世界で人気のMAC。コンピュータやハンバーガーではない。プロのメイクアップアーティストから一般ユーザーまで、幅広いファンを持つカナダの化粧品会社MAC(メイクアップアートコスメティックス社)のことである。そのMACの化粧筆を製造しているのが白鳳堂だ。だがそれまで、創業者の本さんは戦いの連続だった。 「創業当時の筆業界はどこも下請けで、卸業者から一度に大量注文される時もあれば、暇な月もある。収入も労働時間も不定で、従業員に責任も感じる。価格競争も厳しい、資金繰りも毎月苦しい、そんな時代でした」
化粧パレットのおまけではなく、高品質な道具としての筆でじかに勝負したい。しかし、試作品を持って化粧品会社へ出向いても門前払い。複雑かつ固定化した化粧品業界の流通構造に阻まれた。専門誌を調べては、プロのメイクアップアーティストを訪ね直談判を繰り返した。品質は素晴らしいと認めてくれるが、量産は無理だろうと相手にしてくれない。自社ブランドをつくった |
が、一部のプロだけが知る存在だった。
「プロの方が愛用の道具箱を見せてくれましてね、すべてウチの筆。嬉しかったです。でも、狭い業界なのでいろいろありまして。下請けが大企業に直談判する、自社ブランドだ、なんて日本では前代未聞でしたから」
ある日、新幹線の中で読んでいた雑誌に、ニューヨークで活躍中の日本人メイクアップアーティストの記事を見つけた。ちょうど留学中だった甥に、「探し出してくれ」と頼み、自慢の筆を携えて渡米。その人は高品質さに感激し、カナダに面白い化粧品会社があると教えてくれた。今度はカナダに住む友人に「所在地を探してくれ」と電話で依頼。「カナダっていっても広いんだよ」との返事から1カ月後に判明、トロントのMAC本社へ直談判に乗り込んだ。
「社長はメイクアップアーティストでしたから、品質はすぐにわかってくれました。でも、できるのか?と聞くんです。ここにつくってきてるじゃないかと(笑)」
ついに卸業者を介さず、じかに化粧品会社とのOEM供給が実現した。 |