2012年 年頭所感
一般社団法人 日本機械工業連合会
会長
伊 藤 源 嗣
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様におかれましては、お気持ちも新たに新年を迎えられたことと存じます。
年頭にあたり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様の暖かいご指導とご支援に対し、心より御礼申し上げます。
昨年は3月に未曾有の大災害となった東日本大震災が発生し、被災地は勿論、我が国経済にも大変深刻な苦難をもたらしました。現在、被災地においては、関係各位の献身的なご努力により、復旧・復興に向けての歩みが着実なものとなってきておりますが、他方では今回の震災関連の被害が甚大であったため、未だに不自由な生活を余儀なくされている被災者の方々や、事業活動の再開に困難を抱える企業の方々も、多々居られます。そうした方々の一日も早い復旧、更には復興を、心より念願する次第であります。
さて、我が国経済は、東日本大震災で寸断されたサプライチェーンの復旧に伴う生産の回復や震災の復興需要などにより、昨年7-9月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比1.4%増、年率換算では5.6%増と1年振りにプラスとなりました。しかし、欧州の財政金融危機を契機とした世界経済の減速、歴史的な円高、エネルギー不安、タイの洪水など懸念材料も多く、景気の先行きが未だ不安視されております。政府におかれましては景気が再び悪化せぬよう、円高対策や第三次、第四次補正予算の早期執行など、確固たる対応を早急に講じて頂きたいと思います。
近年、我が国を巡る経済社会環境は、急速な少子・高齢化による人口減少が進む一方、新興諸国も加えたグローバル競争が激化するなど、非常に厳しい状況が続いております。これらの困難を乗り越え、今後の我が国の繁栄を確保するためには、政府、企業、国民が一丸となり、諸課題の解決に全力で取り組んで行く必要があります。政府には新成長戦略を早期に確実に実行するとともに、持続可能な社会保障制度の構築及び中長期的な財政健全化のために「社会保障と税の一体改革」を実現し、国民が安心できる社会システムを構築することが期待されています。
一方、企業には産業活動を活発化し、輸出の増大、国内産業の振興と雇用の確保を図ることが求められています。しかし、我が国の事業環境には、円高、突出した法人税、労働面や環境面の規制、経済連携の遅れなど、国内においてものづくりを続けていく上で大きな障害があります。これらが早急に改善されなければ、国内の生産や雇用、技術が丸ごと海外へ流出してしまう「好ましくない海外展開」が広がっていく心配があります。我が国企業が国の内外において対等な条件で海外企業と競争を行うことができるよう、国際水準の事業環境整備を早急に進めることが重要と考えます。
機械工業は我が国産業の中核として、未曾有の大震災からの復興を先頭に立ち推し進めるとともに、今後の活力ある経済社会実現の牽引役とならねばなりません。その実現のためには、我々企業はイノベーションによる新技術や新製品の開発、コストの削減、機械の安全性や省エネの徹底などにより、他国製品とは違う、国際競争力に秀でた製品を作り上げるとともに、世界各国を市場として、また、生産基地として、厳しいグローバル競争に打ち勝つ戦略を構築し、実践していくことが重要であります。優秀な人材の育成はその課題解決の鍵であり、国を挙げて取り組む必要がありましょう。機械工業はこれまで幾多の苦難を乗り越えて来ました。難局に直面した時にこそ、日本企業の底力が発揮できます。非常に厳しい道のりとなりますが、今回の困難も我々はかならず克服できると確信しております。
困難が続く中ですが、朗報もあります。我が国はTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉に参加することとなりました。世界で最も成長が期待されるアジア太平洋地域の需要を取り込むことは、我が国の活力ある経済成長の確保に欠かすことが出来ず、今回の政府の決定は国益を重視した的確な対応であったと思います。これを契機に日中韓FTA(自由貿易協定)や東アジアでの広域貿易圏構想も動き始めており、自由貿易は我が国成長の源泉であるため、その早期実現が非常に重要と考えます。また、先月のCOP17(国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議)では京都議定書が延長され、2020年に新たな法的枠組みを発効させることで合意されました。地球規模の問題である温暖化への対処は、世界全体で当たるべきであり、その体制への道筋がようやく付いたと申せましょう。我が国は議定書延長には参加せず、自主的削減努力を行うこととなりましたが、温暖化防止に対する取り組みは技術革新を生み、経済の成長を促す面もあり、積極的に臨むことが産業界にとって重要と思います。
一方、法律面では改正労働者派遣法で検討されていた「製造業派遣の原則禁止」が見送りとなりました。雇用の流動性確保に繋がるものであり、労働規制の足枷の一つが取り除かれ、雇用確保の面で中小企業も含めた企業経営に好影響を及ぼすものと予想されます。
日本機械工業連合会では、我が国機械工業の競争力を維持、発展させていくための課題に鋭意取り組んでおります。本年も、若手理数系グローバル人材の育成・教育調査、ドイツ機械工業連盟と協力した模倣品対策調査、機械の安全対策や標準化、レアメタル等の代替材料技術の開発など、会員各位の企業経営にとって密接なテーマを取り上げ、調査研究を進めるとともに、税制面での改善方策など機械業界の事業環境改善に向けた要望や政策提言などを行って参ります。
皆様には大変厳しい事業環境が続く中、ご苦労が多いことと存じますが、日本機械工業連合会は、新たな時代に求められるニーズに対応し、皆様と産業界の利益のために誠心誠意努力を続けたいと存じます。皆様の一層のご活躍とご健康を心から祈念申し上げます。
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