monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
広島県 化粧筆 伝統工芸 筆
広島県熊野町
(株)白鳳堂
本和男(65歳)
代表取締役社長 広島県熊野町
(株)白鳳堂
本和男(65歳)
代表取締役社長
伝統的毛筆技術を応用した新製品「化粧筆」を開発・提案
約200年の筆づくりの歴史を持つ町・広島県熊野町において、5代目の筆づくり職人として伝統技術を生かし、これまでにない肌触りで自在に化粧品を操れる「化粧筆」を開発。流通ルートと市場を開拓し、業界に一石を投じると共に、量産化のための創意工夫を重ね、本社内の自社工場で月産50万本、世界シェアで約60%を占めるに至った。大手化粧品メーカーのほとんどにOEM供給(相手先ブランドで販売される製品を生産)しており、世界中で愛用されている。さらに、筆メーカーとしては、いち早く自社ブランドを育成。インターネット販売・直販に取り組んだ先駆者でもあり、その製品は日米欧各国で固定客を着実に増やし続けている。
守り・貫き・こだわるべきものは何か。
逆境にめげず高品質を追求したこと、
それが業界革新への第一歩だった
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Company Profile
(株)白鳳堂
http://www.hakuho-do.co.jp/index.html
1974年設立。本和男さんが家業から独立し、創業。「筆は道具である」をポリシーに、化粧筆、面相筆・陶磁器筆などの伝統工芸筆、書道筆、画筆、工業用筆を製造販売。82年から化粧筆の自社ブランドを開発。95年にカナダの化粧品会社MACと直接OEM契約した後、知名度が広がり、現在は約70社にOEM供給している。筆を始め、日本の伝統工芸と道具文化を伝承すべしと、03年から季刊誌も出版。
メイクのプロへ直談判を繰り返し、直販体制への20年がかりの戦い
 世界で人気のMAC。コンピュータやハンバーガーではない。プロのメイクアップアーティストから一般ユーザーまで、幅広いファンを持つカナダの化粧品会社MAC(メイクアップアートコスメティックス社)のことである。そのMACの化粧筆を製造しているのが白鳳堂だ。だがそれまで、創業者の本さんは戦いの連続だった。
「創業当時の筆業界はどこも下請けで、卸業者から一度に大量注文される時もあれば、暇な月もある。収入も労働時間も不定で、従業員に責任も感じる。価格競争も厳しい、資金繰りも毎月苦しい、そんな時代でした」
 化粧パレットのおまけではなく、高品質な道具としての筆でじかに勝負したい。しかし、試作品を持って化粧品会社へ出向いても門前払い。複雑かつ固定化した化粧品業界の流通構造に阻まれた。専門誌を調べては、プロのメイクアップアーティストを訪ね直談判を繰り返した。品質は素晴らしいと認めてくれるが、量産は無理だろうと相手にしてくれない。自社ブランドをつくった

が、一部のプロだけが知る存在だった。
「プロの方が愛用の道具箱を見せてくれましてね、すべてウチの筆。嬉しかったです。でも、狭い業界なのでいろいろありまして。下請けが大企業に直談判する、自社ブランドだ、なんて日本では前代未聞でしたから」
 ある日、新幹線の中で読んでいた雑誌に、ニューヨークで活躍中の日本人メイクアップアーティストの記事を見つけた。ちょうど留学中だった甥に、「探し出してくれ」と頼み、自慢の筆を携えて渡米。その人は高品質さに感激し、カナダに面白い化粧品会社があると教えてくれた。今度はカナダに住む友人に「所在地を探してくれ」と電話で依頼。「カナダっていっても広いんだよ」との返事から1カ月後に判明、トロントのMAC本社へ直談判に乗り込んだ。
「社長はメイクアップアーティストでしたから、品質はすぐにわかってくれました。でも、できるのか?と聞くんです。ここにつくってきてるじゃないかと(笑)」
 ついに卸業者を介さず、じかに化粧品会社とのOEM供給が実現した。

かみそりを当てながら指先の感触で品質の劣る毛を取り除く伝統技術。全工程で繰り返され、良質な毛だけで整えられた肌触りも抜群な“化粧筆”となる
かみそりを当てながら指先の感触で品質の劣る毛を取り除く伝統技術。全工程で繰り返され、良質な毛だけで整えられた肌触りも抜群な“化粧筆”となる
伝統技術を生かして創意工夫。80種類超の工程に細分化&道具化
“均一な品質で多種な化粧筆を量産する”、この問題をクリアしたのは機械化ではない。伝統技術を応用した、工程の細分化と道具化だ。「毛先を切ってそろえるのはブラシであって、うちのは筆」の言葉どおり、毛先を切らずにそろえる丹誠込めた手作業。指先の感触で逆毛やすれ毛を選別して取り除く熟練技もそのひとつ。これは全工程で繰り返され、完成時には初めの3〜5割の毛が捨てられるが、それだけ徹底した高品質となる。毛先を球面にする整穂の工程では、コマと呼ぶ手づくりの木の筒を工夫した。
「もう少しこうならんかと、つくった道具や工夫ばかり。手作業に没頭していると不思議と思い付く、その積み重ねです(笑)」
 自社ブランドはすべて本さんが検品する。作業現場へ顔を出さずとも、筆を見れば、担当者の体調や心模様がわかるという。それほど筆とは繊細で、職人の魂が宿る。
 代々続く筆職人の家に生まれ育った本さんだが、兄が継いでいたため、大学卒業後は中学生からの夢だった建築会社に就職。ところが1年後、家業が忙しくなり手伝うことに。徐々に業界の現状に疑問を抱き始め、数年後、伝統技術と高品質な筆づくりを守りたいと、独立したのだった。
「日本人は、ものづくりのDNAがあると思うのです。だが、つくるだけが仕事じゃないし、仕入れたり、売らなきゃならん。製品化して世界を相手にする、そういう広い意味で日本人はものづくりに向いている。それをどう生かすか。たとえば会社でも、入ったらその仕事をとにかく好きになること。すると、いろいろ考えるし、問題点も見えてくる。それが始まりだと思うんです。この仕事で自分がどうありたいか、どうつくるか、業界に問題を感じるなら打破するにはどうすべきか。仕事を好きになることは誰にでもできる、特別なものはいらないですよ。ワシなんかも実家に戻れと言われて、へいへい戻ってきたんだから(笑)」
 最近は、日本の伝統工芸と、それと共に発展した道具文化を守り継がねばと危惧している。問題を感じたら自分で動いて切り開く。生涯現役、本さんの挑戦は続く。
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