monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
大分県 着物 仕立て ロボット
大分県大分市
オープン アイ システムズ(有)
中本第一郎 (38歳)
代表取締役 大分県大分市
オープン アイ システムズ(有)
中本第一郎 (38歳)
代表取締役
和裁士の職人技を応用した
仕立てシステム
着物の製作工程の約3分の1の時間を占める「裁ち」の作業。柄を合わせて裁ち位置を決めるのには、熟練の技が必要で、ベテランでも4時間程度を要する。中本さんが開発した「タチ(裁ち)ロボット」は、顧客の身長などのデータを入力するだけで、オペレーターが画面上で柄合わせなどの作業を行うことができる。「完成予想図」を見ながらチェックするため、ミスは起こらない。スタートボタンを押せば、ロボットが切り・縫いのポイントに、自動的にマークを付けてくれる。作業時間を約40分と大幅に短縮したことに加え、仕上がりも美しいと評判だ。
僕の開発した縫製ロボットには、母の1級和裁士のノウハウが存分に詰め込まれている
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Company Profile
オープン アイ システムズ(有)
http://www.open-i-systems.com/
2004年設立。仕立てロボットの開発が主な事業目的。システムは、中本第一郎さんが専務を務める家業の縫製会社「フナイコーポレーション」に導入されているほか、すでに5社に最新型ソフトを販売。また06年4月からは、着物のネットショップも立ち上げる計画だ。
熟練の技が必要な裁断作業、それをロボットが代行
「日本一の孝行息子」。今回の受賞を報じた地元経済誌は、こう見出しを付けた。
「物心ついた時には、すでに父親の姿はなかった」という中本さんは、文字どおり、母の手ひとつで育てられる。大学で生産工学を学んだ後、あえて畑違いの証券会社に就職するが、これは「別の世界も見ておきたかった」から。というのも、いつかは家業である縫製業を継ごうと、心に決めていたからだ。
「子どもの頃から、この仕事に就くよう、母に洗脳されて育ちましたからね(笑)」
 証券マンを1年、京都の着物関係の会社で1年、そして29歳の時、故郷大分に戻り、母宣子さんが社長を務める縫製会社「フナイコーポレーション」に就職する。同社は、1級和裁士の資格を持つ宣子さんがおよそ40年前に設立。現在30名ほどの体制で、反物から着物を仕立てている。
 着物は、おおまかに言って裁断、ヘラ付け、縫いという工程を経てつくられる。このうち、特に熟練の技を要求されるのが、実は裁断。でき上がりを想像しながら反物に印を付け、ハサミを入れていく作業だ。左右の袖の柄がアンバランスといったミスは許されないから、作業は慎重の上にも慎重を期さねばならない。資格を持つベテランでも、両袖、身頃、襟など8つのパーツを切り出すのに優に4時間はかかる。あまりのキツさに、職人さんが次々に辞めてしまうほどだという。
 縫製工場を遊び場に育ち、小学5年生の時にはすでにプログラムを組むことができたほどコンピュータに通じていた「孝行息子」が考えたのは、IT(情報技術)を使ってこの工程をもっと楽にできないかということ。そうした発想から生まれたのが、着物仕立てシステム、愛称「タチ(裁ち)ロボット」なのである。
   
オペレーターが入力すれば、あとはロボット任せ。広げた反物の上をまたいで進みながら、正確に印を付けていく
オペレーターが入力すれば、あとはロボット任せ。
広げた反物の上をまたいで進みながら、正確に印を付けていく
最新のITを活用して伝統産業を活性化させたい
 このシステム、顧客の身長や腕の長さといったパーソナルデータを入力すれば、パソコンの画面上で柄合わせなどの作業ができる。約15mの長さの台に広げられた反物の上をまたぐように進むロボットが、その入力内容どおりに裁断・縫いの印を付けていく仕組みだ。あとは人間がそれに従って反物を切り、縫えばよい。
 その効果は絶大で、「タチロボット」を導入した同社は、4時間かかっていた裁断作業を40分にまで短縮することに成功。呉服店で朝注文すれば、夕方には着物になって届くという、考えられない離れ業を可能にした。人の勘に頼ることによるミスはなくなり、高い品質の着物を安定的につくれることも大きなメリットだ。
 システムの頭脳といえるソフト。その開発は、まさに母子二人三脚で取り組んできた賜物である。
「着物の“風合い”などに関しては、母の1級和裁士としてのノウハウを存分に取り込んで、練り上げました。でも、僕は着物のことをほとんど知らないし、母は母で、コンピュータやメカがわからない。ふたりがシステムについて話して
るのを周りが見たら、ほとんどケンカでしょうね(笑)」
「ここは、もうちょっとずらせないの?」「ちょっとって、何oだよ!」。こんなやりとりの末に、縫製業の現場を変える画期的なシステムは、日の目を見たのである。
 同製品の開発、販売を主な目的に、中本さんが04年に設立したオープン アイ システムズは、すでに同業他社へのソフト販売も手がけている。
「最盛期に比べれば縮小したとはいえ、市場は6000億円。最近は“和もの”を見直す動きも目立っていますし、着物が盛り返す可能性は十分あると僕は思っています。つくり手にとってもっとも熟練や時間を必要とし、リスクも大きい作業を合理化するのが、このシステム。これを普及させて、業界全体の活性化のお役に立てたら、こんなに嬉しいことはありません」
 このロボットを稼働させるためには、15m以上の空間が必要で、それでは導入できる事業所が限られてしまうと、現在、反物をローラーで巻き取る方式の“コンパクト機”を開発中である。伝統産業を最新のITでよみがえらせよう―。 “業界の孝行息子”のチャレンジは、まだ始まったばかりだ。
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