「持続的な経済成長の実現に向けた平成31年度税制改正共同要望」を提出

「持続的な経済成長の実現に向けた平成31年度税制改正共同要望」を提出

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持続的な経済成長の実現に向けた平成31年度税制改正共同要望を提出

 持続的な成長軌道に乗りつつある我が国経済の好循環を拡大するため不可欠な企業活動の活性化や競争力確保、および2019年10月に予定される消費税率10%への引上げへの対応等を求め、日機連は製造業9団体の連名にて「持続的な経済成長の実現に向けた平成31年度税制改正共同要望」を取り纏め、大宮会長(三菱重工業㈱取締役会長)の承認を得て、11月7日、自由民主党に提出、善処方を要請した。


持続的な経済成長の実現に向けた平成31年度税制改正共同要望

 わが国経済は、企業業績が好調に推移する中、雇用環境改善による個人消費の持ち直しや、設備投資の回復が見られるなど、持続的な成長軌道に乗りつつある。さらに、経済の好循環を拡大し、政府目標のGDP600兆円を実現するには、経済成長の原動力である企業活動の活性化や競争力確保が不可欠である。また、財政面では、2019年10月における消費税率10%への引上げ等による健全化を推進しつつ、堅調な景気拡大が財政再建に資する点にも留意し、耐久消費財市場を中心に、需要変動を平準化するための対応策を講ずる必要がある。 

 中長期の持続的成長基盤整備として、平成31年度税制改正において下記の税制が実現されるよう、製造業関連9団体の共同要望として特に強く要望する。

 なお、わが国の法人実効税率については、近年30%を切る水準へ引下げられたとはいえ、米国等における法人税率引下げの動きもあり、必ずしも国際的に競争力のある水準とはなっておらず、改めて適正化を図るべき状況にある。また、税収中立の下で課税ベースの拡大が行われたため、必ずしも企業の実質的税負担の軽減につながっていない。わが国経済および企業の競争力確保のためには、法人の実質的な税負担軽減の観点から、法人実効税率の適正化にあわせ、税収中立のもと財源確保のために縮減された諸制度について、本来あるべき姿に戻すべきである。

 

   
1. 研究開発税制の拡充
 

 ビッグデータを活用したIoTやAI等のデジタル技術が飛躍的に進展し、新たな付加価値を生み出すデジタル革命が世界全体で加速している。

 わが国においては、「Society5.0」の実現を旗印に、強みである「リアルデータ」やAI・ロボット、自動走行などの「革新的技術」を活用した社会課題の解決と新たな価値創造を進めるために、素材、デバイス、機器、ソフトウェアなどあらゆるレイヤーで、このデジタル変革に対応すべく、研究開発を加速させることが急務である。

 こうした状況のなか、各産業の研究開発を後押しする研究開発税制は、短期的・臨時的ではなく、中長期視点において、制度を拡充していくことが不可欠であり、とりわけ、総額型は税額控除割合を維持しつつ、控除上限の引上げ(現行法人税額25%から30%へ)を要望する。また、モノの売切りビジネスからモノを通じたサービスにより価値を提供するビジネスへの変革に不可欠であるサービスプラットフォームに係るソフトウェア開発費用においては、将来の収益獲得が不明の場合でも、試験研究費の対象とするよう、制度の見直しを要望する。

 
2. 複雑・過重な自動車関係諸税の簡素化・負担軽減の実現
 

 今日、製造産業・エネルギー産業においてはデジタル技術を用いた技術革新がグローバル規模で進展し、モノづくりやエネルギー供給のあり方が大きな変革期を迎えており、自動車産業においても、CASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)と呼ばれる新技術が大きな変化をもたらしている。一方、国内自動車市場は厳しい状況が続いており、通商環境の先行きも不透明な中、このままでは、国内生産や研究開発体制は維持できなくなり、日本の自動車産業の事業基盤が失われ、産業の空洞化・衰退の危機に直面することになる。

 地域、企業規模を越えて広範な関連産業を持つ自動車産業の国内での事業基盤を維持し、持続的な経済成長を実現する観点からも、自動車関係諸税を抜本的に見直すべきである。

 現在、国・地方合わせた税収約100兆円のうち、8兆円を自動車関係諸税が占めており、日本の自動車ユーザーは世界一高いレベルの税金を負担している。特に保有段階における税負担はドイツの約2.8倍、イギリスの約2.4倍に達するなど、国際水準から見ても極めて高くなっており、平成29年度税制改正大綱に明記された、保有に係る税負担軽減を確実に実行するためにも「国際的に過重な自動車税の税率を、国際水準である現行の軽自動車税を起点に引下げ」「自動車重量税の当分の間税率を廃止」すべきである。また、2019年10月に予定されている消費税率引上げにより自動車ユーザーの税負担が今以上増えることがあってはならず、消費税率引上げ後の自動車取得時の税負担は、現行より十分な軽減を図るべきである。

   
3. 償却資産に係る固定資産税の撤廃
 

 企業の設備、機械・装置等の償却資産の保有に課されている固定資産税は国際的に極めて例外的であり、わが国製造業にとって国際的なコスト競争力を損なう大きな要因となっている。とりわけ、機械・装置等の償却資産に対して固定資産税を課すことは、設備投資型産業への過重な負担となっており、生産性向上等に向けて新たな設備投資を促す政策方向にも逆行している。なお、平成28年度税制改正に引き続き、平成30年度税制改正でも、中小企業の一定の設備について、固定資産税をゼロとする措置が導入される等、中小企業向けの軽減措置は順次拡充されているが、わが国におけるサプライチェーン全体の国際的コスト競争力の観点からは、不十分と言わざるを得ない。

 企業の競争力強化とさらなる設備投資促進のため、償却資産に係る固定資産税の撤廃に向けた抜本的な見直しを要望する。

   
4. 国際課税制度の改善
 

 グローバル競争が加速する中、日本の国際課税制度が、我が国企業の国際競争力を削ぐことのないよう留意し、適宜改善等を講じて頂きたい。

(1) 外国子会社合算税制(CFC税制)-米国税制改正を踏まえた見直し

 昨年、わが国では外国子会社合算税制が改正された一方、米国においては連邦法人税率が大幅に引下げられたため、租税回避を目的にしていないにも関わらず、わが国企業の在米関係会社の一部が、本制度の対象となってしまったことから、租税回避防止という当該制度の本旨に照らした適正化を要望する。

(2) BEPS勧告の国内法制化への対応

 国際的な租税回避防止策(OECDによる「BEPS勧告」)の国内法制化においては、我が国企業等の実態を十分見極め、目的を超えた課税強化や企業の対応事務負担が過重とならないよう、慎重な対応をお願いしたい。

   
  [連名団体]

(一社)電子情報技術産業協会、(一社)日本化学工業協会、(一社)日本機械工業連合会
(一社)日本自動車工業会、(一社)日本造船工業会、(一社)日本鉄鋼連盟、
(一社)日本電機工業会、石油化学工業協会、日本製紙連合会


 

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