五十音順)
太田博文、岡本隆雄、渋江利光、長坂雅博、渡邊信義
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