令和6年度 税制改正要望

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令和6年度税制改正に関する機械業界の要望を提出

 日機連では、税制金融政策特別委員会(委員長・今井一朗 川崎重工業㈱ 執行役員管理本部長)中心に令和6年度税制改正に関する日機連要望を検討、とりまとめ、10月6日(金)に経済産業省始め関係各機関等に要望書を提出、その実現を要望した。

 要望書は、設備投資関連税制の拡充・改善(償却資産課税の見直し)、経済のデジタル化に伴う新たな国際課税制度への対応、グリーン・トランスフォーメーション(GX)・環境関連税制への対応、研究開発税制の拡充等、の4項目から構成している。

 

 

令和6年度税制改正に関する機械業界の要望

 

 一般社団法人 日本機械工業連合会は、機械工業関連の47会員企業及び47会員団体で構成する総合団体として、令和6年度税制改正に関して、新時代に向けた我が国経済の活性化、カーボンニュートラル実現等を目指し、下記税制項目の実現を強く要望する。

 なお、カーボンニュートラル実現等に関する熾烈な国際投資競争の一方で、国内ではインフレ基調の中、持続的な賃上げを求められている企業、特に従業員数が伸びている中堅企業が持続的な賃上げを実現できるよう、賃上げ促進税制の期限延長、拡充にも留意願う。

 

(1)  設備投資関連税制の拡充、改善(償却資産課税の見直し)

 我が国現場の生産設備の老朽化が生産性や競争力の面で憂慮すべき状況にある中、経済のデジタル化、デジタルトランスフォーメーションの促進、カーボンニュートラルの実現、経済安全保障の観点も踏まえたサイバーセキュリティーの確保や国内外におけるサプライチェーンの複数化・強靱化の対応等の新たな課題の解決に向けて、設備投資の大幅拡大が求められている。そのため、これら分野への企業の設備投資促進を後押しする設備投資促進税制の拡充、改善をお願いしたい。その一環として、令和5年度末に適用期限を迎える「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」については、期限延長及び適用要件の緩和、手続きの簡素化、対象機器の拡大等の制度拡充を求める。

 特に構造改革等を目的とした大型の設備投資には、検討から意思決定を経て実際に稼働するまでには相当な年月を要するため、長期間にわたって安定的に活用できるよう対象期間の長期化をお願いしたい。併せて、GX分野を中心に、経済安全保障の観点も鑑み戦略的に重要な物資の国内生産基盤の強化には、設備投資減税に加え、企業の中長期な予見可能性を担保すべく、生産及び販売活動に応じたGX事業全体に対する税制措置が必要である。

 また、機械類等に対する固定資産税の課税は、中小企業に限定しつつ令和6年度末まで軽減が図られているが、本来、機械類等への償却資産課税は国際的に見て極めて異例の税制であり、我が国産業の国際競争力を低下させるとともに、設備投資促進の大きな阻害要因となっており、機械業界として大企業も含め撤廃されることを強く要望する。

 

(2)  経済のデジタル化に伴う新たな国際課税制度への対応

 国際的にデジタルサービスに対する課税が議論される中、OECDの主導により、2020年にグローバル企業が利益を移転して租税回避を行うことを防ぐために、企業に対して「最低課税率の設定(第2の柱)」が提唱され、2021年10月、「市場国への新たな課税権の配分(第1の柱)」と併せ、国際的な合意を見た。国内法制化が2023年度から順次されているが、簡素化や合理化、他国独自制度による負担の回避を図り、企業の負担軽減及び二重課税の防止を求める。

 とりわけ、「グローバル・ミニマム課税」及び同課税の類似措置である「外国子会社合算税制(CFC税制)」は重要な要素であるが、企業に対して複雑な手続きや報告義務を課すことで、企業の事務負担が増大する。企業のリソースを効果的に活用し、競争力を高めるためには、このような事務負担の軽減が不可欠である。課税に関する報告義務を合理化し、煩雑な手続きの簡素化を図って頂くと共に、企業が法令を遵守しやすくなるような明確かつ実用的なガイドラインを作成頂きたい。

 CFC税制の見直しに当たっては、「グローバル・ミニマム課税」及び「CFC税制」の両制度間の情報の共通化・共有化による簡素化のため、①経過措置としてのCbCR或いは恒久措置としてのセーフハーバールールにおける簡易ETRテストを活用した税率計算の内容や調整項目等の共通化、②両制度の枠組みや定義の共通化、③CFCの持分割合が25%未満である受取配当については、第2の柱における持分割合の要件を勘案して、持分割合10%以上又は保有期間1年以上の株式に係る受取配当は部分合算の対象からの除外、を検討して頂きたい。また、企業の事務負荷を軽減するため、両制度の申告日程の整合化を図るとともに、現行法上、「外国子会社の事業年度終了後2か月を経過する日」を含む内国法人の事業年度において合算課税とされているが、「外国子会社の事業年度終了後1年を経過する日の属する日本の親会社の事業年度」に見直して頂きたい。

 加えて、同時に合意された「市場国への新たな課税権の配分(第1の柱)」でも、報告義務の緩和及び経過措置の導入など、企業の負担軽減をお願いしたい。

 

(3)    グリーン・トランスフォーメーション(GX)、環境関連税制への対応

 化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する「グリーン・トランスフォーメーション」(GX)は重要な取り組みであり、環境に配慮した持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩であるものの、企業にとって財政的な負担増加が伴う。その財政的な負担軽減のため、企業がエネルギー効率化や再生可能エネルギーへの転換などの取り組みを行った場合に、税制上の優遇措置や補助金の提供を検討願いたい。これにより、環境への負荷を軽減するための投資を促進し、GXを後押しする持続可能な社会の構築に向けた先進的な税制改革を推進して頂きたい。

 また、エネルギー価格高騰で産業界・国民生活の負担増が深刻化する中、地球温暖化対策税等の既存のエネルギー関連税制の見直しも必要と考える。効果的な環境保護策を追求するためにも、既存の税制を含めた包括的な対応策を検討し、必要に応じて廃止や改革を行って頂きたい。なお、新たな税制改正においては、環境関連税制の透明性と予測可能性を高めることも重要である。企業は事業計画や投資判断を行う際に、将来の税制変更に対する不確実性を抱えることはリスクとなるため、税制改正は事前の情報提供と十分な猶予期間を設けることで、企業が予測可能な環境関連税制に基づいて戦略を立てることができるように考慮願う。

 GXは世界的な課題であり、国際的な取り組みとの調和が重要である。国際的な規制や枠組みに沿った税制改革を行うことで、企業の国際競争力を損なうことなく、持続可能な社会の構築に貢献することができる。政府には国際的な連携や経済パートナーシップの強化を通じて、環境関連税制におけるリーダーシップを発揮して頂きたい。

 

(4)    研究開発税制の拡充等

 研究開発はイノベーションを加速させ、我が国の経済発展の源泉となっている。研究開発は時間と資金を要する長期的な取り組みであり、企業の研究開発投資マインドを後押しする税制措置(例えば、試験研究費税額控除における申告後の当期試験研究費の増額修正の認可)や優遇制度の長期的な見通しと安定性を確保して頂きたい。これにより、企業は将来の研究開発計画を立案しやすくなり、持続的なイノベーション活動を展開することが可能となる。とりわけ、喫緊の課題であるカーボンニュートラルやGXは、開発の途に就いたばかりの極めて野心度の高い、今までとは全く異なる次元の技術を必要とする分野が多く、投資金額は桁違いに大きい。その推進には企業努力に加えて政策的後押しが必要である。インセンティブ効果を高める研究開発税制の改正と中長期視点において制度拡充が必要と考える。その一環として、令和5年度末に適用期限を迎える「オープンイノベーション促進税制」の期限延長を求める。

 また、研究開発によって生み出される知的財産権や研究成果の活用は、企業の競争力強化と経済成長につながる。我が国の研究開発によって生み出された特許及び著作権で保護されたソフトウェア等の知的財産権の保護と活用を支援するための税制上の措置を拡充頂きたい。具体的には特許取得にかかる費用の一部を税制上で控除する制度や、知的財産権を活用した収益に対する税制上の優遇措置の導入を求める。これにより、企業が研究成果をより有効に活用し、競争力を向上させることができる。

 研究開発の成果を最大限に活かすためには、情報の共有と産学連携が重要となる。税制上の支援策を通じて、企業間や産学連携における研究開発の情報共有や連携活動を促進する仕組みを構築頂きたい。研究機関との連携においても税制上の支援を検討し、産学連携をより活発化させることを求める。

 

                                        以上