monodzukuri 第1回「ものづくり日本大賞」 HOMEEnglish
受賞者たちの熱きドキュメント
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世界の先端をつくるプロフェッショナルたち伝統を受け継ぎ進化するプロフェッショナルたち
東京都 減速機 小型成形機 ホットランナー
東京都品川区
(株)新興セルビック
竹内 宏(59歳)
代表取締役 東京都品川区
(株)新興セルビック
竹内 宏(59歳)
代表取締役
廃材ゼロの卓上超小型射出成形機
均質な製品を量産するのに不可欠な金型製作技術。同社は、この金型の設計・製作だけでなく、金型に関連した様々なアイデア製品を生み出してきた。その集大成ともいえるのが、今回受賞した超小型の射出成形機の開発だ。設置スペースは、実にA4判のノートパソコンサイズ。この“モバイルファクトリー”の実現は、大型、重量、コスト高といった、これまでの金型・成形機の常識をことごとく覆した。加えて、必要な部分だけに樹脂材料を使用する「廃材レス化」をも実現。省資源、省エネ、省スペース、省物流コストなど得られるメリットは計り知れない。「大量に均質の製品ができれば、成形機はどんなかたちをしていてもいい」という、既成概念にまったくとらわれない発想の連続が、この画期的な製品開発につながった。
あり得ないとされてきた金型・成形機の
超小型化に成功。発明に必要なのは、
常に現状を否定する視点と冒険心である
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Company Profile
(株)新興セルビック
http://www.sellbic.com/jindex.html
1987年設立。前身は、竹内宏さんが父親と共に創業した新興金型製作所。創業後しばらくは順調だったが、85年からの急激な円高によって状況は一変した。多くの町工場が廃業に追い込まれる中、同社は独自性のある製品を次々に開発し、自ら市場をつくり出す「発信型工場」への転換に成功、その強さを発揮している。
まんがで読む
【数々の“発明”が凝縮】
 今まで、あり得ないとされてきた金型・成形機の超小型化に成功するまでには、17年間という長い歳月を費やしている。それも一発の開発ではなく、数々の要素開発の積み重ねによって誕生したものだ。まず挙げるべきは、竹内さんが開発した「ユニット金型」(同社の開発製品第1号)。そもそも金型というものは、部品1種類に対してひとつの型が必要になる。要は、成形品ごとに型と枠が一体になった金型を用意し、その都度、プラスチック成形機に付け替えるわけだが、これには大変な時間と労力がかかっていた。この型と枠を分離させ、脱着式にしたのがユニット金型である。型の部分をソフトとして、枠の部分をハードとして考えたもので、いわば、テレビゲーム機の本体とゲームソフトのようなものだ。これによって付け替え自由、時間は大幅に短縮され、何より金型の小型化に成功した。
 次が、10年ほど前に成功した「スクリューの平面化」。成形機の中にある、素材を押し出す働きをするスクリュー(らせん状に羽根が付いている鉄の棒)のかたちをまったく変えてしまったのだ。従来の概念を取っ払い、平面化したことで今まで誰も思い付かなかった射出成形機が誕生。これが“小型化”に、またひとつ大きく貢献した。
 そして、98年に独自開発した「ホットランナー」。従来のプラスチック成形機には金型までの間に通路があって、この部分に残る固まった樹脂はすべてムダになっていた。この通路を温めるホットランナーを搭載することで、“廃材レス化”を実現。生産性は2倍に上がり、もちろん省スペース化も。こういった一つ一つの竹内さんの“発明”が集結して、この画期的な卓上超小型射出成形機が生まれたのである。
【驚きの特許数。ざっと130!】
 同社の最大の転機は、前出の「ユニット金型」を売り出した87年。大企業に言われるままの“受け身”のものづくりではなく、この開発を皮切りに、自ら発想し、自らマーケットを生み出していく“発信型工場”へと脱皮した。以降、同社が開発してきた技術・アイデア製品は、なんと56件(05年8月現在)。年間に約3件というペースだ。さらにすごいのは、130近くもの特許を持っていること。従業員わずか13名の町工場ながら、実は知る人ぞ知る大変な存在なのである。
【技術者集団「アイデア工房」】
 竹内さんは、自分のアイデアを論文にもして積極的に発表しているが、この場を介して、他社の技術者や起業家、大学教授などといった、いろんな情報交換をする仲間が集まってきた。そのチーム、名付けて「アイデア工房」。メンバーは60名ほどで、常に新製品開発に関するアイデアを出し合っている。異業種ならぬ“異能種”集団で、広く社会に役立ち、世の中を豊かにするものづくりを純粋に追求する。業種・業態、立場を超えた、こんな素敵なエンジニア集団が日本には存在している。
【金型いらずの工法?!】
 金型屋さんである同社が、こともあろうに「金型なしでモノをつくろう」と提案・発表したのが「P・プロセス」という新工法だ。自分たちの生業を否定するところから発想した開発で、ある意味究極の、金型・成形機いらずの製品づくりを実現したのである。構造としては、溶かしたプラスチック樹脂を、まるでアメのように棒に積み上げて固め、それを工作機械が削り出して製品をつくっていくもの。これで、材料さえそろえば、金型なしで最終の製品化まで一挙にできる。しかも、今まで90%以上が切りくずになっていた材料が大幅に節約できるという優れた工法で、これまた業界を驚かせた。
【真のものづくりを】
 何かおかしいんじゃないの?と、常に現状を否定する視点と、あくなき追求心、そしてほんのちょっとの冒険心が大事だと竹内さんは言う。今、取り組んでいるのは、大幅な省電力化、効率アップを実現する減速機の製品化だが、頭の中はいつもアイデアだらけ。「ちょっとした不都合やトラブルを解決しようとアイデアを凝らすうちに、どんどん思い付く (笑) 。ものづくりの最初から最後までわかってるからね、どんな部品も工程も自分たちで開発できる。お金では買えない真の開発、これが僕らの競争力」との言葉がカッコいい。
本体サイズは、高さ12cm×幅29cm×奥行き12cm。
一見して、これが射出成形機とは信じられない
本体サイズは、高さ12cm×幅29cm×奥行き12cm。
一見して、これが射出成形機とは信じられない
右が従来のスクリュー。これを丸い平面状にしたことで、
一気に小型短縮・高能力化に成功
右が従来のスクリュー。これを丸い平面状にしたことで、
一気に小型短縮・高能力化に成功
「P-プロセス」でつくった携帯電話のカバー
「P-プロセス」でつくった携帯電話のカバー
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