monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
沖縄県 甕仕込み泡盛 黒麹 もろみ酢
沖縄県西原町
(株)石川酒造場
石川信夫(70歳)
代表取締役社長 沖縄県西原町
(株)石川酒造場
石川信夫(70歳)
代表取締役社長
黒麹菌が生成するクエン酸が
主成分の「もろみ酢」の製造技術
近年の健康ブームの中、沖縄発の健康飲料として注目されているのが「もろみ酢」だ。沖縄の名産である泡盛の“酒かす”を絞って生産されている。泡盛の特徴は、仕込みに黒麹を使うこと。そのもととなる黒麹菌には、主にかんきつ類などに含まれるクエン酸をつくる力がある。クエン酸は@疲労物質である乳酸の生成を抑え、体をアルカリ性体質にする、A体内エネルギーを効率良く燃焼させる、B殺菌作用を持つ……といった効能があることで知られている。もろみ酢は、クエン酸に加え、アミノ酸やビタミン類も豊富に含む。同社は、このもろみ酢の製造方法をいち早く確立し、飲料の商品化と共に廃棄物ゼロも達成した。また、この生産技術に関する特許は取得せず、同業者の参入による市場規模拡大を展望している。
“うちなー(沖縄)の宝”もろみ酢で、
泡盛業界も沖縄経済ももっと元気になれるはず
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Company Profile
(株)石川酒造場
http://www.awamoriya.com/content/asako/ishikawa/
石川家は琉球王朝時代から酒づくりを営んでいたが、1949年、先代政治郎氏が首里寒川町で創業。沖縄が本土復帰した72年に、石川信夫さんが社長就任、翌73年から「もろみ酢」の販売を始めた。90年に工場を現在の西原町に移転、もろみ酢生産設備も新設した。沖縄で唯一、伝統的な甕(かめ)仕込み・貯蔵を貫く一方、昨年6月には国際規格「ISO9001」を取得、衛生管理などにも万全の体制を敷く。
甕に仕込まれた「もろみ」は、すくって口に入れると甘酸っぱさが広がる
甕に仕込まれた「もろみ」は、
すくって口に入れると甘酸っぱさが広がる
かつて使用されていた直火式の蒸留釜。釜の上部はなんと木製である
かつて使用されていた直火式の蒸留釜。
釜の上部はなんと木製である
「仕事」をするのは人間ではなく、黒麹
「どうです、“食べて”みませんか」。そう言うと、石川さんはズラリと並ぶ甕のひとつに近寄り、覆いを外して自ら「試食」し、うんうんとうなずいた。のぞき込むと、いっぱいに満たされた液体の表面を、米粒のようなものが一面に覆っている。それを指ですくい取り口に入れてみると、なんとも言えない酸味が広がった。甕の中身は、蒸し米に黒麹菌を加えてできた黒麹に、酵母と水を混ぜた「もろみ」。じっくり発酵させた後に蒸留すれば、沖縄特産・泡盛のでき上がりだ。
 ところで、本題の「もろみ酢」。泡盛とは別の工程で生産されると思い込んでいたのだが、実は、そうではないという。
「泡盛をつくった後に残る、いわば“廃液”を絞るだけ。だから私はなんら仕事をしていないも同然。働いているのは黒麹菌なんですよ(笑)」
 テレビの健康番組などに取り上げられたことからブームに火がついたもろみ酢だが、初めて発売されたのは73年のこと。石川さんが考案したものだ。
「泡盛業界にとって、『かしじぇー』と呼ばれる廃液の処理は、頭の痛い問題なのです。お金を払って引き取ってもらったり、豚に食わせたり。ところが、このかしじぇーを与えられた豚は元気で、肉質も良くなることがわかった。ならば人間の健康にとってもいいのではないか、と考えたのがきっかけなのです」
 とはいえ、今でこそ誰もが耳にしたことのあるもろみ酢。その後、長く「不遇」の年月を重ねる。
「製法は単純そのものだし、特許を取っているわけではないので、つくろうと思えば同業ならどこでもできる。でも、追随するところはありませんでした。みんな、とても売れるシロモノではないと考えていたんですよ。実際、ほとんど売れませんでしたねぇ(笑)」
 それでも、味や品質に改良を加え、積極的に展示即売会を開きと、懸命に市場開拓に取り組むうち、県内で徐々に愛飲してくれる人が増えてきた。将来性を確信した石川さんは、90年の工場移転に際し、もろみ酢の生産設備も“新調”する。だが……。
「しばらくは、やっぱり鳴かず飛ばず。機械を使うまでもなく、従来の手絞りで十分という状態でした」
泡盛+もろみ酢で1000億円市場構築へ
 手応えを感じ始めたのは94年頃。折からの「クエン酸ブーム」に乗って、注目を集めるようになる。そして98年の大ブレーク。大手メーカーを始めとする市場参入も相次いだ。しかしだからといって、石川さんは決して将来を楽観視してはいない。
「市場が広がるのはいいことですが、困るのは一部の業者が”売らんかな“の姿勢で、誇大広告などを平然と行っていること。こうした商品は消費者との信頼関係が特に大事ですから、由々しき問題です。1日も早くしっかりした業界団体をつくり、もろみ酢の正確な定義付けを実現したい」と力を込める。
「健康」は「観光」と並ぶ沖縄産業の柱。そういう意味でも、周囲の期待は大きい。
「泡盛の市場規模は、現在240億円程度。稲嶺沖縄県知事からは『1000億を目指せ』とハッパをかけられています。当面、泡盛単独では難しいかもしれませんが、もろみ酢を合算すれば、1000億円市場は十分可能ですよ」
 沖縄県経済に大きなインパクトを与えるパワーを秘めたもろみ酢のことを、「うちなー(沖縄)の宝」と表現する石川さん。「業界全体で切磋琢磨しながら、沖縄の代表的な産業に育てていく」という夢の実現は、そう遠い日のことではないだろう。
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