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1. |
設備の新陳代謝を促進するための税制措置 |
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機械産業を始め我が国製造業企業は、少子高齢化の進展とデフレの長期化、円高・原油価格の高騰や中国・韓国等新興諸国との競争激化など、国内外の事業環境の悪化と業績の低迷が続く中、長らく国内での設備投資を抑制せざるをえない状況に置かれてきた。この間に設備の著しい高齢化が進展し、それが更に競争力の低下に追い打ちをかける深刻な悪循環を招く結果となってきた。
今回の「成長戦略」は、こうした悪循環を断ち切り、好循環をもたらすのに不可欠な戦略である。景気は上向いているものの、企業は先行き不透明感もあって大胆な投資活動に未だ踏み切れないでいる。このため、今回の減税の目的を「新陳代謝」とするにあたっても、その具体的内容は、以下のように、企業の国内投資を広く、手厚く支援するような仕組みとして頂きたい。
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① 対象設備の範囲
生産性の向上、生産能力の増強、エネルギー効率の向上、製品付加価値の向上、防災対応等、産業の競争力の維持・向上をもたらすすべての投資(生産設備のみならず、これと一体となった関連設備、ソフトウェア、建築物等)を広く対象として頂きたい。
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② 措置内容
既存の投資減税の相当部分を占めている特別償却・即時償却だけでなく、企業の財務状況によっては、より大きな促進効果を有する税額控除も選択可能な制度として頂きたい
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③ 適用期間
設備投資の意思決定から実行までに期間を要することを踏まえれば、対象期間を十分に考慮して頂きたい。
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④ 適用時の手続き
具体的な減税措置については、個別認定等の手続きを介在させることなく、予見可能性のある、簡素な仕組みにして頂きたい。
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また、設備投資を促進させるためには、上記の法人税における特例に加え、次の通り、償却資産に係る固定資産税の廃止・縮減を是非考えて頂きたい。
固定資産税の軽減は、中小企業も含めて企業の新たな設備投資意欲の増進に貢献できると考えます。
償却資産税は特定の設備型産業に偏重しており、国際的に見ても生産財に対する課税は極めて異例の部類に属する。加えて、固定資産税の賦課は有形固定資産に限られ、無形固定資産は課税対象外であり、課税の公平性の観点からも償却資産税については廃止を含めてそのあり方を見直して頂きたい。
仮に、地方の税財政を取り巻く諸事情から、早急な廃止が困難とされる場合であっても、『日本再興戦略』との整合性を図る観点から、少なくとも、新規取得償却資産や、今回の投資減税の対象となった資産については、適用を除外して頂きたい。また、競争力強化に資する設備投資をリースで行う場合にも固定資産税の減免を行い、リース取引を活用した投資の促進を図って頂きたい。
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2. |
研究開発を促進するための税制措置 |
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これまで我が国は世界に先がけて独創的な先端技術や新製品の開発、実用化に成功を収め、国際競争力の高い工業製品を世界に送り出すとともに、国内にて新事業を創生させ、経済の成長と繁栄を確保してきた。研究開発こそ資源小国の我が国にとって生命線であり、経済発展の源泉である。
この観点から、我が国の研究開発制度は着実に拡充、整備されてきたが、新興諸国をも巻き込んだグローバル競争が激化する中、主要諸外国の研究開発税制は自国企業の競争力強化のため、我が国の制度を上回る拡充が進み、それら支援策を受けて諸外国企業は研究開発投資を拡大させ、先端技術・新製品の開発力は飛躍的に向上しており、現在、我が国企業は困難のさなかにある。
「日本再興戦略」を実現するには、我が国産業の強化が不可欠であり、我が国企業の研究開発意欲を向上させ、研究開発投資額の増加につなげるため、我が国の研究開発税制について、諸外国の制度に見劣ることの無いよう、次の通り、拡充をお願いしたい。 |
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(1) 総額型の控除引き上げ措置の恒久化
平成25年度税制改正で適用期間2年間の前提で認められた「総額型の控除上限の引き上げ措置」(法人税額の20%を30%へ)は、我が国企業の研究開発投資意欲を向上させ、産業の活性化に貢献しているため、恒久化して頂きたい。 |
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(2) 上乗せ措置(増加型)の適用期限の延長及び控除率の引き上げ
平成18年度税制改正で創設され、平成24年度税制改正で2年間の適用期限延長が行われた「上乗せ措置(増加型)」は、比較的短い期間においてイノベーションを加速させる効果が著しいため、「日本再興戦略」の目指す「今後3年以内に民間研究開発投資の対GDP比で世界第1位復活」の達成のため、適用期限を3年間延長するとともに、控除率を5%から30%以上に引き上げて頂きたい。
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(3) 総額型の繰越期間の拡充及び上乗せ措置(増加型)の繰越期間の新設
我が国では、総額型の繰越期間が1年となっており、また、上乗せ措置については繰越期間が設定されていないため、赤字企業も含めて企業の研究開発投資の意欲を削いでいる。主要国の繰越期間は英国が無期限、米国が20年、韓国・中国が5年等と長期間が認められているため、総額型を拡充、上乗せ措置(増加型)を新設し、繰越期間をいずれも3年にして頂きたい。 |
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(4) 控除限度超過額の繰越要件の撤廃
景気動向や業況にかかわらず研究開発活動を喚起するため、「当該年度の試験研究費の額が前年度の実績額を下回らない」という控除限度超過額の繰越要件を撤廃して頂きたい。 |
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3. |
法人実効税率の更なる引下げ |
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我が国の法人税等実効税率は約35%に引き下げられたが、諸外国も立地競争力の強化のために税率を引き下げて、平均税率はOECD諸国が約26%、アジア諸国が約24%まで低下しており、我が国の税率は世界的に見て依然突出している。このままでは、我が国産業の国際競争力の低下や企業の海外流出に伴う国内産業の空洞化が懸念される他、外国企業の日本への投資も減少して、今後の国内雇用の確保が非常に懸念される。
そのため、地方税を含めた実効税率の更なる引き下げが不可欠であり、復興法人特別税の課税期間が終了する平成27年度を待つことなく、法人実効税率をアジア近隣諸国並みの25%程度までを目途に、速やかに引き下げるよう、道筋を示すための議論を早期に開始して頂きたい。なお、議論の中では、税率引下げの財源措置として地方法人特別税の廃止も含めて検討頂きたい。
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4. |
グローバル活動における競争力確保に資する税制措置 |
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新興諸国を中心に拡大するグローバル市場への対応は、企業の成長のみならず我が国経済の今後の繁栄にとって不可欠である。我が国企業は新たな市場開拓を目指して年々海外事業展開を深化させてきたが、各国の課税権のせめぎあいが激化する中、国際的二重課税のリスクを負う局面が増加している。我が国の国際課税制度は、国際的二重課税の調整、国際的租税回避を原則に年々改善が図られてきたが、国際環境は日々変化しており、企業の健全な海外事業活動を確保する観点から、更なる改善をお願いしたい。 |
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(1) タックスヘイブン税制における特定外国子会社等の判定の基準となる租税負担割合の緩和(トリガー税率の引下げ)
平成22年度税制改正において、特定外国子会社等の判定基準となる租税負担割合が25%から20%に緩和されたが、アジアや欧州諸国等で、法人税率引き下げにより法定実効税率が20%以下となる国が多くなっており、とりわけ我が国企業の事業活動が活発な英国及びタイの法人税率も20%に引下げられることになるため、企業の事務負担の軽減を考慮し、当該諸国が軽減税国に該当しないよう、租税負担割合の更なる緩和をして頂きたい。 |
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(2)二国間租税条約の締結及び改定の促進
今後、世界的な投資交流の活発化に向けて、我が国としては、租税条約ネットワークの整備を図る必要がある。日本との取引が多い国・地域との租税条約が締結されていない場合には、移転価格税制に基づく相互協議など二重課税の排除や源泉税率の低減に向けて、租税条約の早期締結を行われたい。とりわけ、次世代の投資国として脚光を浴び始めているアフリカ諸国は日本との租税条約締結国が少なく、租税条約を活用している中国企業に比べて我が国企業は競争環境として非常に不利となっているため、早急に締結交渉を進めて頂きたい。
また、日本の知的財産立国を後押しし、グローバル企業を育成する観点から、ロイヤリティ支払いに関する源泉税の相互撤廃などを盛り込んだ日米租税条約をモデルとして、各国との租税条約の改定を推進されたい。
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機動的な企業経営、企業活動の効率化に資する税制措置 |
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(1) 欠損金の繰戻し還付の復活・繰越期間の延長、繰越控除期間の延長
課税上の期間損益の通算は、中期的な観点から企業経営を行う上で非常に重要な制度であり、リストラや新市場分野への進出等、企業の大胆かつ機動的な事業展開を後押ししている。
しかし、我が国の現状の欠損金の扱いは欧米諸国に比べ不利な状況にある。 欠損金の繰戻し還付は財源措置として平成4年度より停止されており、また、繰越期間は9年間と、アメリカが20年、イギリス、フランス、ドイツ等が無制限であるのに比べ、非常に制限されている。そのうえ、税収増加目的のために平成24年度税制改正にて大企業を対象に繰越欠損金の控除限度額が80%に制限された。欠損が残っている期間に法人税を課すことは回復期にある企業の足枷につながるものである。
我が国企業の国際競争力を向上させ、設備投資意欲を高めるためには、欠損金制度の制限措置の緩和が必要であり、停止中の繰戻し還付を復活のうえ、繰戻し還付期間を1年から2年に延長するとともに、繰越控除期間をアメリカ並みの20年に延長されたい。また、繰越欠損金の使用制限措置は企業にとって増税となるうえに、事務負担も増大するため、見直して頂きたい。
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(2) 減価償却費に係る損金経理要件の廃止
国際会計基準へのコンバージェンスにより、減価償却資産の償却方法の 定率法から定額法への変更や、会計上の耐用年数の延長が見込まれているが、減価償却費については損金経理要件が付されているため、税法基準での損金算入が不可となることから、損金経理要件を早期に廃止して頂きたい。 |
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事業再編の円滑化のための税制措置 |
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業界再編・事業再構築を円滑に促進するため、事業分割等により誕生した新会社の立ち上げ時の損失を親会社に取り込めるよう親子会社間の損益通算を認めて頂きたい。例えば、米国のLLC制度は、子会社の赤字を出資企業が損益計上できることから、会社が事業を切り出して新会社を作る際にも活用されている。こうした措置を参考に、日本にも再編に取り組む企業の課税負担を抑制する措置を導入して頂きたい。
また、連結子法人の連結グループへの新規および途中加入時の時価評価規定や繰越欠損金の持込制限が、結果として、迅速な組織再編を阻害しているのが実情である。組織再編を促進するため、適用除外範囲を緩和するなどの改善を行なって頂きたい。
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リース手法を活用した設備投資支援 |
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国際競争に打ち克つためには、新規の設備投資が不可欠であるが、財務の健全性を維持する観点から、企業は先端生産設備等の初期の稼働率が不透明かつ投資負担額が大きく、バランスシートがかなり膨らむような設備投資には慎重になっている。そこで、初期費用の抑制及びバランスシートの健全化に寄与するオペレーティングリースの活用が必要である。
オペレーティングリースはバランスシートに過大な影響をかけず、実際の経済耐用年数に即した費用化が可能なリース取引として、転売や二次リース等の設備の二次利用価値をリース会社が負担することにより、格安なリース料でリースを行うことができる。しかしリース期間終了時点での二次利用価値の下振れリスクが相当あり、その利用が広がっていないことから、オペレーティングリースに伴う資産の二次利用価値の変動リスクを官民で分担する仕組みを整備するなど、オペレーティングリースによる設備導入を促進するための措置を講じて頂きたい。
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