monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
静岡県 精密工房 表面実装機 マウンター
静岡県浜松市
アイパルス(株)
鈴木育雄(65歳)
生産グループ 技術指導員 静岡県浜松市
アイパルス(株)
鈴木育雄(65歳)
生産グループ 技術指導員
職人の卓越した技術と最新テクノロジーを
融合させた表面実装機
プリント基板(配線板)にICやチップなどの電子部品を搭載する表面実装機(マウンター)。その組み立ての仕上げに、手作業による表面加工法として約200年前から伝わる、日本の伝統技術「キサゲ仕上げ」と「ラップ仕上げ」を用いて、機械加工では得られない高精度の平面精度を実現。限りなく凸凹ゼロの平面を磨き出す、職人の卓越した技能・技術と、最新のテクノロジーを融合させた表面実装機を開発。高剛性・低振動構造フレーム、チップ/0.13秒という業界トップクラスの搭載速度と高精度を達成した。また、同社では社内だけでなく、協力会社にも技術の伝承を行い、後継者育成にも尽力。現在もさらなる精度極限を目指し、個々の顧客ニーズに応えた商品開発を行っている。
日々、創意工夫で向上を目指す。
全員の真剣な思いが結晶となって、
大手にマネのできない高精度が実現した
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Company Profile
アイパルス(株)
http://www.ipulse.co.jp/
2000年設立。前身の会社が債務超過となり、ヤマハ発動機からの出資を得て、社名新たに再スタート。表面実装機メーカーとして“個性ある会社”を再建目標に、商品開発と企業風土改革に取り組み、売り上げは3年間で倍増。社員数は約100名で、うち22名は会社新設6年間での入社だが、ひとりの退職者も出ていない。会社のモットーは「明るく 楽しく 真剣に」。
会社再建をかけて始まった高精度・自社製品開発への挑戦
 アイパルスは、実質上の倒産となった表面実装機メーカーの元社員72名とヤマハ発動機の3名とで、再起をかけて新たに設立された会社だ。それだけに問題は山積みだった。協力会社や顧客からの信頼回復、社員のモチベーションを上げて企業風土を改めること、そして経営再建。折しも設立した同年にITバブル景気が崩壊し、業界全体の需要は激減した。しかも、競合する同業他社は、上場している大手企業だった。
 様々な問題を抱えながら、最後発ブランドとしての挑戦が始まった。大手に対抗できる独自の商品開発を柱に、顧客ニーズに応える高品質な「精密工房」を標榜とした。その求心力となったのが、ものづくり40年のベテラン、鈴木さんだ。
「定年退職まで後4カ月という時期に、新しく会社を立て直すから手伝ってほしいと声をかけられました。定年後は遊ぶつもりだったのですが、経験が生かせる、やりがいがあると思って。59歳での転職だから、僕、この会社で一番年上なんです」
 同社の主要商品は表面実装機。これは、携帯電話やカーエレクトロニクスなどに使われるプリント基板に、チップなどの電子部品を搭載する産業用の精密機械だ。それだけに、高精度、高速化、高効率化が求められる。通常、精度を高める作業は主に初期の設計段階で行われ、多種多様な部品を組み立てる段階で生じてくる微妙なずれは、シムというかませを入れて調整する。だが、それではオーバーホールするたびに、元に戻す作業に労力もコストもかかる。そこで同社では、シムを入れる必要がないほどの高精度を実現するため、熟練職人による手作業で精度を上げる、伝統的な技法「キサゲ」「ラップ」を取り入れようと考えた。
「何というか、その当時は精密工房とは程遠い感じでした。いくら僕が、仕上げの段階で精度上げをしても、その前の段階での精度が悪いと、意味がないですから」
 つまりネジ1本、部品ひとつからして高精度でないと、仕上げに何時間もかかることになる。鈴木さんはまず、協力会社に部品加工の指導をすることから始めた。
 しかし、相手も職人。うちには従来のやり方がある、と抵抗されることも多かった。鈴木さんの要望に怒って、話の途中で帰ってしまった協力会社の役員もいた。しかし鈴木さんはあきらめず、腹を割って説得。後日、納品された部品は従来の100分の2の高精度に。鈴木さんの思いが通じた。
「タンカを切った役員さんもわかってくれた。恐れ入りましたって(笑)。いい製品づくりをと、自分たちだけではりきってもダメ。それぞれが一生懸命努力した結果、協力会社を含めたチームワークでできるものだから。同じ志を持たないと」
 社内の設計や生産部門のメンバーもはりきった。各セクションの努力と、鈴木さんが誠心誠意込めて手作業で仕上げる、その見事な連携により、従来の製品では30μm (1μm=1/1000o)だった平行精度が、5μm になった。会社設立半年後には、高速実装、振動の最小化、メンテナンス効率を飛躍的に向上させた初の自社製品を発表。その後も2μm に高めた製品を展開し、一台一台を丹念につくり上げる「精密工房」の名は、国内外の市場へ浸透した。
「精密工房」の名を誇りにさらなる極限を目指して進化
 鈴木さんは週に1回、社員や協力会社への技術伝承、指導も行っている。その名も「育雄道場」。キサゲ、ラップのノウハウから、職人ならではの道具づくりまで、匠の技能と知恵を惜しみなく伝えている。自身もさらに高い精度を追求しようと、より良い工法、工夫を常に考えているという。
「僕はまだまだ進歩したいし、それが職人根性かなと思います。ふざけたやり方だけはしてこなかった、ずーっとね。こんなものだと満足せず、ごまかさず、今はできなくても一生懸命取り組み創意工夫すること、それがものづくりには欠かせない。みんなもそういう気持ちだから、教えがいがあります。大手では真似できない製品を開発できたのも、ものづくりに対する真剣な、全員の思いの結晶でしょう」
 高精度を追求した商品開発が柱となり、会社再生、企業風土改革も成し遂げた。さらに極限を目指したものづくりをと、社員一人一人の輝く瞳が、そう語っている。
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