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講演会

日機連講演会『セーフティ・システム・インテグレーション の
普及と定着に関するシンポジウム』を開催

 

日機連は、平成23年2月23日 (水)に東京証券会館ホール(中央区日本橋茅場町)において「機械安全」に関する講演会『セーフティ・システム・インテグレーションの普及と定着に関するシンポジウム』を、機械および電気機械の製造業を中心とする約220名の多数にのぼる参加を得て開催した。

本講演会は、日機連の機械安全推進特別委員会(委員長・栗原史郎一橋大学大学院教授)の下に標準化推進部が進める「機械安全」普及活動の一環として企画・立案され、実施したものである。

講演会開催の背景、趣旨は以下である。

生産技術の発展により、製造業において生産に使用する機械設備等は、より高度化されてきており、それに伴い複雑さも高くなってきている。複雑さが高くなるほど、機械設備が潜在的に保有するリスクも高くなると考えられる。また、複数の機械設備を組み合わせ、連携させて使用する生産設備も多く利用されてきているため、その点からも設備が持つリスクは、より高くなってきているといえる。それらのリスクを低減し、設備の安全性を確保するためには、リスクアセスメントを正しく行うことが必要とされる。

複数の複雑な機械設備の導入を企画し、工場に設置し、稼動させ運用していくには、機械メーカ及び機械ユーザがそれぞれの立場から関与する他に、設備全体をシステムとしてインテグレーション(統合)する役割の職務者あるいは組織(システムインテグレータ)が必要であると考えられる。設備のリスクアセスメントは、そのシステムインテグレータの役割として実施することが最も効果的と考えられが、我が国におけるその実態は把握されていない。

そのため、日機連では、我が国におけるシステムインテグレータの実態を調査した。これらを基に、設備安全の推進に向けて「セーフティ・システム・インテグレーションの普及と定着に関するシンポジウム」を開催することとした。

 

〔講演会概要〕
冒頭に、主催者を代表して日機連標準化推進部長川池襄のご挨拶に引き続き、下記三題の基調講演を実施した。

〔基調講演〕
1.『ユーザー目線とメーカー技量の橋渡し』 (PDFファイル122KB)(禁無断転載)
 栗原史郎氏 一橋大学大学院 商学研究科 教授 (日機連「機械安全推進特別委員会」委員長)

安全に関して、いい会社とは?

  1. 安全に関する理念や方針を社内外に明示
  2. 従業員全員やその他のステークホルダーに働きかけ、理解を深める
  3. 全員参加で安全活動を推進する経営システム(PDCAサイクル)を回す
  • 安全に万全を期す会社(安全万全企業)
  • これまでは、安全神話企業が多かった

インテグレーションとは何か 

  • 語源は、integer(整数)
  • Integrity とは、健全、完全、無欠
  • したがって、インテグレーションとは、「すき間を埋めて完全にする」という意味
  • すなわち、単体機械を集めただけでは残留リスクの足し算になるだけだが、ユーザーのニーズにふさわしいトータルな安全設計を新たに行い、生産システムの全体最適を図る

安全を欠けば不完全

  • 安全はユーザの要求のすべてではないが、安全を欠けば完全とはいえない
  • ユーザーの目線とメーカーの技量を組み合わせると、より完全に近づける
  1. ユーザーの要求事項を
  2. 仕様書として表現し
  3. それを基に、設計図面を作成

モノの安全から場の安全へ

  • 安全の対象が、モノとしての単体機械から、それらが組み合わさった設備になると
  • たくさんの関係性が重なり合った「場」の安全性が問われる
  • たとえば、機械/機械/部品/作業者の相互間に特有の関係性が生まれ
  • それぞれのインターフェースの安全が問題
  • 単体機械の設計変更も求められる

安全万全社会への文化革命

  • これまでの安全神話社会と決別し
  • 安全に万全を期す社会に転換することが必要
  • そのためには、作業環境や日常生活環境の隠れた危険を鋭敏に感じ取り、それを他者に伝え、対策が講じられるように協働することが必要

以前には、「安全は言わぬが身の安全」という言葉があったが、これからは、「安全は言わぬが身の危険」ということでやっていって欲しい。

 

2.『設備の安全確保におけるシステムインテグレータの役割に関する調査』 (PDFファイル881KB)(禁無断転載)
 美濃良輔氏 (株)三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部 研究員

日本におけるシステムインテグレータの実態調査として、自動車生産ライン、食品生産ライン等の構築に関して、どのような立場の組織が、生産ラインシステムの安全確保の取り組みに関与しているかについて、ヒアリング調査を行った。

ヒアリング調査先は、機械ユーザの生産設備部門、生産設備エンジニアリング企業、ロボットインテグレータ企業、米国の建設・設備エンジニアリング企業の選定企業である。

日本における生産ラインシステムのインテグレータの実態として、業界、会社規模、生産ラインの規模等によって様々である。

  • 機械ユーザの生産技術部門が行うケース
  • エンジニアリング会社が一手に請け負うケース
  • メインコントラクターである機械メーカが全て行うケース

いずれのケースにせよ、役割と責任を自覚しインテグレートする組織がインテグレータと考えられる。
生産ラインシステムの安全性に関する課題としては、以下が挙げられる。

  • 我が国においては、設備の安全に対する取り組みの水準が、会社規模、経営者の考え方、生産ラインシステム構築担当者の能力に依存している。
  • 企業間の安全に対する意識、取り組みの格差が生じている。また一方で、その差を縮める即効性の高い解決策も存在しない。
  • 「安全は当然」という意識から活動が着目されていない。また、安全に関する活動がボランティア的になっている。

生産システム全体としての安全性向上を推進するために、以下が必要とされる。

  • システムインテグレータの役割と価値の認知度向上。
  • セーフティインテグレーションの定着と普及。
  • システムインテグレータはセーフティもインテグレートすることを、認知させる必要。
  • セーフティインテグレータとして安全をリードするための専門人材の活性化と活用。

3.『統合生産システム(IMS)における安全設計手法の提案』
− Vモデルに沿った規格要求事項の明確化 −
(PDFファイル1,854KB)(禁無断転載)
 木下博文氏 平田機工(株)技術本部 システム開発部 グループマネージャ
 (日機連ISO/TC199委員、統合生産システム(IMS)WG主査)

この度、日機連の「統合生産システム(IMS)WG」の一つの成果として、(独)労働安全衛生総合研究所研究誌に本題名の論文を投稿したので、これを紹介することとする。

『統合生産システム(IMS)における安全設計手法の提案』− Vモデルに沿った規格要求事項の明確化 − を提案する趣旨は以下である。

  • ISO11161 は単体機械の安全性に関する標準ではなく、複数の機械を組み合わせた統合生産システムの安全性を定めた標準である。ISO11161 は2007 年にIMS(統合生産システム)に対する国際規格として発行されたが、様々なインタフェースの規定など統合生産システムの安全性を規定する標準として必要な要件が欠けており、そのままでは現実的に使用できるレベルではなかった。
  • この標準が市場で使用されるようになるためには、ISO11161 において欠如した要件を追加するか、この要件をまとめた他の文書を作成して補うことができるアプリケーションガイドのようなものが必要であった。
    このため、社団法人日本機械工業連合会では、この問題を検討するために「統合生産システムWG」 を発足させて調査・研究を進めてきた。
  • 本資料は、以上の検討を踏まえソフトウエアの品質管理モデルであるVモデルに沿って、規格要求事項を各設計フェーズ及び評価フェーズに階層分けして明確化する方法を提案するものである。
  • 本WGでの現状認識及び経緯は以下である。
  • 本では、この規格が新たに持ち込んだIMS 特有の概念、すなわち制御範囲(Span of control) と タスクゾーン(Task zone) の関係などに特に焦点を当て、実使用へと展開することを目標に調査研究を行っている。
  • これまでの安全確保のためには、機械システム内を全て一括で停止させる安全の考え方が基本であった。これに対し、ISO11161 は、この考え方を一歩先に進め、生産性を考えながら機械システム内の停止を実施し、停止しない部分の安全をリスクアセスメントに基づき決定して行くことに言及した規格である。
  • 本WGでは、まずインテグレータ(定義については次章参照)の存在の認知度の低さあるいはインテグレータ自身の国際規格対応能力に問題があると考えた。
  • たとえば、ロボットや金属加工機などの単体機械の分野では、様々な製造者の海外進出と同期して、積極的に国際規格対応を行う日本の製造者も増加し、それらの企業はグローバルに活躍している。
  • これに対し、IMS の領域においては、安全規格の内容の理解度が低いために、IMS の安全設計に関しては機械の使用者側の言うなりに設計・施工しているか あるいは 安全設計の部分を排除し、IMS の機能面のみの設計施工を行っているというケースが目立つ。
  • さらに、国際規格への対応が出来ないために、海外への進出を取りやめたといった話を耳にすることもある。
  • 現在の複雑化・多様化した商品の製造や、多品種小ロット生産の製造現場は、単体機械だけでは到底完結できるものではなく、それらを組み合わせたIMSの需要はますます増えていくと考えられる。
  • したがって、IMS の安全設計に自信を持ちIMS構築を実施していくことが出来る個人や団体,機関が育っていくことは、わが国の今後の経済発展においても必要不可欠であり、これは本WGに参加した委員全員の共通の願いでもある。
  • 本WGの成果物が、安全規格の存在を意識しつつ、グローバルに活躍できるインテグレータとなるための一助となれば幸いである。
  • 統合生産システムは、インテグレーターと呼ばれる、統合された生産システムの安全要求を統括する事業(人、モノ)を定義している。これは、複数の機械間のガードや異なる機械メーカ間での安全仕様の相違など、従来の規格では見落とされがちであった項目や、機械ユーザーとサプライヤー間の調整、コンサルティングなどシステムの安全を達成する上で重要な役割となる。

 

日機連 川池標準化部長
一橋大学大学院 栗原史郎氏
日機連 川池標準化推進部長
一橋大学大学院 栗原史郎氏
   
(株)三菱総研 美濃良輔氏
平田機工(株) 木下博文氏
(株)三菱総研 美濃良輔氏
平田機工(株) 木下博文氏

 

 

4.〔パネルディスカッション〕(PDFファイル1,126KB)(禁無断転載)
 基調講演に引き続き、下記メンバーにより、『セーフティ・システム・インテグレーションの普及と定着について』をテーマとしてパネルディスカッションを実施した。

  モデレーター
       向殿 政男氏 明治大学 理工学部 情報科学科 教授 
  パネラー
    ユーザあるいはユーザ内のインテグレータのお立場で
      星野 晴康氏 トヨタ自動車(株) 安全健康推進部 安全衛生室 主幹
      水野 恒夫氏 セーフティクラフト 代表 (元(株)ブリヂストン)
    メーカあるいはインテグレータのお立場で
      東 謙治氏  三友工業(株)営業部 次長
      木下 博文氏 平田機工(株)技術本部 システム開発部 グループマネージャ
      小平 紀生氏 三菱電機(株)FAシステム事業本部 機器事業部 主管技師長

 

 

パネルディスカッション演台
明治大学 向殿政男氏
パネルディスカッション演台
明治大学 向殿政男氏
   
トヨタ自動車(株) 星野晴康氏.セーフティクラフト水野恒夫氏
三友工業(株) 東謙治氏.平田機工竃リ下博文氏
トヨタ自動車(株) 星野晴康氏
セーフティクラフト 水野恒夫氏
三友工業(株) 東謙治氏
平田機工(株) 木下博文氏
   
三菱電機(株) 小平紀生氏
日機連 石坂常務理事
三菱電機(株) 小平紀生氏
日機連 石坂常務理事

 

冒頭に、向殿モデレーターより “セーフティ・システム・インテグレーション ”という用語が “セーフティ・インテグレーション ”と “システム・インテグレーション ”の機能を合わせ持つ日機連が生み出した新造語である旨の紹介と何故この “セーフティ・システム・インテグレーション ”が設備の安全確保に関して重要な意味合いを持つのかの趣旨説明を行った。

続いてトヨタ自動車(株)星野晴康氏より『トヨタの機械安全への取り組み』(PDFファイル1,363KB)(禁無断転載)について、セーフティクラフト水野恒夫氏より『IMSの事故事例に見るセイフティシステムインテグレーションの課題』―システムインテグレーターとユーザーの安全責任の課題―(PDFファイル284KB)(禁無断転載)について、三友工業(株)東 謙治氏より『ロボットシステムのインテグレーターとして三友工業の安全への取り組み』(PDFファイル435KB)(禁無断転載)について、三菱電機(株)小平紀生氏より『産業ロボットとセイフティ・システム・インテグレーション』(PDFファイル268KB)(禁無断転載)についての小講演を行い討論に入った。

討論は、主としてセーフティ・システム・インテグレーターの人材育成・教育の現状、役割分担・責任範囲の課題、セーフティ・システム・インテグレーションの概念が定着しない阻害要因などに関してパネラーのそれぞれの貴重なご意見が述べられた。

総じて、今回この主題を取り上げたのは、日機連のシンポジウムとして初めての試みであり、終わりにあたっての会場からの複数の参加者のご意見にみられるように、セーフティ・システム・インテグレーションの重要性の認識を新たにしていただけたと考えている。

なお、本テーマは設備の安全を確保する上で重要であるが課題も多いので、日機連としては、来年度に本テーマに関連する部会を新たに立ち上げ検討を進めて行く予定である。

最後に、日機連 常務理事 石坂 清より閉会にあたってのご挨拶を述べ、本講演会を終了した。

〔標準化推進部〕

 

KEIRIN
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

 

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